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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
阿蘇ダンジョン攻略編
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スキルの暴威

いつもいいねをありがとうございます。

応援をこれからもお願いします。

氷の壁が解除され、僕たちは安全を確認して外に出た。


「本当に・・・僕と一緒にボス部屋に行くんですか? 先に上に戻るのもありですよ?」

「今回は1人で行かせることはできないわ。これで何かあったら責任問題になるし。先に戻るなんて論外よ」

「俺も日和子に同意。日和子を助けに行って、手助けしてくれた人を置いて帰るわけには行かないだろ」


木下から正論を言われて、僕は黙らざるを得なかった。

確かに、助けに来てくれた人を放置して帰ったら非難の的になるな。


「支援する分には問題ないのよね? それなら、アイスアーマーが割れそうになったら修復するわ」

「俺は・・・見てるだけか」

「見てるだけで十分だ。支援も少なめでお願いします。多少割れても無視してください。フェイスガードが割れたら問題ですけど、ショルダーガードぐらいならまだ耐えれますので」

「分かったわ」


それから3人でボス部屋を探して移動したが、特にモンスターと遭遇せずに見つけ出すことができた。

あの牛頭馬頭以外にモンスターはいなかったようだ。


「すぐに見つかったな」

「その分、ちょっと不気味な恐怖を感じるわね」

「地下6階が1番広かったみたいで、それ以降は徐々に狭くなっていましたよ。気にする必要はないはずです」


水も飲んだし、体力も十分にある。

大丈夫だ。

どんなボスでも今の僕なら倒せる!


左手に大鎚を出して扉に手を当てる。

少し押したら動いたので、2人に目で合図して勢いよく押す。

それと同時に大鎚のヘッドを前に向けた。

今までのモンスターのように、先制攻撃をされたとしても、ヘッドを巨大化すれば、大抵の攻撃は防げるはずだ。

そして、予想通り巨大な岩みたいなものが飛んできて慌てて大鎚を巨大化させて受け止めた。


ギャリギャリギャリギャリ!


大鎚にぶつかっただけで無く、それはまるで大鎚を削る勢いで回転して僕たちを部屋から押し出そうとする。

流石に入り口に入る前に折れたくなかった僕は、力で対抗して押し返す。

スキルで出しているから、大鎚が削れることは絶対にない!


「というか、何を投げつけてきたんだ! もう回転の勢いが落ちてもおかしくないのに!」

「さっさと押し込め!」

「軽く言うな!」


大鎚にかかる力を前に押し返し一歩前に進む。

すると、ようやく向こうからの押す力が消えて、僕らは部屋の中に入ることができた。

中に入って周囲を見渡す。

かなり広い。

大型のモンスターが縦横無尽に移動できるスペースだ。

ボスは・・・何処だ?


また不意打ちが飛んでくるかもしれない。

少しでも早く姿を確認しなければならないのに目の前には岩だらけ。

上を見てもそんな姿はないし、床には潜った穴もない。


「いたわ。あれね」


如月さんが指をさす先に、大きな丸い岩があった。

あれが最初に僕の大鎚と衝突した岩なのだろうが、ヒビ一つ入っていない。


「あれは岩では?」

「いいえ、アルマジロ系のモンスターよ」

「アルマジロ?」


アルマジロについては普通の動物でもその皮の硬さに色々な逸話があるほど特殊な生き物だ。

曰く、刃物が通らない。

曰く、銃弾を跳ね返す。

通常の状態でさえこんな逸話が残る動物なのに、こんな深層で階層のボスとして出てくるとどうなるか?


目の前の丸い岩がモゾリと動いてテレビで見たことのある姿に変わっていく。

だが、あくまでそれは姿だけ。

目の前のそれは目に敵意を宿らせて僕らを見ていた。


「まずい!」


アルマジロが息を大きく吸い込んだのを見て、僕は急いで2人から距離を取って、広間の中央で大鎚を構える。


「キュルルルルルルルルルルァァァァアアアアアアアアアアアア!」


超音波のような咆哮が僕らを襲った。


「ぐっ!」


大鎚をまた大きくして壁のように前に出す。

木下たちを見ると、木下が如月さんを守って、さらに氷の壁が2人を守っていた。

あれなら大丈夫だろう。

僕は気を引き締めて咆哮に耐える。

両肩のガードがビキッ! と音を立てた。

ヒビが入ったか!

だがこの程度ならまだいける!


咆哮が終わってすぐにアルマジロに向けて駆け出す。

対策をされているだろうが、生命力吸収の範囲内に入れれば多少なりともダメージを与えれる。

すると、アルマジロは皮骨を真っ赤に輝かせて頭を内側に丸め入れた。

何かをするつもりだ。

だが、攻撃すればキャンセルされるはず!

走りながら大鎚を肩に担いで柄を伸ばす。


「バカ避けろ!!」


木下の声が聞こえた。

咄嗟に右側に跳ぶと、アルマジロの皮骨から真っ赤な熱線が元いた場所を通り過ぎた。


「くそっ!」


通った場所に溶岩の川ができていた。

とてつもない熱だ。

ブラックドラゴンまではないにしても、あんなのを食らったら大火傷どころじゃ済まない。

てっきり土系統だと思っていたから意表を突かれた。


「集中しろよ! 京平!」


木下のアドバイスは的確なのだが、なんとなくムカついて仕方がない。

一度呼吸を整えながらアルマジロとの距離を測る。

まだスキルの範囲からは外れている。

アルマジロも目を真っ赤にして僕を警戒しながら少しずつ移動をする。


先に僕が仕掛けた。

一気に間合いを詰めるため駆け出す。

その直線上に、炎の球が襲いかかった。

大きさから言って球より弾丸と言った方がいいかもしれない。

着弾した弾が硬い床に穴を開けた。

破壊威力はかなり高いみたいだ。

だが、弾が発射される直前が見えているため避けれないこともないし大鎚で打ち払うこともできた。

流石に一直線は不可能だったが、横に移動しながらも徐々に間合いを削ることに成功している。


「キュルルルルルルルルルル!」


後一歩というところでアルマジロが突然叫び声を上げて身体を丸めて回転を始めた。


「スキルか!」


僕も大鎚を構えて受けの体勢をとる。

あのスキルに耐えれば自動的に生命力吸収の範囲内にあいつが入ることになる。

そうすれば僕の勝ちだ!


大鎚のヘッドを巨大化させたとこで、アルマジロも十分な推進力を得たのか、ズドン! と床から飛び出すように僕に向かってきて大鎚に衝突した。


ズドォォォオオオオオン!


大きな音がして大鎚が押された。


「負けるかぁぁああああ!」


ヘッドを直接右手で押す。

体勢は低く。

全身の力を全て前に向けるように。

ギャリギャリギャリギャリ! と五月蝿い音が響き渡る。

・・・ズルリと僕の足が地面を滑った。


「なっ! クソォォォ!」


踏ん張りに力を入れるが、それからも僕の足は滑り続ける。

今の僕の力よりアルマジロの突進の方が力が強い!?

生命力吸収も効いているはずなのに!?

単純にスキルだけの強さで僕の力を・・・身体強化と木下の付与を超えているのか!


「化け物が!」


ズルズルと足が滑っていき、ゴツンと何かに当たった。

岩かと思って目の端で確認すると、壁際まで押されていた。


「おおおおおお! こぉぉぉおおおのおおおおお!」


押し返そうとするが、それに合わせてアルマジロの回転数も増した。

響き渡る不快な音が僕の耳を打つ。

込める力とは裏腹に僕の上体は低い姿勢から起き上がっていき、力を全て大鎚にかけることができなくなった。

しまった! 

このままだと壁とモンスターに挟まれる!

焦りながら何か脱出手段はないか考える。

少しでも力を緩めたら一気に潰される!

何か考えないと・・・何かを!


視界の端で・・・木下が何かを叫んでいた。

バカだ。

この不快な音の中でお前の声が届くわけないだろ!

そう思っていると、木下がジェスチャーを始めた。

ヘッドを押さえている右手を支点に柄と左手でアルマジロの側面を殴る!?

出来るわけがない!

今この重量を支えている足から力を抜いて横に回ることも、高速回転しているアルマジロの側面を殴ることも!

側面を殴る?

確かにベルゼブブの籠手は強度が高い。

だけど、今までこんな攻撃を受けたことがないから、下手すると破損してしまう可能性だってあるんだ!

僕の生命線である衝撃無効が無くなるのは絶対に避けなければならない!

何か他に! 他に!!


「さっさとしろ! 臆病風ふかしてんじゃねーぞ!」


何故かそんな木下の言葉が僕に届いた。


「誰が臆病風ふかしてるって!?」


右足だけ残して左足を前に出す。

一瞬だ。

迷うな。

迷った分、行動が遅れる。

どうせこのままだと壁に押しつぶされるか、あの回転に巻き込まれて挽肉になるしかない。

行ってやるよ!

体重を左足にかける。

身体を捻る。

大鎚の柄をアルマジロに当てる。

火花が飛び散る。

熱さは感じない。

アルマジロの回転に巻き込まれる前に左手で殴る。

ゾリ! っと音がして恐怖を覚えた。

それが不味かった。

左手が回転に巻き込まれた。

拳が下を向き、腕、二の腕、肩と回転に引き寄せられる!

体は強制的に回転させられ、背中まで回転が及んで僕の足が地面を蹴る。

最悪僕の体がアルマジロの下に巻き込まれることを考えたら、この時点で足が反射的に地面を蹴ったことは最良だったのだろう。


大鎚から手を離し、僕の身体は錐揉みしながら地面と衝突して、アイスアーマーの破片を撒き散らしながらさらに転がった。


「日和子!」

「分かってる!」


一瞬感じた熱が引いていく。

急いで立ち上がると、既にアイスアーマーは修復されていた。

だが、左手のベルゼブブの籠手は、指から腕にかけて革が削り取られている。


アルマジロが回転を止めてこっちを向く。

僕は大鎚を再度出して構えた。


牛頭馬頭とは違った恐怖が、僕の前で身を震わせていた。

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