18話:虚ノ森へ――風が凍る地
朝日が昇るころ、一行は出発の支度を終えていた。
向かうは、王国地図にすら明記されていない――“虚ノ森”。
ライナが手にした古地図を指でなぞる。
「ここ、“ミレザ辺境州”のさらに北。
常に霧が立ちこめていて、魔術も機械も狂うって言われてる」
ジノが肩をすくめる。
「えーっと……つまり、めちゃくちゃヤバいとこ?」
「その通り。でも“答え”はきっとそこにある」
ナギの言葉に、ハクはうなずいた。
「風はもう、向かってる。だったら、俺たちも行くしかない」
街を離れた三人と一人は、しばらく森を歩き続けた。
やがて空気が変わった。
音が減った。
鳥も、虫も、風も――沈黙した。
そこが、“虚ノ森”だった。
苔むした大木。ねじ曲がった枝。
地面に広がる黒い水。
そして――頭の中に“声”が響く。
『……なぜ、ここへ来た……?』
ハクが足を止める。
風が凍る。
ナギもライナも、術式を展開しようとしたが、魔力が“ねじれて”崩れた。
「理が……効かない……!?」
ジノが青ざめながら叫ぶ。
「おいおい、空間が歪んでるぞ!? 足が三本に見える!?」
森の奥――
何かがこちらを見ていた。
形を持たない。けれど“存在する”。
“理喰ノ片鱗”――ゼ=ヴァルトの影が、虚ノ森に滲んでいた。
「……来てしまったか。神樹の木刀を持つ者よ」
木刀が震える。
風が逆流する。
ハクが前に出た。
「こいつは、俺が行く。……“斬れる”か試してみる




