表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
ドラゴン来襲編
52/197

閑話 元問題児のパーティメンバーの奮闘

私の朝は早い。


「ほらー、みんな起きて。莉乃も起きて。今日から瀬尾くんと別行動なんだから!」


私が大声でみんなを起こし、布団を順番に剥ぎ取っていく。

一美と乃亜がモゾモゾと起きてそれぞれ歯磨きや朝シャンへ向かう。

そして、うちの問題児・・・いえ、もう元がつくわね。


「うぁ・・・おはよ」

「おはよう。ほら、出かける準備しないといけないんだから早く起きて」

「・・・宮古島?」

「そうよ。最近調子いいわね。ポンコツ莉乃は返上かな? とりあえず、今日は向こうに行く準備して、午後には大津町に行かないといけないんだから、乃亜の後にシャワー浴びてね」

「はぁーい」


ボサボサの髪をガシガシと掻きながら起き上がり、眠気まなこで私を見る。


「大丈夫? 私のこと分かってる?」

「高城ちゃん~」

「うん。やっぱり最近調子いいわね。ほら、さっさと行ってきて。朝食も下で食べるんでしょ?」


朝はボケーとして、色々なことを思い出すのに1時間ぐらい必要なのに、今日は前日打ち合わせていたことをしっかり覚えていた。

瀬尾くんと交流を深めて、いい方向に向かっているようだ。


「保護者はもう不要かな」


タイミング的には丁度いいだろう。

莉乃のアイテムがいつ出ても、問題ないと私は感じていた。



「莉乃が忘れ物無いなんて・・・火の玉でも降るかしら?」

「ドラゴンが一杯使ってくるよ」

「本気で使ってきそうだから言わないで」

「でも、本当に凄いわね。瀬尾くんと付き合いだしてから?」

「え? そ、そんなにかな?」

「いや、普通の事だからね。それが出来なかった事がダメだったんだからね」


早々に現地に到着したので、私たちは海水浴を楽しんでいた。

何てったって、滅多にくる事ができない南国の島!

白いビーチ!

ドラゴン来襲ということもあって、今は探索者しかこの浜辺にはいない。

私は黒をベースに赤いラインのセパレート。

乃亜はピンクのフリルが付いたセパレート。

一美は花柄のセパレートでパレオ付き。

莉乃はパンツタイプのセパレート。

みんなで南国の日差しを楽しんでいた。

ただ、私と一美だけならそこまで視線を集めないのだが、乃亜はピンクのフリルが似合う童顔で、莉乃は体型もゴージャス美女だ。

結果、男性探索者の視線を集めてしまった。


「こんにちは、君たちもしかして、暇してる?」

「チッ!」

「チッ!」

「チッ!」

「ペッ!」


一美が思いっきり唾はいた。

砂浜が汚くなるからやめなさい。


「え? ちょっと反応悪くない? これでも俺って4級探索者で岐阜でもトップ5に入るんですけど」


こっちは2級と3級のパーティで1級と協力して三大ダンジョンをアタックしてるわ。

そもそも岐阜県に有名なダンジョンあったかしら?

何も反応せずに相手を無視していたら、そいつは莉乃の腕に手を伸ばしてきた。

・・・痛い目見た方が早いか。


男の手は空を切って、反対に莉乃が体を回転させて足を振った。

速度的に一美のバフも入ったみたいで、彼女の足がダイレクトに男の後頭部にヒットした。

男はその一撃で意識を飛ばしたようで、砂浜に顔から突っ込んだ。

男のパーティメンバーが来たみたいだから問題ないでしょう。


「ビーチボール持ってきたからみんなで遊ぼー。負けたら晩ご飯の時にテキーラ3杯ね」

「またそういうことを言う。ドラゴンと戦うかもしれないのよ?」

「それじゃ、高城ちゃんは不戦敗ねー」

「何で勝手に負けにするのよ。私が負けるわけないでしょ?」

「麻生ちゃんと植木ちゃんもいいー?」

「いいわよ」

「久々の賭けね!」


私が負けた。

ボールが何故か私に集中していた。

おかしい・・・他の3人に向かったボールも風で私のとこに飛んでくる。

私、何か悪いことしたかな?



1回目のワイバーン迎撃は完璧だったと言える。

自衛隊もミサイル攻撃から始まり、追加で来た3頭もあらかじめ用意していた投網で雁字搦めにして退治出来た。

でも、ハズレスキルがあんな有効に使えるものだとは思わなかった。

裏技って言ってもいいんじゃないかな?

1頭目は仲間にやられて乃亜が土の中に埋めて倒した。2頭目は私たち天外天と他数名で最後は窒息死。

乃亜が攻撃する前に水魔法使いが窒息させようとして失敗したみたいで、高温の水蒸気で近寄れず、結局乃亜が1頭目と同じように窒息死させた。

3頭目は莉乃が目の奥まで単槍を突き刺していた。

その前に何か攻撃があったみたいで、莉乃が必死の表情で駆けていった。

目の周囲が焦げていたから、火関係のスキル保持者が目を焼いたのだろう。


「莉乃! 大丈夫?」

「うん! こっちは大丈夫! ちょっと怪我人を確認してくる!」


無事みたいだ。

私はホッとしながら彼女と同じように、怪我人の救助に入った。


その日の夜から怪我をしていないパーティでいくつかのチームを組んで警備にあたった。

その際に、この機会に! と不純目的で混合チームにしようとか言ってた人がいたが、女性パーティが一丸となって排除した。

もちろん、元から混合パーティが女性のパーティとチームを組みたいとか要望があったが、私たちは女性だけのパーティとチームを組むことになった。


「ありがとうね。私たちサイレント・キッスとチーム組んでくれて」

「こちらこそ。私たちは男性を1人も入れたくなかったから、最悪何処とも組まずに単独で行動するつもりだったのよ」

「持ちつ持たれつね。でも、貴方たちって、話題の英雄と一緒にダンジョンアタックしてなかった?」

「彼は例外よ。私たちのことなんか歯牙にもかけてないどころか、近づくなって雰囲気を最初出していたから。うちの莉乃が、よーやくアプローチが成功して心を開いてくれたの。そのぐらい安全じゃないと、男性とは組みたくないわ」

「私たちも同じく。そのくらいじゃないと、どうしても危険を感じてしまうわね」

「それじゃ、今夜から何日間になるか分からないけどよろしく」


私たちは握手してそれぞれのメンバーに経緯を話し、合意を得てから全員で顔合わせをした。


「今回はよろしくお願いします。サイレント・キッスは5人パーティでメンバーのランクは3級2人と4級3人よ。メインダンジョンは岩手県の遠野市になるわ」

「こちらこそよろしくお願いします。天外天は4人パーティでメンバーのランクは2級2人と3級2人ね。2級といっても、最近なったばかりだからそこまで深く考える必要はないわ。メインダンジョンは阿蘇よ」


後ろの相手方のメンバーが手を叩いて喜んでいる。


「憧れなのよ。三大ダンジョンで活躍した女性探索者が。私たちも2級を目指しているのだけど、なかなかね」


世間で言えば3級でも十分高ランクで、更に名前が売れればサインを求められるレベルだ。


「最低限専用装備がないと、2級はね・・・」

「やっぱり、専用装備か。お金貯めて何とかするしかないのかな」

「こればっかりは、私もアドバイスはできないわね。本当に、運と縁で手に入れたようなものだから」


莉乃たちもそれぞれ相手メンバーと会話をして、交流を深めていた。

それから夜中の1時。

私たちの巡回の時間が来て、交代を知らせる連絡係が呼びに来た。


「ワイバーンは何が目的で宮古島に来ているんだろうね?」

「肉食らしいから、宮古牛が目的じゃないかしら?」

「夜は一箇所に集めるよね。くる可能性あるかも」

「巡回範囲に入っている牧場施設に注意をしましょう。空からの急襲があり得るわ」


ファイアバードの恐ろしさを知っているだけに、みんな真剣に頷いた。

初日の夜は異常は見当たらず、私たちは時間になると、連絡係の場所に行って次の担当を呼んでもらった。


2日目の朝。

7時から奴らの襲撃は始まった。


私たちは初日のこともあって武器だけは離さないようにしようと決めていたので、ロビーの受付で待つ必要がなく、専用装備を急いで着込んで外に出た。


「先に行くね!」


莉乃だけはベランダから飛び降りた。

ワイバーンと空中戦をやるつもりだ。


「何頭来ましたか!?」

「6頭だそうです! 網で2頭は行動不能にしましたが、1頭は降り立ち、3頭はまだ飛んでいます!」


まずは最初の1頭を倒そう。

おそらく莉乃が次から次に落としてくる!


「一美は私と一緒に! 乃亜は網で動けない奴の止めを先にやって! みんな! 行くよ!」


私は残像を駆使して地上のワイバーンに果敢に攻める。

他の人がもう飛べないように翼を切り裂いていたから、気をつけるのは火の玉と尻尾だけでよかった。

ランクで言うとB級の強い方といったところだろうか。

私と一美が刀を突き刺して捻る。

筋肉繊維を絶った感触が手に残った。


「ギョォォォオオオオオアアアアアアアア!」


ワイバーンの叫び声が周囲に響く。


「一美! 後は他の人に任せるよ!」

「分かった! あ、莉乃が落とした!」


空を見ると、破れた翼を必死に動かしているワイバーンが2頭落ちていた。

その下に、大地が無数の棘に変化して待ち構えている。

乃亜がやったみたいだ。

網のワイバーンはまだピクピクと動いているので、まだ死んでいるわけではない。

おそらく、彼女なりに周囲を見ていて、落ちたのを確認したんだろう。

私たちはそれぞれワイバーンに襲いかかり、致命傷を与えていく。

私たちは順調にワイバーンを倒して一息ついた。

だけど、西の伊良部ではそうは行かなかった。


「何あのワイバーン」

「黒い・・・亜種?」


上空からとてつもない巨大な炎の塊が落ちた。

これはどうしようもない。


「助けに行くよ!」


あれはB級じゃない。

多分それより上だ。

私は急いで伊良部大橋に向かって走り出す。

莉乃とも合流して伊良部大橋の入り口に着いたとき、地上から黒いワイバーンに向けて光の線が走った。


「ギャアアアアアアアアアアアアア!」


悲痛の叫び声がここまで届いた。


「・・・ちょっと私、様子を見てくる」


落ちて行ったワイバーンを見て、莉乃が空を駆けていく。


黒いワイバーンは討伐された。

莉乃と向こうに配置されていたチームにボコボコにされたらしい。

結構な迫力だったが、何とかなったようだ。


沖縄チームとして、ワイバーンをそれなりに倒せたとは思うが、日本全体でどのくらい襲撃があったのだろう・・・。


私たちが、その被害と死傷者を知ったのは、鹿児島に戻ってからだった。

次回より6章に入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ