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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
宝箱探索編
57/198

阿蘇山大感謝祭(探索者組合主催)準備中

街に人が溢れている。

普段こんなにいなかったよな。


「自衛隊や警察の人たちとか、他の地区の探索者たちも参加オッケーにしたのよ」


なるほど、その家族もここに来ているのか。


「移動ってどうやってしたんですか?」

「自衛隊や警察はまとめて来ましたよ。そっちの方が守りやすいとかで」

「鬼木さんも一緒に来たんですか?」

「私は単独。依頼でもないのに守りながら来たくないわね」

「そうですか・・・ホテルとか足りてるんでしょうか」

「足りません。そもそも阿蘇市は新暦になって最重要危険地帯の一つになったんです。観光事業はほぼ探索者頼みになっていましたから、ホテルもほとんどありません」

「みんなどうしてるんですか?」

「緊急でプレハブの家が阿蘇神社のスキル範囲内に建てられました。まだ自衛隊の方で建設中ですよ。猛暑の日じゃなくて良かったです」

「9月末ですからね」


僕は鬼木さんと宮地さんを連れて街中を歩いていく。

すれ違う人はみんな僕に気づくと手を振ってくれるので、僕も笑顔で振り返した。

祭りでサイン会をする代わりに、それまで僕にサインをねだるのは禁止と市民に通知があったそうだ。


「そう言えば、鬼木さんは東京で何かしてからこっち来るって言ってましたけど、もう用事は済んだんですか?」

「済んだわ。それもあっさりとね」

「・・・刀の関係ですか?」

「そうよ。購入した奴のとこに行ってきたわ。殺されてたけど」

「そうですか・・・」

「予想していた?」

「仲間か奪われたかと思ってました」


何が一般人に被害はないだ。

隠れているだけで、他にも何件かあるんじゃないか?


「鬼木さんは誰を追っているんですか?」

「名前は分からないわ。通称アイズ。殺した相手の目ん玉をくり抜いて持ち去る狂った奴よ」


そんな奴まで在籍してるなんて、反神教団って相当やばい集団なんだ。


僕らは歩いて宮地駅に向かうと、正面の道路が全て歩行者天国になっていて、中では屋台が着々と作られていた。

僕らのサイン会場はどこかな? と探していると、駅の前に特設コーナーが作られていた。

駅の入り口周辺にも屋台が作られていて、特設コーナーの近くは大鷲製薬と松尾食糧の看板が付いていた。

付近のお店は、当日はいちよ開店するので、そのお店の前だけは屋台が建てられないように、地面にバツ印が書かれている。


「花火はどこであげるのかな?」

「広場とか近くにあるならそこでやるんじゃない? 阿蘇神社が守ってくれるからモンスターは気にしなくていいでしょ」


そういえば、お参りを最近していなかったな。

祭りの前に行っておくべきか。

うん、莉乃と行こう。


一通り3人で回った後、僕らは組合に行って、そこで宮地さんとは別れた。

中では支部長と副支部長がイキイキと指示を出している。

お偉いさんとのお話し合いより楽しそうで何よりだ。


「お前ら! くだらん仕事しやがったらぶっ飛ばすからな!」

「色と形が悪かったら減額ですからね。一万発打つ責任を持って仕事していただきます」


うん、楽しそうだ。



次の日、僕と莉乃は一緒に阿蘇神社に来た。


「そういえば、私も最初以来来てなかったかも」

「神社もお寺も行きませんからね。神様がいるのは周知の事実ですけど、文字通り神様ですから、僕らだけを見てるわけではないですし」

「いつも見てくれて何か助言くれたら、いつもお参り行くけどね~」


まさしくその通りなので、僕は頷いて楼門を潜った。

それから拝殿で手を合わせてお辞儀をし、願い事を伝える。


「(どんなに苦しくても辛くても、最後はハッピーエンドを望みます)」


しっかりと願って頭を上げ、こっちを見ている莉乃と移動した。


「熱心にお願いしてたね」

「神社の中で、唯一スキルを授かって街を守っている神社ですからね。ここからなら神様に一番近いかもしれませんし」

「そっか、私ももっと真剣にお願いしとけば良かった」

「僕が願ってたから大丈夫ですよ」

「うん」


僕が何を願ったかは聞かない。

多分、一緒の願いだ。


それから近くの駐車場で、既に屋台を開いている店に行き、焼きそばを買って空いている場所で食べた。

1人分を2人で食べたけど、それなりに腹にたまった。

それからも、縁日間際の屋台を眺めて宮地駅に向かいながら時間を費やし、そこから一の宮運動公園まで足を延ばしてみた。

そこでは花火の準備をしていて、数え切れないほどの筒と機材が所狭しと並んでいる。


「・・・今週末、予定は晴れですね」

「私がいるからね! いい風が吹くはずだよ!」

「晴れ女なんですか?」

「違うけど、いざという時は風が雲を流してくれるんだよ」


莉乃は飛んで戦うスタイルだから、風は是非とも味方につけてほしい。

それからまた阿蘇神社に戻る途中で、駅近の屋台で焼きそばやたこ焼きを食べている3人を見つけた。


「鬼木さんに見つかったら、怒られそうな食べ物がテーブルに並んでますね」

「ちょっと言ってあげよ・・・遅かった」


莉乃が見た方を見ると、般若が宙に浮いていた。

周囲の人たちが後ずさりしている。

僕と莉乃は、彼女たちの元へは向かわずに、下を向いて鬼木さんと視線を合わせないようにその場を歩き去った。

しばらくしてから後ろの方で、3人の叫び声らしきものが聞こえたが、僕らは振り向かずに前だけを見て歩いて行った。



祭りの前日に、支部長に呼び出された。


「アコアを温泉に連れてやってくれ!」

「支部長が連れて行けばいいでしょ!」

「次の日が祭りだぞ! 俺では間に合わん!」

「何で無計画なんですか! アコアさんが来てすぐ連れて行けば良かったじゃないですか!」

「俺は忙しかったんだよ! そこまで気が回るか!」

「回さなかったんでしょ!」


支部長の後ろでアワアワしていたアコアさんだったが、言い合いの途中から両手を合わせて拝みだした。

多分、1日であそこまで往復できるのが僕しかいないことを理解したんだ。


「ごめんね。肌が若返る上に髪も綺麗になるって聞いて・・・お願いしたの。イベントには綺麗な私を見てもらいたかったから」


芸能人ですからね!

綺麗でいるのが仕事ですからね!


「サイドカー付きバイク!」

「用意する!」

「行きますよ!」


バイクに乗って生命力吸収全開で走らせる。

途中、モンスターが何体かいたが、完全に無視した。

温泉に着いてアコアさんが入るついでに僕も入っていると、隣から感激した声が聞こえてきた。


「きゃー! こんなに肌が若返るなんて!」

「貴方幸運ね。瀬尾京平に連れてきてもらったんでしょ? 彼なら安全確実だから、彼がオッケー出さないと連れてきてもらえないのよ」

「そうなんですか? 無理言ってお願いした甲斐がありました!」

「いいコネをお持ちなのね。大切になさい」

「はい!」


お風呂から上がって待っていると、アコアさんが綺麗になって出てきた。


「お待たせしました」

「・・・帰りましょう」


確かに綺麗になっていた。

・・・コンサートもあるし、仕方がなかったと考えよう。

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