14話:魔導院の影と、白装の尾
メザンテラの夕空は、火のように赤かった。
さっきまでの騒動が嘘のように、人々は再び歩き出している。
けれど、空気の奥には――確かな“戦の匂い”が残っていた。
「……ハク。あれ、ただの訓練じゃなかった。
あいつら、きっと“私たちを試しに来てた”」
ナギが呟く。
ハクは黙って木刀を見つめる。
その表面には傷一つない。
けれど、“あの一閃”が確かに、何かを変えた。
そして。
物陰から、一人の少女が現れた。
「久しぶり、ナギ。こんなところでまた会うなんてね」
その声に、ナギが振り向く。
「……ライナ」
ライナ・クローディア。
王都魔導院・封印研究部門の上級術師。
ナギの元相棒であり、かつて――**“火薬の牙”の開発にも関わっていた”**人物。
「少し、話をしない? あなたたちを捕まえる前に」
その言葉の裏には、刃の気配がなかった。
けれど、彼女の後ろにいた白装の兵士たちが、それを補って余りあった。
王都魔導院直属、制圧部隊――
“白装の尾”。
彼らは命令があれば、魔族すら斬る部隊。
そして今――その視線は、ハクとナギに注がれていた。
ジノが小声で呟く。
「……ハク。これ、やばくね?」
「……ああ。だけど」
ハクは前に出た。
「話だけなら、聞いてやるよ。
どうせ、次の“風”が、ここに吹いてる気がするからな」




