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第38話:王都への道、風を背に歩む者たち

風の戦いを終えたハクたちは、再び歩き出した。


霧の森を越え、隠し里の尾根道を降りる。空は高く、風は穏やかだった。


「次は……王都だな」ジノが静かに言った。


「そうだね。覚悟、決めよう」ナギがうなずく。


ハクはその言葉に、力強く頷いた。その足取りは、風のように迷いがなかった。


「ミカドとの戦いで分かった……俺たちはもう、ただ逃げてるだけじゃない」


「自分たちの存在が“脅威”として王都に認識された今、そこへ向かわなければならない」


ナギも地図を見つめながら静かに答えた。

「それに……神則流の記憶で、ムサシが剣を捨てたのは“都”だったよね」


「うん。なら、俺もそこに“何か”を通さなきゃいけない気がする」


「……通す風か。らしいな」ジノが笑った。


旅路の途中、小さな村々を通過した。


ある村では、老僧が茶を振る舞ってくれた。老人は言った。

「最近、この辺りにも噂が来とる。“風の剣士”が、国の重騎士を退けたと……」


別の村では、子供たちが木の枝を振り回して遊んでいた。「ゼロって名前の剣士ごっこだ!」と。


噂は風に乗って、確かに広がっていた。


「お前、噂の本人じゃねぇだろうな?」

村の少年にからかわれたが、ハクはただ笑った。


「名前は、“ハク”。それだけさ」


夜、焚き火を囲んだ三人は、それぞれ静かに未来を見つめていた。


「王都に着いたら、どうする?」ジノが問いかける。


「まだ分からない。けど……向き合うべき時が来た気がする」

ハクの声は、迷いがなく、しかし重みを帯びていた。


ナギは地図を広げ、王都の外郭を指差した。

「この道を抜けたら、“トルヴァル門”だね。そこからが本番だよ」


風が吹く。


その風は、少しずつ彼らを王都へと押し出していた。


「俺たち、変わったよな」ジノが呟く。

「最初は掃除とか荷運びとかしてたのにな……」


ハクとナギが笑った。


「でも、今も変わらずやってるよ。通すだけさ、風の通り道を」


三人の影が、月明かりの下で伸びていた。


その先にあるのは、陰謀と力が渦巻く王都――


だが彼らの風は、もう止まらない。


物語は、さらに深く、風を呼び込んでいく。

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