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69話:報告と新たな命令、再び動く影
王都──
夕刻、赤き陽が沈む玉座の間にて、ゼロ・ヴァレンティアは片膝をついていた。
「……討伐は失敗に終わりました。神則の山における戦力は、想定を超えるものでした」
静かに報告を終えたその姿に、王座の奥より響く声があった。
「なるほど。老いは進めど、あの剣はまだ折れてはおらぬか」
「はい。ゲンジ・カザマ──そしてカイエン、カイル……いずれも脅威足り得ます」
「構わぬ。計画は動き続けておる」
王の隣に立つ黒衣の宰相が、一枚の羊皮紙を広げる。
「“風”に執着するな、ゼロ。我らは“炎”の器を完成させねばならぬ」
「……了解しました」
ゼロが退室した後、王は小さく呟いた。
「“あの子”が動き出す時が来たか……」
そして場面は変わり、遥か遠くの草原地帯。
焚火を囲むハクたち三人の姿があった。
「次はどうするの?」とナギが問う。
ハクは空を仰ぎ、木刀を握り直した。
「……風は、まだ何かを告げている」
ジノが微笑む。「あんたの“風”ってのは便利だな。俺にも聞こえるといいんだが」
「聞こえるさ、きっと。信じてればな」
そう言って笑うハクの背に、風が再び吹き抜けた。
その風は、新たな地──“黒炎の谷”を目指していた。




