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10.初仕事

と言う訳でこちらから相談する前から晴れてサポーターが決まってしまった。

トントン拍子な展開にワクワクして今に至る。




その後、フレヤさんはビクターさんから依頼が書かれた紙二枚を渡された。

内容についてはフレヤさんの方で把握済みとの事。

ニッコリ微笑みながら「後でご説明しますね」なーんて言ってた。


そして私にはデカデカと『2』と書かれたプレートと、私の情報が彫ってあるプレートがぶら下がっているネックレスを渡された。


その馬鹿でかい数字のプレートは等級を示しているとの事。

もう一枚のは私の名前と種族名、髪の色と瞳の色、そして組合員番号が書かれたプレート。

組合員番号は事務所の番号と、その事務所での登録した順番で採番された番号と組み合わせだとビクターさんが言っていた。

そうする事でほかの誰かと組合員番号が被る事は無く、一意な番号になるみたい。


とりあえず依頼をこなす事にして事務所を後にした私達。

町の中の適当なベンチに座って改めて簡単に自己紹介。

早速フレヤさんから今回の依頼についての説明を受けることに。


ちなみにフレヤさんは腰のベルトにインク瓶やら手帳やらを収納してるみたい。

へえ、腰のホルダー、ちょっとカッコいいな…

ホルダーに刺すもんないな…まさかあんな長い杖を腰に刺すわけにもいかないしなぁ。


「今回受けた依頼はネーベルタイガーの討伐とマリリヤの採取ですね。今回討伐してくれと言われている北の森は丁度マリリヤの群生地ですので、討伐ついでに群生地が勝手に見つかるかと思われます」


さ、流石ビクターさんが一押しするサポーター!

とても優秀な秘書を雇った気分。


「な、なるほどですね……そ、それって結構、あの、と、遠いんですか?」

「目的地自体はそう遠くないです。そこら中にワラワラ生息している類いの魔物ではありませんので、長期戦になるつもりで用意した方が良いでしょう。念の為『ひょっとしたら一晩や二晩は野営をするかも』くらいのつもりで良いかと思います」


ほほー、そんなもんなんだなぁ。

日帰りでちゃちゃっとじゃないのか。


「あ、そっ、そう言えば……食器や着替え、し、使用人の仕事道具は持っているのですが……テ、テントとかは、もっ、持ってないです……!」

「あれ、そうなんですか?荷物は泊まっている部屋にあるんですか?」

「え、あー、いや、えーと……い、異空間収納?です……」

「おおっ、流石です!異空間収納が使えるのですね!旅の快適さが桁違いですよ!幸運ですね!」


いやーそんなキラキラした目で見られると照れるなあ。

あ、フレヤさんのデカいリュックも入れれば良いんじゃん!


「あ、あのっ!よ、良かったら……そっ、その荷物……わ、私の異空間収納に入れます……?」

「とても嬉しいお心遣いですが、町の外を移動する時はいつ何が起こるか分からない以上、おいそれと誰かに預ける訳にはいかないんです。テントは私ので十分ですのでアメリさんに預かって貰いますね!」


そう言ってフレヤさんは自身の所持品について説明をしてくれた。


食器や簡単な調理器具や調味料。

松明や魔物除けのお香。

この間サラさんが使ってたような狼煙弾。

怪我や毒を治すようなポーションや包帯や軟膏などの応急手当ての道具。

後はロープや鎖、杭やハンマーなど。

兎に角気まぐれな傭兵連中のニーズに応えるためにありとあらゆる装備を常に持ち歩いているようだ。

次から次へと色々な便利そうな道具が出てくる。


もはやフレヤさんのリュックサックが異空間だ。

身体よりでっかいリュックサックをよく背負えるね……

脱帽です……




「……という訳で私の持ち物は以上です。後は依頼に応じて入れ替えます。」

「あ、あの……とっ、咄嗟に必要じゃないものまで……つ、常に持ち歩く必要はないかと……!」


そうだ。

鍋やフライパンが手元に無かったが為に落とす命など無いはず。


「うーん……確かにそうですね」

「げっ、厳選しましょう!……わ、わわ、私達、これから長年やってく……あ、あ、相棒なんです……!」

「相棒……ふふっ!では是非!」


なーんだよーこの人!いちいち可愛いんだよなぁ!


そんな訳でその場でフレヤさんが「これは常に手元になくていいな」という物を片っ端から私が空間収納に仕舞っていった。

実際2人であれやこれや議論しているうちに、フレヤさんが肌身離さず持ちたい物は小さな斜め掛けの鞄に入る程度しかなかった。

現に私の魔法や腕っ節でどうとでもなりそうな物ばかりだった。




「こんな軽装で出かけるなんて、何だかソワソワしちゃいます」

「こ、これからは、わ、私と居る限り……多分、そ、そそ、その程度で平気なハズです……!ひ、必要になった物は、っ都度見直しましょう……!」

「そうですね。では出発しましょう!」


ついに始まる傭兵生活!




私もフレヤさんもちびっ子。

これ到着まで結構時間を要するんじゃないの?と懸念してた私。

でもフレヤさんは小柄な割にはかなり足が早く、2人でお喋りをしながら歩いているうちにあっと言う間にお目当ての森まで到着。


道中のお喋りの中でパーティー名はどうするかと聞かれた。

正直なんのこだわりもないし、どういう名前が相場なのかも知らない。

その辺は既にサポーターとして活動しているフレヤさんに一任、もとい丸投げしてしまった。


道中一切魔物が出なかったけれど、開けた平原は大抵そんなものらしく、魔物に遭遇しなくても別に何の前触れでもないし不思議な事ではないらしい。

なので見晴らしの良い平原であんな大量のフォレストウルフの群れに遭遇するのは有り得なくはないけれど、相当珍しいってさ。


ちなみに今回みたいに受ける依頼以外に、常設依頼なる物があるらしい。

常に買取してまーすという類の薬草やらなんかの素材やらは傭兵組合がいつでも買い取ってくれるとの事。


フレヤさん指導のもと薬草を根元からザクザク切っては10株毎に紐で縛って私の異空間収納にしまい込んだ。

駆け出しの傭兵はこうして受けた依頼以外にも常設依頼をせっせかせっせかとこなして小銭を稼ぐらしい。


……私一人じゃ確実にそこまで気が回らなさそう。

こりゃサポーター必須な訳だよ……


勿論依頼にあったマリリヤも依頼の分だけ摘み取っては同じ様に処理するらしい。

ちなみにマリリヤ採取の常設依頼はないってさ。

だから欲張ってやたらと持ち帰っても買い取ってもらえず何の得もないといって必要以上の数は採取しなかった。




「そ、そう言えば、あの、い、依頼を受けていない魔物を討伐すると……?」

「勿論素材になる魔物は買い取って貰えますよ」


そりゃそうか。

常設とか関係なく素材になるなら買い取ってくれる、と。


「既に依頼が出ていた魔物なんかを、ことの成り行きで討伐した場合も、後追いで依頼を受けたことになります」

「な、なるほどなるほど……安心です……!」


そりゃそーだよね……

逆にそうじゃなかったら完全に倒し損だもん。

とはいえ、金が貰えないからって、人に危害を加える魔物をほったらかすのも、人としてどうかしてると思う。


「ちなみに他の傭兵が討伐依頼を受けていた場合、ちょっと面倒なやっかみを受ける可能性がありますね。横取りだって」

「はは……と、時と場合、ですね……」

「ですね。命の危機に瀕していた場合の討伐ならば堂々としていればいいんです」


だよねー、わざわざ狙いに行くのは横取り。

でもこっちの命の危機や、関係ない人の命の危機が絡んでいたら当然の対応ではある。

そんなに横取りが嫌ならおまえ達がさっさと倒しゃいいだろ!ってね。


そんな事、知らない人に言えないけど…


「なお、身の丈に合わない強さの魔物を持ち込むと、受付によってはお小言を頂きます」

「はは……な、なるほどですね……」


ま、まぁ命に関わる問題だし、組合側からすりゃ当然の反応かね。


ちなみに今回のお目当てのネーベルタイガーは、霧のように足音も立てずに森の中に潜むのが得意な魔物らしい。

とは言え本当に霧状になったりする訳じゃないらしく、見つけ次第一撃で仕留めてしまえば単なる虎も同然との事。


ただ遠距離で、警戒心の強いネーベルタイガーに気づかれずに一撃で仕留めるのは、口で言うのは簡単だけど実際の所、普通の傭兵では弓が得意な者でも中々大変なようだ。

私のように魔法が使える人にとっては臨時ボーナスのような依頼だとフレヤさんは言っていた。




「ちなみに今回の討伐依頼は木の伐採を生業とする材木屋からの依頼となります」

「へぇ…ざ、材木屋……」

「ええ。この辺りでは北の森だけに生えている木があるんです」

「ほぉ……そっ、そんなのが……」

「はい。サザと呼ばれる魔力を含む針葉樹なんですが、サザは材木として優秀と私も聞いたことがありますよ」

「サザ……」


ふーん、サザ?

知らないなぁ。


「そんなサザを伐採している時にネーベルタイガーに良い餌場が出来たと言わんばかりに目を付けられたようで、困り果てた上での依頼となります」


餌場……

怖っ!

人喰い虎……


「え、餌……!じゃ、じゃあ被害が……」

「具体的な被害までは分かりませんが、依頼が出たという事は恐らくそうかと。さっきまでその辺で枝打ちをしてた筈のヤツが忽然と消えた!とかそんな感じだと思われます」


思われますって!

ひえー、こわー……

しかし、そんな危険な目に遭ってまで伐採する程にそのサザという木はお金になるのかな。

何もこんな訳の分からない虎が出てくる森で伐採せずとも、その辺に木くらい生えてるだろうに……


あれ、っていうかフレヤさんは何故そこまで知ってるんだ?

依頼書には地図と倒してほしいターゲットの情報しか無かったはず。


「あ、い、依頼書にそんな事まで……か、書いてましたっけ……?」

「私、冒険譚を書くのが目的ですので、組合で依頼の背景を根掘り葉掘り聞くようにしてるんです。ネタづくり、習慣ですね」


得意気な顔して胸を張ってる!

でへへ、また「えっへん!」って感じに嫌みがない。

うわっ、えっ?あれ?っていうかこの人相当優秀過ぎない?

解説役として文句無しだよ。

可愛いし!

私、フレヤさんによってダメにされちゃうなーこれ。


「おー……な、なるほどですね……!じゃ、じゃあ!!とっ、討伐の仕方も何か一工夫……ド派手に……!」

「あっ、いえいえ!ヤラセは良くないです!命が関わってますから、アメリさんの思うままに最適で効率的な方法でお願いしたいです」

「あ、はい……そ、それでは……フ、フレヤさんを護ってくれる、お、おまじないを、かっ、かけたいと思います……!」

「おおっ!はい!」


フレヤさんはサッと腰からとった手帳に、何やらスラスラ書き始める。

おお、ネタ帳だね!

律儀!


「おまじない……と。なるほどなるほど……ありがとうございます!」


傭兵ド素人の私がフレヤさんを咄嗟に守るのなんて多分無理。

目には何も見えないけれど、反撃機能つきの結界の魔法でフレヤさんを守ることにする。


だって、そんな霧のように現れる虎がウロウロしているなんて怖いし、戦う術がないというフレヤさんは私よりもっと怖いだろう。


ガブッ!フレヤさんが噛まれた!このガルガル野郎め!

これでは遅い。

折角フレヤさんを紹介してくれたビクターさんに顔向け出来ないよ。


私が覚えてる数少ない魔法の中で、カウンターを仕掛ける魔法。

魔力大丈夫かな……ま、まぁ魔力が足りてるから覚えてるんだろうけど……


ゲフンゲフン!


『マギアウェルバ


闇よ闇よ 大地よ大地よ

彼は知ることになる

乗り越えようと覗き込んだ

壁の向こうで横たわる亡骸の正体を


常闇に佇む壁


アビスランパード』


二種類の属性の複合魔法。

魔力をガサッと持って行かれた感が凄い。


「ん?今魔法をかけて下さったのですか?」

「あ、はい。フ、フレヤさんを……こう……ババーンと、ビシッと護ってくれます」

「具体的にはどのような効果の何という魔法なんですか?」


おおっ、この好奇心がフレヤさんを解説役たらしめてるんだね!

こっちまで何だか凄い壮大な冒険をしてる気分になるよ。


「あ、えーとですね……アビスランパードという、ま、魔法でして……わ、私も実際に使ったという記憶は、な、無いのですが……」

「ふむふむ、アビス……ランパードと……」

「てっ、敵意を持った、こ、攻撃をしてくる不届き者から……フ、フレヤさんの身を、ま、まも、守ってくれます……!」

「ふんふん、なるほどなるほど……反撃すると」

「い、今……フレヤさんを、た、食べようと……おっ、襲いかかろうものなら……!すっ、鋭い岩が地面からこう……ズバッと突き出て……く、串刺しになります……!」


多分……ね!


「おお……凄いです!ふんふん!地面から……ふんふん」


この程度で喜んで貰えるならお安い御用だね。

私は熟練の傭兵ではないから、魔女っ子らしい守り方で。


「あ、えーと、とりあえず……うーん、ウロウロすれば……い、良いんですかね?」

「そうですねぇ…ネーベルタイガーは足跡も残さず、木に爪痕を残したり食事跡や排泄物を残したりしないようですので、私達が囮になって音を立てながら歩き回るのが手っ取り早いかと」

「お、囮…!こ、怖いので、じ、じ、自分にも魔法かけとこうかな……」

「それが賢明ですね」


ニッコリ微笑むフレヤさん。

こういうの慣れてるのかな…?

力があるはずの私の方がブルブル震えて、普通、逆じゃないかってツッコミは受け付けません。

フレヤさんと私にかけたら、もう既に魔力怪しいけどさ…大丈夫かな……?



面白かったという方はブックマークや☆を頂けますと幸いです。

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