43話:地下議事堂、風なき沈黙の中で
扉の向こうに広がっていたのは、古代の魔導と封印術が刻まれた、円形の広間だった。
「……ここが、議事堂の根幹か」ナギが低くつぶやく。
中央の石碑には、かつての王族による“誓約の文”が彫られていた。
《剣を捨て、理に従い、風を封じよ》
その一節を読み取ったルミナが、声を震わせた。
「これは……ムサシ・カザマが剣を置いた時の誓約……でも、それを……」
ジノが周囲を警戒する。「おい、気配が……」
その瞬間、広間の周囲に幾つもの“結界陣”が浮かび上がる。
「来たか……」ハクは木刀を抜いた。
浮かび上がる魔法陣の中心に、黒装束の剣士が現れる。
「君たちが“風の異分子”か。ここは侵入を許された場所ではない」
「名は?」
「名乗るほどの者ではない。ただ、任を受けた処理者だ」
ハクは一歩前に出る。「この“止まった風”が何なのか、それを知りに来た。……通すだけだ」
「ならば、それを越えてみせよ」
瞬間、魔力と剣圧が交差する激戦が始まる。
黒装束の剣士は、神則流に似た動きでハクの風を封じにかかる。
「この動き……なぜ似ている……?」
ナギが叫ぶ。「ハク、あいつ“神則流の型”を研究してる!」
「くっ……風が読まれてる……!」
ジノが支援するも、敵の動きは一切の隙を見せない。
ハクは自らの“風”を変化させる。記憶に刻まれた神木の流れ――柔らかく、時に鋭く、そして抗えぬほどに流麗な風。
「風は止まらない……俺の中でも」
決死の一撃が、敵の刃を跳ね除ける。
「通す!」
木刀が、風をまとって敵を吹き飛ばす。
剣士は壁に叩きつけられ、静かに気絶した。
ハクは肩で息をしながら呟いた。
「これが……神則の“外”の、俺の風だ」
その時、広間の奥にある石壁がひとりでに開き、さらに深い空間が顔を覗かせた。
ルミナが囁く。「……ここが、本当の“核心”。王が封じた“風の記録庫”……」
物語は、風の“起源”に触れようとしていた。




