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24話:カザンの砦と白き追跡者

その砦は、まるで“山脈の亡骸”のようにそびえていた。


 


 カザンの砦――

 数百年前に神樹を巡る戦が起きた地にして、

 今は忘れ去られた、文書と遺構の眠る“記憶の棺”。


 


 ハクたちは、砦の中央部にある旧記録庫に入っていた。


 


 瓦礫を払いながら、ナギが息を漏らす。


「これ……相当古いわね。王都の記録より、こっちの方が真実に近いかも」


 


 ライナが壁の刻印に手を当てる。


「この文様……“神木”の文字。

 ムサシ・カザマが刀を作った時の“木材の名前”が書かれてる」


 


 ハクがそっとその刻印を見つめた。


 


 “風霊樹ふうれいじゅ”――

 それが、彼の木刀の素材に使われた、神の加護を受けた木の名前だった。


 


 「風を通す木……」


 そう呟いたときだった。


 


 ――風が止んだ。


 


 ジノが周囲に目を走らせる。


「ハク……今、変な気配がしなかったか?」


 


 そのとき、外から鉄の足音が響いた。


 規則正しく、地面を刻むような踏み鳴らし。


 


 砦の門が、きぃ、と軋む音を立てて開く。


 そして、白き装甲の集団が現れた。


 


 白装のはくそうのお――

 王都魔導院直属の追跡処刑部隊。


 その先頭に立つ女が、無言でフードを下ろす。


 


 「神木の記憶に近づく者よ。

 あなたを、“国家の理”の名の下に排除します」


 


 その声に、ナギの表情が凍る。


「……ルア・シエル……!?」


 


 元・魔導院の筆頭戦術術士、ルア・シエル。

 かつてナギと共に“理外兵装”の開発に携わっていた、“王都の白刃”。


 


 ルアはハクを一瞥すると、目を細める。


「あなたが“ゼロ”ね。噂以上よ。……でもそれが、あなたの限界でもある」


 


 ハクは静かに木刀を抜く。


「俺の名前はハク。

 “ゼロ”は、俺が通ってきた風の名前にすぎない」


 


 ルアが魔導剣を抜く。

 その刃は空気ごと震わせる、“理の縛り”を纏った剣だった。


 


 「――木刀で、私の理を越えてごらんなさい」


 


 風が吹いた。


 そして、砦が――再び、“戦場”になる。



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