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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
ドラゴン来襲編
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宮古島戦線

ブックマーク・いいねありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いします。

天空大陸がもう間も無く本州に再接近する。

自衛隊が算出した予測進路では、まるで台風のように弧を描く感じで動いていくようだ。

小笠原諸島などは、完全に上空を大陸が通り抜けていくらしい。

なので、住民は全員本州へ移動させたとテレビでアナウンサーが言っていた。

莉乃さんがいる宮古島も、住民は自衛隊が沖縄本島へ移動させたらしい。

探索者たちが、遠慮なくスキルを使えるようにとの配慮の気持ちもあったようだ。


僕たちは3人集まって、土尾さんの折りたたみ画面とテレビを繋いで、今の宮古島の様子を見ていた。

自衛隊の予測では、宮古島には今日再接近する予定となっている。

僕は何があっても助けに行くことができない。


「莉乃さん・・・どうか無事で」


もうテレビからでも分かるぐらい天空大陸が大きく見える。

そして、その周囲を飛行する物体も見え始めた。


「あれがワイバーンだ」


その内の一頭が、カメラの方に近づいてきて徐々に鮮明になってきた。


「デカい」

「これはぁ、ちょっとキツイかもねぇ」


大きさが単純に力になるわけではないが、物体としても重さは上から降ってくるだけでも驚異になりうる。

圧死は僕の衝撃無効でも防げない攻撃だ。


その姿がだいぶん近づいたところで、まず、自衛隊の対空攻撃が開始された。

相手がモンスターなので、問答無用の先制攻撃を仕掛けたようだ。

それに対抗して、ワイバーンも炎の球を吐き出すが、一回一回にそれなりの時間を要するらしく、自衛隊の物量に押されていた。


「炎の球は恐ろしいですが、今の状態なら撃退は出来そうですね」

「問題は、こいつが偵察だった場合だな」


僕は頷く。

もしこいつが1番弱い個体で、すぐ後ろに大群が待っているのなら、宮古島が崩壊する。


「不味い状況になった場合は、みんな避難できるようになっているんですか?」

「万が一に備えて、宮古島と石垣島を繋げた海底トンネルがあったはず。逃げるのならそれを使うだろ」


僕らが話をしている間に、単体で来たワイバーンは一回も地上に降りることなく戻っていった。


「逃げ帰りましたけど、手傷を負わせることが出来ませんでしたね」

「これからが本番だろう。向こうも多少の損害覚悟でくる」


しばらく探索者たちの姿が映し出され、各々が休憩を取っている様子が流れた。

天外天の人たちっぽい姿が見えた。

全員が灼熱ダンジョンで使う専用装備を着ていた。

飛行装備や動物対策装備、魔法強化装備のためだろう。

頭部装備を外して風を感じているようだ。


画面を通して緊張を感じていると、土尾さんの携帯が震えた。

耳に当てないところを見ると、メッセージが届いたようだ。

それから土尾さんが折りたたみの画像を少し扱うと、メインの画像以外に4つの画像が現れた。


「ドローンからの映像らしい」

「これで対策を考えろってことかなぁ」


多分その通りなのだろう。

僕は映像を観ていると、あることに気づいた。


「あれ? ミサイルがない?」


僕の言葉に、土尾さんが映像を次々入れ替えて確認を始めた。


「まさか、次は陸上戦をやるつもりか?」

「どうやって落とすつもりかなぁ?」

「いや、地面に段差がある。なんだあれ?」

「・・・塹壕だ! 何かを隠してる!」


僕たちからはわからない角度でしか映像が映されない。

そこには、おそらく自衛隊なのだろう、迷彩服を着た人たちが頭だけを出して警戒している。

不意に、何人かが空を指差した。


「来た!」


広場の中央を陣取っていた人たちが散らばり、ドローンも4方向に移動して全体を見渡せる位置で留まった。

そして上空から・・・ワイバーンが落ちて砂埃を上げた。

ズタボロになっていたため、すぐには判別が出来なかったが、先ほどの偵察できたワイバーンと思わしき個体が瀕死の状態で横たわっている。


「グルルルルルァァァァァァアアアアア!」


上空から咆哮が降り注いだ。

ドローンのカメラが向きを変えて上空を映す。


「3体か」


最初の一頭は、もう無視して問題ないだろうとみんなは判断したのか、全員が上空に注意を向けている間に、恐らく植木さんだと思うが、地に落ちたワイバーンが地面の中に完全に埋もれていった。


そして、最初に炎の球が降り注いだ。

現地にいる人たちは当たらないように逃げ回り、反撃の機会を伺う。

しばらく炎の球を打ち続けていたワイバーンだったが、避け続ける人間たちに苛立ったのか、3頭の高度が徐々に落ちてきた。


「仕掛けるなら・・・」


今だろう。

僕の思った通り、塹壕に隠れていた人たちが中から巨大な筒を起こして、ドォォン! と何かを打ち出した。

それも一つではない。

全部で3つの筒から塊が打ち出され、上空で広がってワイバーンたちに覆い被さった。


「網か!」

「でもぉ、引きちぎられないかなぁ?」


僕も入江さんと同じ意見だ。

A級モンスターには投網は通用しない。

ジャイアントゴーレムだと、網が覆っても体勢を崩すことなく引きずって歩くし、モンスターによっては網を溶かすやつまでいる。


「そうはなっていないみたいだぞ」


網が絡まって翼を広げることができないものや、網の中で広げてはいるが、何故か目が虚になってたり、起きては倒れ、また起きては倒れを繰り返している。


「まさか、デバフの付いた網?」

「なるほど、ハズレスキルの網か」


そんなワイバーンに、探索者たちや自衛隊、警察は襲いかかった。

そこに容赦はない。

剣で翼を切り裂き、ハンマーで頭をぶっ叩いてどんどん弱らせる。

莉乃さんも、翼を広げることが出来ずに転がっているものにめがけて単槍を突き出し、目玉を抉った。

たまらず口を大きく開けて叫ぶワイバーンに、今度は土がその口に侵入する。

生物は生きている限り呼吸をする。

このワイバーンも、その法則には従っているようで、口と鼻を塞がれ、悶え苦しみながら倒れて動かなくなった。


動かなくなったワイバーンには念の為2人が残って他の人たちは残りの2頭に襲いかかる。

その中の1頭は口から水蒸気を出して周囲を威嚇していた。


「水魔法はあまり効果が無いようだな」


なるほど、さっきの土魔法と同じように、水魔法で口と鼻を塞ごうとしたら、炎で蒸発されたのか。

だが、ワイバーンからの攻撃はここまでで、追加で襲ってきた人たちに、なす術なく蹂躙されていった。


「デバフの網と土魔法が欲しいですね」


その二つがあれば、ワイバーンなら対処が容易になる。


「・・・すぐには無理だな」

「今の今じゃぁ、きついかなぁ」


残念ながら入手は不可能なようだ。



その夜、僕は莉乃さんに電話をした。


「お疲れ様です、莉乃さん」

『本当に疲れたよ。網で動けなくなってても口から火出すし、酔っ払ってるのは行動が予測不能状態だったから踏まれないようにするのがきつかったー』

「どんなスキルが付いていたんですか?」

『なんか、ドジっ子属性と起き上がり不可と酔っ払いってスキルだったみたい。敵に装備させるなんて、裏技だよね」


確かに裏技だろう。

本能でしか動けない相手のみに有効で、知恵があると装備解除できるので、ただの網にしかならないが。


「こっちにもあれば良かったんですが、急には入手出来ないようで」

『同じようなスキルを探すのも一苦労だしね』

「なので、太めのロープを貰うことにしました」

『ロープで簀巻きにする?』

「生捕りは流石に危険なのでしませんよ。ジャンプした際に位置がずれていたら、それで捕まえるつもりです」

『輪投げの練習が必要だね』


実際はロープ投げなのだが、コツが掴めるかが心配だ。


「まだまだ気を抜くことが出来ませんが、生き残って帰りましょう。そしたらまた、宝探しです」

『そうだね! 頑張って生き残るぞ!』


電話を切って、僕はドラゴンについて検索した。

宮古島にはドラゴンは来なかった。

もし万が一、日本のどこかに来るようなことがあれば・・・、


「必ず倒さないと」


ここには棲家は作れないと教え込まなければならない。


徹底的に。

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