56話:暗雲裂く風、王都の決起
王都・西門近郊、潜入路——。
ハクたちは王都内部への潜入を終え、夜陰に紛れて旧市街地へと身を潜めていた。
「王宮の裏門は、厳重に封鎖されていた」ナギが息を整えながら呟く。
「正面からは無理だな……」ルミナが壁にもたれながら辺りを警戒する。
その時、石畳の奥から姿を現した男がいた。
「……やっと見つけたぞ」
その男こそ、リオン・カザマ。
ハクの兄にして、王国中枢に潜む“盾”の使い手。
「兄さん!」「リオン様!」
「黙れ、声を抑えろ。今、王都は火薬庫だ。
父上の名が公に粛清されたと同時に、風を名乗る者は全て反逆者とされた」
「……じゃあ、俺たちは……?」
「お前たちを捕らえるため、すでに王国騎士団が動き始めている」
リオンは、懐から一枚の布地を広げる。王都の地下通路網の地図だった。
「ここから、王宮西塔へと繋がる隠し通路がある。だが、そこには……」
「罠か?」
「いや、“監視者”がいる。俺が囮になる。お前たちはその隙に風の記録を持って玉座の間に向かえ」
「リオン兄さん、無茶だよ!」
「構わない。俺も……父上の“理”を、信じたい」
——そして王宮内、側近たちの間でも緊張は走っていた。
「カザマの一族が再び動いたとの報、地下からの侵入者が……」
「捨て置け、オルドレイン陛下の命は絶対だ。風など……もう吹かぬ」
だが、その風は、今まさに王城の地下を駆け抜けていた。




