41話:風が忍ぶ、市の影に潜む声
王都――アークフェルド。
かつて剣と魔法が交差した古戦場に築かれ、今なお王権と民意の狭間で蠢く都市。
ハクたちはリオンの渡した情報使節の印章を手に、王都の表通りへと姿を現した。
「とりあえず、この装束なら怪しまれない。だが、黒の議事堂に近づくには情報が足りない」ナギが小声で言う。
ジノが露店でパンを買いながら辺りを伺った。「あの廃市街、“灰区”を経由すれば裏口に回れるって情報もあるぜ」
「でも、灰区には“口封じの狩人”が出るって噂もあるよ」ナギが肩をすくめる。
ハクは無言で風を読むように目を閉じた。
「……風が止んでる」
「は?」ジノが振り返る。
「この街のどこかで、“風の通らない場所”がある。多分そこが……鍵だ」
そのとき、物陰から小さな声が聞こえた。
「あなたたち、“風の剣士”よね?」
振り返ると、年若い女性が立っていた。茶髪に包帯を巻いた腕。
「誰だ?」ハクが警戒する。
「私はルミナ。かつて黒の議事堂に仕えていた者……だった。
でも、今は逃げてる。内部で“何か”が動いてる。あなたたちに、それを伝えたかった」
ルミナは震えながら地図を差し出した。
「これが……議事堂地下の“影の回廊”への入口。
そこからなら、“風の通り道”を見つけられるかもしれない」
「なんで俺たちを信じる?」
ルミナは苦笑した。「……だって、“風が動いた”のを、初めて感じたから」
ハクは地図を受け取り、静かに頷いた。
「行こう。“風の止まった場所”へ」
市街の喧騒を抜け、彼らの足音だけが裏路地に響いていた。
物語は、王都の影へと踏み込む。




