第39話:潜入、王都の影路
王都の門は固く閉ざされていた。
トルヴァル門前の通行審査は厳格を極め、近隣で囁かれる“風の剣士”の噂が、三人の入城を許す空気ではなかった。
「このまま正面突破ってのは無理だな……」ジノが苦笑した。
ナギが小声で言う。「王都の地下には“古の用水路”があるはず。文献で見たことがある。外郭の裏山から繋がっていると」
「……風は、道を選ばない」ハクが呟いた。
三人は日没後、王都の西側へと回り込み、朽ちた岩窟の奥に口を開ける地下水路へと滑り込んだ。
苔の匂い、かびた空気、そして暗闇。
「……こういうの久々すぎて落ち着くな……」ジノが笑った。
だが道中、王都警備隊の巡回小隊と鉢合わせる。
一触即発の空気の中、ハクは木刀で兵士たちの武器を折り、“殺さず、通す”戦いを貫いた。
ナギの幻光石とジノの煙幕弾が援護し、三人は無事に内堀を越えて王都市街地へと潜入。
「なんとかなった……けど、もう逃げ道はないな」
王都の喧騒が遠くで響く中、三人は物陰に身を潜めて息を整えていた。
そのとき、足音が近づいた。
「ずいぶん派手に動いたな、“風の者”よ」
黒衣の青年が現れる。リオン・カザマ。
騎士団服の裾を払いつつ、彼は言った。
「すでに騎士団が動き始めている。身柄を確保されれば、次は“抹殺”だ」
「じゃあ、助けてくれるのか?」ジノが警戒を込めて聞いた。
「……父の頼みだ。王都に入ったなら、必ず守れと」
ハクは目を細めた。「父が……?」
「今は話せることが少ない。ただ、ついて来い。
お前たちの“風”が、まだ吹ける場所がある」
リオンの背に、王都の月光が差していた。




