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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
宝箱探索編
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神器

宝箱は莉乃に見てもらって、僕は急いで高城さんたちのいるとこに戻った。


「宝箱がありました!」

「たから! いててて! 腕が! 足が!」

「四葉は無理しないで! 宝箱で興奮するのは分かるけど!」

「中は開けたの!? まだ? まだよね!」


高城さんは僕がお姫様抱っこしてみんなで莉乃のとこへ向かう。


「高城ちゃん!? 何で京平くんにお姫様抱っこされてるのかな!?」

「成り行きよ! いてて・・・なんか脇腹も痛い」

「肋骨も折れてるかも。帰ったら添木して温泉直行だね」

「土魔法でも作れるけど、すごく重くなるのよ。ごめんね、四葉ちゃん」


宝箱の横に、そっと高城さんを下ろして莉乃を見る。


「莉乃さん、罠関係は大丈夫そうですか?」

「うん。そっち関係は確認したよ。反応は無いから問題なし!」

「えっと・・・カメラはオフにしましょうか。組合には後で報告すれば問題ありませんし」

「そうね。スキルは個人情報になるから、カメラは問題あるか」


各企業や組合につながっているため、念の為みんなカメラをオフにして、その上で頭部カメラを手で隠す。


「それじゃ、莉乃さんお願いします!」

「はい!」


宝箱が開かれる。

何となくエフェクトで光を感じてしまうが、実際はそんなものはない。


「腕輪?」

「スキルは何? それ次第よ」


莉乃が手に取ってそれを凝視する。


「風神招来・・・」

「神器じゃない!」

「超レアキター!」

「初めて出るとこ見た!」


大騒ぎだ。

莉乃も嬉しそうに腕輪を抱きしめる。


「今すぐ出ましょう。もうここには用はないわ!」

「同意同意! あの鬼ともう会いたくないし!」

「これでミッションコンプリートだ!」


そこから早かった。

僕は高城さんを抱いて、莉乃が先頭、次に僕、最後に植木さんと麻生さんが走る。

敵は莉乃がスキルで感知して僕が踏み潰す。

無視できるものは無視して一気に入り口に到着して、安全を確認して僕だけ外に出た。


落ちて動けないファイアバードを全て踏み潰し、みんなを呼ぶ。

それからダッシュで阿蘇神社のスキル範囲に向かう。


「私は金持ちなんだ! 死んでたまるか!」

「自分の足で走って言って!」

「定番悲劇は遠慮します!」

「鬼木さんのシゴキも遠慮します!」


この人たちにはシリアスという言葉は無いのだろうか?

確か初回も同じような事を言っていたような気がする。



探索者組合に戻ってみんなで受付に並んだ。


「支部長をお願い」


莉乃が受付に伝え、受付は全てを把握して支部長室に内線をかけ、二、三言話をして受話器を下ろした。


「2階にどうぞ。高城様は医療室に。どなたか付き添いますか?」

「支部長には莉乃と瀬尾くんで十分でしょ。説明お願い」

「頑張ってー」

「お願いね」


軽く言ってくれるが、魔石の件でも言いづらいのにアイテムの件も言わなければならない。

僕と莉乃は装備を脱いでシャワーを浴びて着替え、支部長室の前に集まった。


「莉乃さんは、支部長にスキルまで言いますか?」

「京平くんとしては話したい?」

「そうですね。何のかんのでお世話になっているみたいですし。隠し事は・・・まだありますけど、最低限にしたいです」

「京平くんとみんなに知られている時点で、秘密でも何でもないから話していいよ」


僕たちは支部長室に入って、支部長にアイテムを手に入れたことを伝えた。


「そうか・・・お前たちの目的は成し遂げられたか。これからどうするんだ?」

「みんなの体調が万全になり次第、最後のアタックをします。それで天外天は解散。僕は安部を追います。・・・阿蘇にいるはずなのに情報があれ以来無いんです。支部長の耳にも入っていませんか?」

「入ってないな。入れば大概の情報は聞こえてくるはずなんだが・・・」

「浜田さんと宮地さんにも、次会った時に聞いてみます」

「そうだな。宮下は瀬尾と一緒に行動するつもりなんだろ?」

「ええ、そのつもりですよ」

「なら安心だな。ちなみに、今回手に入れたいアイテムのスキルは教えてくれるか?」

「黙ってても、使っている場面見られたら分かりますからね。莉乃さん、お願いします」

「うん。風神招来だったよ」


右腕の腕輪がキラリと光った。


「神器か! また凄まじいものを手に入れたな」

「神器って珍しいんですか?」

「幾つかは確認されているが、全て国の大統領や国王、法王も持ってたはずだ。あまり口外しない方がいい」

「そんなに凄いんですか?」

「神や悪魔、大罪、慈愛系の名前がついたスキルは封印対象か特定の者しか使用できないようになっている。手に入れた一般人も、使用者はほぼ破滅行きだったな。宮下も注意しろよ。神器使いはそれだけで目立つことになる」

「分かったよ。気をつける」


支部長は頷いて僕を見た。


「要件は以上か?」

「いや・・・最後に」

「待て・・・その顔は碌でもないな? ちょっと気持ちを落ち着ける」


支部長は胸に手を当てて目を閉じ、深呼吸をした。


「いいぞ!」

「これです!」


メロン大の魔石を支部長の前に置いた。


「・・・手加減しろよ」

「僕に言われても困ります」


これから支部長は、また国との交渉か。

色々頑張ってほしいものだ。


医務室に行くと、高城さんが右手足をぐるぐる巻きでベッドに寝ていて、向かって右側に2人が座っていた。


「温泉、いつ行きますか?」

「できたら今日にでも行きたい。お風呂に入りたいの」

「汗いっぱいかいたからね」

「私たちは更衣室でシャワー浴びたけど、四葉はまだだから・・・」

「体は拭いてもらったわ!」


トイレも大変だって聞いたことがあるし、連れて行くとしよう。


「莉乃さんはちょっと前に行きましたけど、また行きますか?」

「行くよ。ふき・・・ニキビも一瞬で治るから楽なんだよ」


なるほど、美容関係か。

僕にはまだ分からない悩みだな。

高校の時も今もニキビで困ったことがない。

体質かもしれないが、気づいたら塊になっているので、躊躇なく潰して取り出していたが、凹むことは一回も無かった。

まあ、2回温泉入ったのでその時に綺麗さっぱり消えたのかもしれないけど。


車とバイクを借りて麻生さんの運転で出かけることになった。

僕が先頭でスキルを使って突っ走る。

1時間もしないうちに温泉に到着して女性陣を中に入れた。

僕は今日はいいや。


「よかった・・・全部治ったわ」

「全部ツルッツルだね」


全員が肌ピッカピカで出てきた。


「帰りは私が運転するわ」

「お願い。運転久々でちょっと怖かった」


行き帰りで3時間もかからない小旅行でした。


最後のアタックは別日に決めるということで、僕らは宮地駅で別れて、1人で組合に戻ると、受付から2階に是非とも行ってくださいとお願いされた。

夜の7時になっても残っているということは・・・厄介ごとだな。

あの魔石を巡っての押し問答があっているのだろう。

僕は足取り重く会議室に入ると、支部長、副支部長、宮地さん、浜田さんが向かい合って座り、揃って項垂れていた。


「瀬尾か・・・お帰り」

「・・・ただいまと言いたくない雰囲気ですが・・・」

「特大A級魔石について話し合っていましたからね・・・結構問題ですよ」

「前回のはドラゴンキラーの冷却システムに組み込まれておりますが、それ以外にも、各種対モンスター用武器の製作工場にもつながっていて、その上でなお、まだ余力があります。ハッキリ言って、どこの部署も欲しがる魔石です」

「警察もその話は聞いていて、出たら何としてでも欲しいなっと、警視総監をはじめとする方々が笑いながら言っていたらしいです。多分、不可能だろうと考えていたから笑っていたのでしょうが、まさか出てくるとは・・・」

「探索者組合も一緒だ。前回は国防を優先させて権利を譲ったが、内心歯軋りものだったらしい。本部の連中から聞いた話では、当時の上層部の顔は見れたものじゃなかったらしいぞ。あの鬼木ですら話しかけるのを躊躇ったらしい」

「・・・1個しかないですよ? もう戦いたくないですよ?」

「モンスターが規格外だということは理解している。・・・今度の話し合いは何ヶ月かかるやら。それでだ・・・瀬尾、民間には絶対に情報は流さないでくれ」


なるほど、それが言いたかったのか。

確かにこの争いに民間を入れてしまうと、札束で叩き合うことになってしまう。

しかも、あの人たちはそういう状況になった時、国のことなんか歯牙にも掛けない。

何故なら予算が決まっているから、出せる金額の限界があると分かっているからだ。

敵は限界が読めない相手のみとなってしまう。


「分かりました。状況と思惑は理解できましたので松嶋さんたちには黙っておきます。ゆっくり話し合ってください」

「恩にきる」


僕はその後退席して、ホテルでゆっくりと休んだ。

装備関係は、近日中に天外天のラストアタックをするということで、組合が臨時メンテをしてくれることになった。

録画データを抜くんだろうな。


ホテルに着いてからは外には出たくなかったので、莉乃と一緒にホテル内で食事を摂った。

何処かばーちゃんのご飯と同じ味がして美味しかった。

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