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第40話:風の潜伏、城塞の狭間にて
リオンの導きで、ハクたちは王都の裏通りを抜け、古びた書庫の地下室へと案内された。
「ここは……?」ナギが息を潜めて尋ねた。
「旧学術省の管理区画だ。今では騎士団も立ち入らない廃施設。だが、情報が交差する場所でもある」
リオンは手早く机を片付け、地図と書簡を並べて見せた。
「王都では、“風の剣士”の存在が異端として急速に拡散している。父も“公式には動けない”と判断し、私に任務を託した」
ハクは木刀をそっと脇に置いた。
「じゃあ、今俺たちはどう動くべきだ?」
リオンは一枚の印章入りの布を取り出す。
「この印は“評議会の承認”を得た情報使節を偽装できる。明日からはこの身分で市中を移動してもらう」
「俺たちが……スパイか?」ジノが苦笑した。
「風を通す者が何かを隠して動くのは矛盾かもしれない。でも、今の王都では“目立たぬ風”も必要だ」
ナギが頷く。「……どこに向かえばいい?」
リオンは静かに答えた。
「“黒の議事堂”。王都の中枢にして、評議会が裏で操る情報の集積地。
そこに、風を通すべき“鍵”がある」
ハクはゆっくりと立ち上がった。
「通そう。王都に、剣じゃない“風”を」
地下の風が微かに揺れた。
物語は、いよいよ王都の心臓部へと向かう――。




