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不思議な魔女っ子とちびっこサポーターの冒険譚  作者: 三沢 七生


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173.手探りの戦い

領都ナーアスに到着した私たち。

まずは町の外に設けられた前線の医療所。

地獄絵図とはこのこと、とりあえず可能な範囲で治癒魔法をかけつつ、なんとフレヤさんの指示によって死んだばかりの人を強引に「海の向こうの流派のハイヒーリング」と言い張って蘇生させちゃった。

そんな感じで残るけが人に治癒魔法をかけつつ今に至る。




「助かった…本当にありがとう!」

「気にするな。よし、多分これで最後だ。俺たちはさっさと西に行くぞ」


ふー、ガリウスさんがおんぶして連れてきたこの兵士で一旦おしまいかな。

オロチに吹き飛ばされたのか、ド派手に大怪我してた兵士のにーちゃんは、動くようになった身体を確かめてる。

回復役として呼ばれたわけじゃないし、後は聖職者たちに任せよう。


「ありがとうね!あとは聖職者が帰ってきたらこっちでなんとかしてもらうからさ、先にオロチをよろしくね!」


さっき大騒ぎだった医療所で「うるせーぞ!!」って喝を入れたねーちゃん。

私とかリンちゃんと似た感じの顔つき。

さっきから右手に丸い盾を持ったままあれやこれやと指示を飛ばしてる。

なーんかどっかで…?


ま、そんなこと考えてる場合じゃないね!

後で落ち着いたらきっと話す機会もあるかな。


「承知しました。では私たちは西に移動しますよ!!皆さん、立ち回りについて再度心の中で確認お願いします!不明点は今のうち聞いて下さい!」

「任せなっ!ナンナホンオロチ戦、『フレヤの冒険譚』の中のさ、あたしとガリウスの最後の舞台だよ!!」

「そうだな。みっともねえ真似はできねえな」


はは、フリーデリケさんとガリウスさん、いつも通りでホッとする。


「にゃーっ!!突撃にゃーっ!!」

「みんなの身は私が守るからね!私から見えない場所で危ない目に遭わないでね?」

「先生っ!!やりましょう!!今、私はとんでもない強敵を前に…ああっ、ゾクゾクとしています!!」


ナターシャちゃんとリンちゃん、やる気満々。

ふふ、ナターシャちゃんは「フーッ!!」ってなってる。

それがまた可愛いこと可愛いこと!!

しかしジルさん…完全に戦闘狂になっちゃってる…!

うわぁ…ウットリしてるよ…!やっぱ貴族として復帰すんのはどっち道無理だったねこれ。


さてさて、私も前向きな発言をば…


「か、かっ、勝ちに行きます…!!わ、わたっ、わたちにちゅぢゅいて…ください!!」


あ、物凄い勢いで噛んだ!?

もうみんなの顔が見れない…




町の西へ向けて走ってる間、フレヤさんに蘇生の件を聞いてみることに。


(あ、あの!さっきのテント…)

(え?ああ、さっきのスイートアンジェリカですか?)


相変わらずの体力だなぁ。

全然しんどくなさそうだ。


(は、はい…ちょっと意外な対応だったなと…)

(ふふ、大好きな人が表情を曇らせているのです。心のモヤモヤはこの後の戦いにも何かしら影響があるかもしれません。ガリウスさんの言葉を借りれば「それくらいする」です)


あっ、私は本当にこの人が大好きだ。

あの一瞬で私の考えを見抜いて、咄嗟にあんな一芝居を思いついてやってのけたんだ。


(っ私も…フレヤさん大好きです…!)

(えへへ、両想いですね!頼りにしてますよ、相棒?)


フレヤウインク、頂きました!

この笑顔を守るため、私は全力で戦うよっ!




うーむ、結構西の方に来たかな?

この町はそれにしてもデカいよ。

単なる男爵領と侮る無かれ、交通の要所だからかとにかくデカい。

そしてやっぱり西の方は被害が少ない。

城壁もあんまり被害が及んでない。


「この辺りですかね」

「そーだね、戦いやすそうな場所だよ!」


この辺りはそんなに草も生えてないし、結構開けてる。

うむうむ…戦いやすそう。


「よし、アメリ、一思いにオロチの野郎を引きつけてくれ」

「私たちはいつでも大丈夫です、先生」


ガリウスさんもデッカい斧を構えてる。

ジルさんはモンフォール家から持ってきた上等そうなロングソードを構えた。


「よし、それでは手はず通りフリーデリケさん、アメリさんをおぶって飛んでください」

「任せなっ!!ほれ、アメリ嬢!!」


大人モードのフリーデリケさんだ。

まずはスターリーナイトとかで注意を引くんだったね。


「お、お願い…します…!」

「よっと!相変わらず軽いねえ。舌を噛まないでちょうだいよ!」

「あ、はい…!」


わぁ、高い!!

あっと言う間に上空!

壮観だなぁ…いやいや、町は壊滅的だ。

こりゃ復興が大変そうだよ…


「こりゃ酷い!で、どうだい?ここから狙えるかい?」


うーむ、えーと…いける!

大勢の傭兵や兵士がナンナホンオロチと戦ってる。

デカい…よく近くで見ればその巨体はもの凄くデカい。

ちゃんと普通にシャンとしたら10バレルは余裕で超える。

首の一本一本も太い。

そんな首が何本も生えてるだけあって身体も滅茶苦茶デカい。

何というか…本当に時間稼ぎって感じだ。

こりゃさっさと引きつけなきゃ…


「は、はい!」

「ド派手に行くよ!誰もがクイーンスレイヤーが来てくれるのを待って持ちこたえていたんだ、張り切っていきな!!」


みんな私が来てくれるまで必死で持ちこたえたんだ。

みんなが繋げてくれたこの戦い、絶対無駄にしない!!


マギアウェルバ

光よ光よ

今宵は星が生まれる星空の夜

幾千の星屑よ舞い踊れ

輝く宝石

スターリーナイト


流れ星が次々にナンナホンオロチにぶち当たっていく。

ナンナホンオロチだけが次々に爆発。

他は全く被害なしで、周辺で戦ってた人たちが一斉にナンナホンオロチから引いて、あちこちキョロキョロとしてる。

そして攻撃を受けているナンナホンオロチ本人も、余程驚いたのか七つの顔が忙しなくキョロキョロしてる。

私が視認できていないんだ。

どうせだ、他にも色々試しておくか!


マギアウェルバ

雷よ雷よ

禁足地に足を踏み入れるは愚か者

愚か者には神の鉄槌が下る

轟く怒声

ジョルトサンダー


瞬間、轟雷がナンナホンオロチに鉄槌を喰らわす。

おっ?ナンナホンオロチの頭の上に星を散らす程度なら出来た?

これはかなり有用だ!!

いいねいいねっ!


「かなり怯んだよ!雷も使えるねえ!!」

「で、ですねっ…!」


兎に角町の外に誘導だ!




その後もアレコレ試してみたけど、氷や風に火や土、とにかく一般的な感じのマギアウェルバは、当たってもあんまり効果がなさそうだった。

しかも厄介な事にコイツ、ドバーっと撃つタイプのマギアウェルバを悉く避けやがる。

スターリーナイトは数が多すぎて、そしてジョルトサンダーは一瞬過ぎて直撃する。

さっき大勢から受けていた物理攻撃を避けようとしないあたり、自分にとって何が脅威になり得るか理解してるのかもしんない。

手数が多すぎてかわしきれないのかもだけどね。


ま、スターリーナイトとジョルトサンダーだけは結構使えるのが分かったのは結構デカい。


ナンナホンオロチが西の城壁に体当たりし始め、程なくして城壁がぶっ壊れ始めた。

誘導作戦がちゃんと伝わっているのか、町の中で戦ってた人たちの半分はナンナホンオロチの後ろで構えたまま。

残る半分は町の北口の方へ走ってゆく。

私たちへの増援かな?


「ナンナホンオロチが町の外へ出てきて、町から離れてから本格的な総攻撃行きますよ!!アメリさん!!合図を出したら試したかったマギアウェルバをお願いします!!」

「ひゃい…!!」


町の中で猛毒でのたうち回られても面白くない。

ってなわけで、猛毒のヴェノムハイノスタルジアとか即死のディアヴォルパラディーススみたいなマギアウェルバは町の外で確認する事にしていた。


「ちっ!!また撃ってくるよ!!」


ナンナホンオロチは多分そんなに賢くない?

このビーッと直線で撃ってくるブレスみたいなヤツだけど、放つ前に口をパックリ開けて、頭がブルブルと小刻みに震える。

フリーデリケさんが注意しながら空をクルクル舞えば町への被害はない。


きたっ!!

くそー、あのパカッとアホみたいに開けてる口にさ、無詠唱魔法で岩でも飛ばしてやるか。


「こ、この野郎…!!」


おっ、案外口に入るな?

へへーんだ、ポッカリ口を開けちゃって、入れ放題っ!!

馬鹿でーい!やっぱ単なるアホだ!


「いい気味だね!あの口にゴミでも入れちまいたいよ!」

「で、ですね…!」


フリーデリケさんの言うとおり、本当にいい気味である。

ん?なんだなんだ、ナンナホンオロチが止まったぞ?


「ちょ、ちょっとアメリさん!!なんかしましたか!?」

「様子が変にゃ!!」


変なこと…しちゃってはいるんだよなぁ…

あばばば…全部の頭がブルブルし出した…!?


「なんかヤバいよ!!リンちゃん!!結界だよ!!」

「フリーデリケさんアメリさん!!早くこちらへ!!」


どわっ!!

急降下!?

内臓がもわっと持ち上がったみたい…!




リンちゃんの結界とともに、ナンナホンオロチの全ての口から直線のブレスが狂ったように空を駆けた。

私たちが上に居たから上を狙った…?


「ちょっくらさ…い、岩を口に放り込んだんだよ!そ、そしたらこのザマさ!」

「マテウスたちもそれは試していませんでした。口に何かを放り込むと異物を吐き出そうとパニックに陥るのかもしれません…」


今回は運良く被害なし。

だけどこれは絶対二度とやっちゃダメだ…

後世にも伝えなきゃだね。


「危なかったな。空に向かってなかったら今頃俺たち以外は全滅だったぞ」

「でも運良くやっちゃダメな攻撃が判明したにゃ!!」

「こ、こっちにドスドス走ってくるよ!!」


うっ…すごい地響きだ。

ついに本格的な戦闘開始だ!!


「アメリさん、合図を出したらヘカトンケイルを試してください!!リンちゃんは再び結界を展開する準備を!!ガリウスさんは右、ジルさんは左に!!フリーデリケさんは空で待機!!私とナターシャちゃんはリンちゃんの後ろで古代兵器を構えます!!」


フレヤさんの言葉にみんな各々動き出す。

私もやるか。


「……今ですっ!!」

「はい…!」


マギアウェルバ

緑よ緑よ

お前の遊び相手はお空の上

しなやかな腕で捕まえてご覧

無邪気な束縛

ヘカトンケイル


無数のぶっとい蔦がナンナホンオロチを縛る。


「ジル!!試し斬りだ!!」

「ああ!!」


ギッチギチに縛り付けているせいか、即抜け出すって事はなさそう。

でもずっと拘束は多分無理だ、クイーンよりは時間がかかる感じかな。

アチコチでブチブチってとんでもなく派手な音が聞こえてくる。


「アメリさん、今のうちにヴェノムハイノスタルジア!」

「は、はい…!」


効くとは思わないけど…


マギアウェルバ

緑よ緑よ 霧よ霧よ

この手に宿るは死の息吹

命を蝕む猛毒の霧

一度溢れた力は限りなく

全てを侵す破滅の緑

逃れられぬ苦痛の渦

ヴェノムハイノスタルジア


これでどうだ?


「くそっ!!硬くて刃が通らねえ!!ちょっとやそっとでどうにかならねえぞ!!」

「こっちもだ!!闇雲に攻撃していたのではキリがない!!」


くそ、ガリウスさんとジルさんの攻撃は通らずか。


「オロチのやつ首がジタバタし出したよ!!さっきの全部の口からの一斉攻撃はなさそうだよ!!」

「ダメか…、足止め程度と考えた方が良さそうですね!分かりました!それでは次に即死、ディアヴォルパラディーススを試しましょう!!」

「あ、はい…!」


うーむ…この流れじゃ効果的な感じじゃなさそうだね。


マギアウェルバ

光よ光よ 闇よ闇よ

行きはよいよい 帰りは恐い

笛吹男のパレードは永遠に終わらない

楽焉(らくえん)へようこそ

ディアヴォルパラディースス


気味が悪いヒョロヒョロの影が一斉にナンナホンオロチに襲い掛かる。


まるで喉の奥から何重にも重なったみたいなうなり声。

そしてビリビリと肌に伝わるような激しい怒りがナンナホンオロチの全ての頭から漏れだした。

『ゴオォォォゥ…』とでも表現すべきか、耳を塞いだとしても届いちゃうような響き。

頭が激しく揺らされたような立ち眩み、本能的にブルブルと震えちゃいそうだ。


だけどお姉ちゃんから受け継いだバトロアン・ワービットの力なのか、恐怖で足がすくむ事はない。


「あっ…!」


マズイマズイマズイ…!!

今ので私以外の全員がその場にへたり込んじゃった!?

みんな放心状態で震えてる。

これは本当にマズい…クイーンの女王怒気みたいなもんか?


フレヤさん…もダメだ。

ナンナホンオロチもダメージは入ったみたいだけど、じゃあどうなったって訳じゃなさそう。

多分イタズラに怒らせただけだ。


わ、私一人でなんとかしなきゃ!!


マギアウェルバ

光よ光よ

民を導くその手に握る棒は

悪を討ち滅ぼす聖剣となる

成し遂げろ未来の英雄

フラグメンアニモ


地面を蹴りつつ光の剣を出す。


この野郎、んなチャチな怒気なんざ私には効かない!!

覚悟しろ、この気持ち悪い蛇野郎!!

面白かったという方はブックマークや☆を頂けますと幸いです。

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このオロチ、魔法協会謹製だったりしませんかね…んで戦いで消耗したところを襲われるとか…
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