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第36話:試される風、揺らぐ刃の行方
霧の谷が、剣圧で震えていた。
ハクの呼吸は乱れ、額には汗。だが瞳は濁っていない。
「読みを超えるには、“風”そのものになるしかない」
ミカドの剣が迫る。
ハクは目を閉じ、木刀を構えた。
風が、静かに流れる。
「動きを封じられるなら――“動く前”に通す」
踏み込み。予備動作すらない、無駄を削ぎ落とした一閃。
ミカドが驚いたように目を見開く。
「……今のは、型にない」
「“風の型”じゃない。“俺の風”だ」
木刀が軌道を変える。読みを外し、想定を超え、
ハクの動きは風の“即興”となる。
「読み合いを捨てる。だから、風だ」
再び交差。
今度はミカドの肩に木刀が浅く叩き込まれる。
だが、まだ終わらない。
ミカドは後退りながら息を整える。
「……ようやく、“風”の片鱗が見えましたね」
「こっちはこれからなんだよ。風は、まだ走り出したばかりだ」
ミカドが構えを変える。
剣が風を裂かず、共に舞う型に変化する。
「では、次は“こちらの風”でいきます」
風と剣の共鳴が、深くなる。
戦いは――まだ終わらない。




