表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/104

60話:黒翼の目覚め、密命の風穴

その夜、王都の北端。静寂に包まれた古塔の地下

——忘れ去られた書庫の奥深くにて、ひとりの男が目を覚ました。


「……予兆は現実となったか」


その男、ラシュド・ヴァレン。

王国の密偵組織《黒翼》の副主導者であり、

かつてセイマの政治的参謀として影から王国の改革を支えた智将。

表舞台に立たぬ者として、記録にも名を残さず、ただ“影”として存在してきた。


その目は崩落の光が走った王城の中心を正確に捉えていた。


「風が崩れたのではない。風を恐れた者たちが、それを封じただけだ」


王の間が崩れた直後、王都各地では“風穴”と呼ばれる現象が確認され始めていた。


空間が微かに歪み、音が消え、重力が一瞬乱れる

——それは、かつて神則流の開祖ムサシが“風を通す剣”を振るった際に残した、という伝承に酷似していた。


「……ならば、ハクはまだ、生きている」


ラシュドは古の地図を広げ、王城下の秘密通路の入り口を探し当てる。


「この道を辿れ。彼がその先にいる」


闇から姿を現した数人の密偵たちが静かに頷く。


「玉座を狙う“牙”が動き出す前に、遺された“風”を拾え」


それは命令ではなく、祈りのようでもあった。


塔を出るラシュドの背中に、黒き風がまとわりつく。


「風は消えぬ。たとえ大地に埋もれても——それは必ず、吹き返す」


そしてその時、黒翼は新たな命を得た。


それは“剣なき王国”に突きつけられた、もう一つの風だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ