52話:静かなる雷鳴、リオンの決断
王都——その最奥に位置する議政庁。
長身の青年が、静かに地図を睨んでいた。
リオン・カザマ。
セイマの長男にして、王国政務の中心に身を置く男。
だが、その双眸には父の死の衝撃が隠せずにいた。
「……風が止んだ」
それが、リオンにとっての“合図”だった。
父が守ろうとした理。
それを裏切ることなく、この国の本質と対峙する時が来た。
リオンの元を訪れたのは、忠実な老執事ギルスと、王宮直属の諜報官アルティナだった。
「セイマ様の件、公式には病死とされています。しかし……これは明らかな暗殺です」
リオンは小さく頷いた。「わかっている。だが、証拠もなく声を上げれば、俺も排除される」
「リオン様。ハヤ……彼は無事ですか?」
その問いに、リオンはわずかに目を細めた。
「……“ハク”として生きている。父は、あいつに最後の風を託した」
アルティナが動揺を隠せず口元を覆う。「まさか、あの青年が……!」
ギルスが静かに杖をつく。
「セイマ様の“理”を継ぐならば、殿下。そなたもまた——剣なき盾として、動くべきです」
リオンは地図を巻き、ゆっくりと腰を上げた。
「俺は剣ではない。だが、盾としてなら……この国を守るため、今こそ立とう」
雷鳴のような衝撃が、静かに胸に響いていた。
彼は“決断”を下した。
父が信じた未来を、弟に託された理を、自分の手で守ると。
そしてそのために——リオンは動く。
“王都の影を裂く、静かなる雷鳴”が、今、歩みを始める。




