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不思議な魔女っ子とちびっこサポーターの冒険譚  作者: 三沢 七生


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16.ワクワク

フレヤさんの実家でくつろいでいる私。

フレヤさんの甘えん坊な一面が見れてほっこりしつつ今に至る。




ミリアさんが作ってくれた料理が運ばれてきて私達は夕食を食べることに。

フレヤさんが作ってくれた料理のように素朴で美味しくて、ああきっとフレヤさんはこの味を覚え、またミリアさんもミリアさんの母から教えてもらったという風に伝わってきたんだろうなと、しみじみ思った。


フレヤさんは私の前で見せるしっかり者のお姉さんの顔ではなく、明るく無邪気な顔でネーベルタイガー討伐についてユージンさんとミリアさんに事のあらましを語った。

ユージンさんもミリアさんも声を上げて笑っていて、照れ臭さよりもフレヤさんの冒険譚が単調でつまらない出だしにならなそうな事にホッとした。


しかし、ユージンさんもミリアさんも私の魔法に関してはフレヤさんと同意見なようで……


「そんな異常な強さの魔法なんて聞いたことがないよ。お父さんとお母さんは誰にも言わないからさ、フレヤ、アメリさんの手の内は、大台に乗った傭兵として大成しないうちは、積極的に明かさない方がいいね」


と、ユージンさん。


うーむ、世間一般の見解として、やっぱ隠すべきなんだ……

ミリアさんも腕を組んで、頷きながら口を開いた。


「日頃の討伐も格闘で済むなら、誰が見ているか分からないし、魔法によるド派手な攻撃は控えた方がいいわね。仲間が欲しかったら本当に信頼出来る人か、或いは腕に覚えのある奴隷ね」

「そうだね。戦力的にどうしてもキツくなってきたら仲間というよりは奴隷を視野に入れるよ」


ど、奴隷っ!?

こんな母と娘の会話でペロッと普通に出てくる程度にはごく当たり前の制度なんだ!?


私自身、奴隷について言葉や概念は知ってるみたいだけど、あまり身近なモノだったようには思えない。

何というか奴隷……人をお金で買って従えるなんて怖いな。


「あ、あの……どっ、ど、奴隷って仲間に出来るものなんですか……?」

「えーと、仲間にするというよりは奴隷商館で買うといった形ですね。奴隷は特殊な魔法陣が施された首輪を身に付ける事で隷属もさせられますので、契約によっては秘匿したい情報などが奴隷の口から漏れ出る事はありません」

「えっ、れ、隷属……?そ、そんな首輪、危険すぎませんか……?」


誰かが寝ている隙にスルスルと首輪をはめて隷属させるとか出来たら危険すぎない?

国家転覆だって簡単に出来そうだよ。


「された本人は兎も角、他の人はカンタンに外せると聞きますから、不当に嵌められたとしても然るべきところに首輪を持って訴え出ればいいだけの話ですよ。そのあたり、隷属化に関しては大抵どの国も大変シビアな姿勢を取っていますので、犯罪に使おうものなら即極刑になる国が殆どだと思います」


フレヤさんの言葉にホッと安心。

……いやいやっ!きょ、極刑!?

それも即っ!!

どこに転がっても怖いよ!!


「そそ、そ、即極刑……こ、怖いですね……気をつけないと……」

「あはは!アメリさんったら!なんで捕まる前提なんですか!?」


ぐぬぬ……フレヤさんってばゲラゲラと!

ああっ!ユージンさんミリアさんまでっ!!

こ、怖いじゃん!!


「はは!アメリさんはそんな犯罪に手を染めないでしょう?尤もアメリさんの腕っ節があれば、そんな首輪をされそうになる前に相手をはり倒せるでしょう!」


ユージンさんがそう言って笑うとミリアさんまでもがつられて笑い出す。

フレヤさんもクスクス笑いながら補足をしてくれた。


「ふふ、話によれば隷属化させる首輪は魔法協会でのみ作られる高度な魔導具らしく、魔法協会に認定された奴隷商人にしか払い出されない代物みたいですよ?」

「あ、へ、へえ、そうなんですね。な、なんだか随分と値が張りそうな首輪ですね……」

「ええ、普通の人はそんな隷属化なんてさせないで奴隷を使いますよ。魔法協会から認定された奴隷商人だけが隷属化を発動出来る仕組みになってるみたいですから、当然首輪の中古品なんて出回りませんし、犯罪組織も発動させられないから悪用しようがない感じです」


ふーん、上手いこと出来てるんだね。


「で、でもお金で人を買うなんて……それはちょっと……こ、怖いですね……」


奴隷になった人の中には、自業自得な行いの末に奴隷落ちした犯罪者も居るかもしれない。

でも、無理矢理連れてこられた人達や、奴隷の子として産まれた子だって居るかもしれない。

人が人らしく生きられない……そんなのは怖い。


「アメリさんが居た国はきっと奴隷なんて居ない素敵な国だったのでしょうね。私達の周りでは当たり前の事過ぎて、怖いだとかそういう感覚は無い人が多いと思いますよ」


ミリアさんはそう言って優しい顔で微笑んだ。




その夜。

私はフレヤさんのベッドでフレヤさんと一緒に寝た。

2人とも小柄なのはこういう時便利。


寝る前にフレヤさんはこれからの計画を立ててくれて、とりあえず宿代の掛からないこの町で一通りの種類の依頼をこなし、私を傭兵として慣らすついでにある程度の軍資金や調理済みの料理を貯めるつもりらしい。

兎に角明日の買い取り査定額次第でいくらまで貯めるか決めるとの事。


本当に頼りになるなぁ。




翌朝。


窓の鎧戸の隙間から差し込む光が丁度顔に当たって目が覚めた。

同じタイミングでフレヤさんも起床。

眠たい目を擦りつつもフレヤさんの身なりを整える。


いやー、しっかし、こうしてフレヤさんのお世話をしていると落ち着く落ち着く。

間違い無く私は誰かの侍女だったんだろうな。

だとしたらそのお世話をしていたご主人はどうしてるんだろう。

どこか遠い空の下で私のことを思い出してくれているのだろうか。


ま、メイドとご主人様じゃそんな関係はないか。


お礼にという事でフレヤさんが持っていた櫛で私の髪をとかしてくれた。

誰かにやって貰うって嬉しいもんだね。


朝食の時にフレヤさんの髪型を編み込みのハーフアップにしてあげた事が食卓の話題に上がった。

私の髪を整えるスキルが物凄いと話題になり、ミリアさんが持っていた使っていない櫛を私が貰うことに。


フ、フレヤさんが先に話題を出したんだからねっ!

私が白々しく話題に出して「何かよこせ」とせびった訳じゃないから!


しかしながらこういうご厚意は有り難ーく受けておく。




そんなこんなでユージンさんより先に私とフレヤさんは手ぶらで傭兵組合の事務所まで向かう事に。

報酬は私の異空間収納へ入れればいいし、依頼を受けたなら家でゆっくりじっくり準備しようと話し合いはまとまった。

と言うかフレヤさんの提案にうんうんと頷いていただけだけど。




「ほ、本当に金貨5枚も、も、貰えますかね……?」


特に金の使い道など無いのにソワソワする私は、隣を機嫌良さげに歩くフレヤさんに尋ねる。

ぐへへ、金貨!!


そう、昨晩の話では一般的にネーベルタイガーは丸ごと買い取りで一頭あたり金貨2枚は堅く、オウルベアもまぁ状態が良かったからひょっとすると金貨1枚は狙えるのではないかとフレヤさんが見立てていた。

その辺の相場は良く分からないけれど、お金はあるに越したことはないよね。


あまり綺麗じゃない宿に素泊まりで一泊一人あたり大銅貨5枚からそこそこの宿で銀貨1枚くらい。

安心安全で清潔な宿になると、銀貨5~10枚くらいかららしい。

勿論暫く連泊するから安くなるとか、その手の交渉はあるらしいけど。


計算が面倒くさくなってきたけど、掃き溜めのような宿なら一人当たり大銅貨5枚、つまり肉の串五本程度の価格で泊まれるみたい。

そう考えるとマリリヤ採取の依頼は銀貨80枚、ゴブリンの耳や魔核に薬草類が合わせて銀貨20枚…えーと一泊銀貨5枚としても20泊…ってまあまあいい報酬なんだね。


とは言えそう考えると金貨一枚や二枚では浮かれられない。

別にテントで野営でも良いんだけど、流石にそんな暮らしは疲れそう。




フレヤさんの付き人の如く、一歩下がって歩いていた私。

傭兵組合の事務所へ行くと、依頼が貼り出されている掲示板の前は大賑わいとなっていた。


ほへー、朝はこんなにも人で賑わうものなんだ!

凄いなぁ、男たちが我先にと依頼を物色している様子はちょっと怖い。

そのうち私とフレヤさんもあんな一団に紛れて依頼をゲットすんの?

いとも簡単に弾き出されそう。


っていうか現に今も出遅れた訳で……


「今日は常設依頼について説明してこなす予定ですから、掲示板は放置でいいですよ」


私が醸し出した『出遅れた!』感が伝わったのか、フレヤさんはチラリと私に振り向いて微笑んだ。


「な、なるほどですね……ほっ、本気で受けたかったら、もっと早く来ないと、だっ、だめですね………」

「そうですね。まぁ私達は小さいので人混みをスースー掻き分けていけますよ!」

「ふ、ふぅん……」


スースー行けそうな気がしない……

フレヤさんがそう言うなら…とは言え人混みは苦手だな。


受付は…と、リンダさんと泣きほくろが印象的な色っぽいお姉さんの二カ所か。

どっちも傭兵の長蛇の列を捌いていてとても忙しそう。

えっ?これ、ひょっとして受付ってこの2人しか居ないの?

いやぁ、この行列に並ぶのかー!


途方に暮れてふとフレヤさんに視線をやると、フレヤさんはウインクして所長のビクターさんが居る部屋へと歩みを進める。


ん?とりあえずフレヤさんについて行けばいいよね。

受付を介さない、何か特別な待遇でもしてもらえるのか?

何その特別感!


フレヤさん、ビクターさんの部屋の扉を三回ノックする。

所長に直接?大丈夫なのかい、フレヤさん!


「フレヤです。昨日の買い取りの件です」


と、フレヤさん。


扉は少しだけ開き、中からビクターさんがじっとこちらを覗くように見ていた。


怖っ!

何かこれから悪い話し合いでも始まるのか?


「よし、入れ」


声を潜めるビクターさん。


「はい。ほらアメリさん、入りますよ」


私の醸し出す不信感が可笑しいのか、フレヤさんはクスッと笑った。

訳も分からないまま、フレヤさんに促されるままに部屋の中へと入る。


何が始まるのやら……

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