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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
ドラゴン来襲編
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国家公安別動部局

高校の頃、東京なんて滅多に来ない場所と考えていた。

将来、仕事の関係でもない限り滅多に行くことはない場所だと。

その場所に、縄文杉討伐以来、久々に訪れることになった。


「こっちですよ、瀬尾くん」


浜田さんが先を歩いてくれるので迷わずにいられるが、自分1人だとすぐに迷子になりそうだ。

まあ・・・囲まれているんですけどね、SPみたいな人たちに。

そのおかげで、周囲の人たちは僕に近づけないで、少し離れて写真を撮ったり見てるだけとなっている。

時折手を振ってくる人もいるので、僕も小さく振り返している。


「うーん、ここまで守られていれば、もっとスムーズに行けると思ったのですが、なかなかどうして・・・」


僕には触れることもできずに跳ね除けられているが、頑張って近づこうとする人もいるし、写真を撮ろうとする人たちが多すぎる。

僕たちの進みも通常より遅くなっていた。

最終的に警察が交通整理して、僕は車に乗ることになった。


それから警察庁に到着して、周囲のSPと別れて僕らはエレベーターに乗った。


「地下にあるんですか?」

「別動隊なので、上の人たちとは少しでも顔を合わせないようにしているんです。私でも正確な人数やスキルは分かっていません」

「統括みたいな人がいるんですか?」

「はい。これから会っていただくのは、その局長とお伝えしていた2名です。私自身は扉の前でお別れになります」

「秘密主義なんですね」

「ええ。特殊なスキル保有者が集まっておりますので、海外に情報が抜けないよう細心の注意を払った結果だそうですよ」


地下に降りてしばらく歩き、扉に「第五分室」と書かれた部屋に辿り着いた。


「私は外で待っていますので」


僕だけが扉をノックして、中から返事があったのを確認してから扉を開いた。


「初めまして、英雄くん。警察庁国家公安別動部局にようこそ」

「・・・英雄じゃありません。瀬尾京平です。よろしくお願いします」


ガラガラの声で目つきの鋭い男性が、僕を向かい入れた。


中に入ると、1番奥に入り口を向いている席があって、その前に六つの机が向かい合わせで並んでいた。

机の上には何も置かれておらず、いつ誰がきてもどの席でも使えるようになっているようだ。


「そこの応接室を使おう。中に入って待っててくれ」


入り口横の部屋を指さしていたので、扉を開いて電気をつける。

一般的なひとセットのソファーとテーブルが置いてあったので、3人がけのソファーの真ん中に座ることにした。


「待たせてすまないな。コーヒーはブラックでも飲めるかな? 砂糖とミルクが見当たらなくてな。要らなければ飲まなくてもいいから安心してくれ。それじゃ、改めて城山英樹だ。別動隊の局長を務めている。今回はよろしく頼むよ」

「先ほど名前を言いましたが、瀬尾京平です。1級になってまだ日が浅いので緊急要請には慣れていませんので、色々とご迷惑をおかけすることになるかもしれませんが、よろしくお願いします」


右手を出して握手を求められたので、僕も立ち上がって右手を出して握手をした。

そうすると、城山局長は不思議な顔をして僕の右手を見た。


「どうかしましたか?」

「いやー、怒られるのを承知で言うが、俺のスキルでな、握手した相手の概要が大まかに理解できるんだが、今回は何も反応しなくてな」

「人のプライバシーを勝手に暴かないでください」


僕はすぐさま握手を振り払って城山局長を睨んだ。


「すまんすまん。言っておくが、ちゃんと握手した人たちにはスキルのことを伝えているからな。事後承諾だが、これも組織に変な人を入れないための措置だ」


手を挙げて敵意がないことを示してくるが、もう信用は置けない。

一線を引いて対応した方がいいだろう。


「いいでしょう。僕も仕事としてこの場にいることにします。それで? 浜田さんからは同行する2人と顔合わせするとのことでしたが?」


城山局長は困ったように肩をすくめ、1人がけ用のソファーに座った。

同時に僕も座って手を組んだ。

僕が警戒を強めた様子を見てとったのか、「まいったな」という表情で髪をかきあげる。

見事なM字ハゲが姿を現した。


「やり方は不味かったかもしれんが、組織の安全のためにやったことだ。理解して欲しいんだが」

「理解はしますよ。警戒もしますけど」

「・・・まあいいか・・・。お前が同行する2人だが、もうしばらく待ってくれ。今、こっちに向かい中だ」

「分かりました」


僕の応対に城山局長は、ため息一つ吐いて部屋の外に出て行く。

ため息吐きたいのはこっちの方なんだが?

警察なら僕の情報はほぼ持っているはずなのに、いったい何を知ろうとしたのか。


今までは事後承諾で終わっていたかもしれないが、僕にとってそれは悪手だ。

信用がない人に個人情報見られて、はい分かりましたって人がいるか!


しばらく待っていると、入り口の扉が開いた音がした。


「ただいまーっすぅ! 城山さん、戻りましたよぉ!」

「ただいま」


男と女の声が響いた。


「預かりの子が来ましたかぁ?」

「応接室にいる。行くか」

「・・・握手したのか?」

「・・・」

「あーあ、遅かったぁ」


扉が開いて3人が入ってくる。

僕は立ち上がって迎えてお辞儀をした。


「初めまして。瀬尾京平です」

「ちわぁ! 入江花香だよぉ。聞いてると思うけどぉ、抵抗無効のスキルホルダーだからぁ、抵抗関係のスキルを持ってたら注意してねぇ」

「土尾正親だ」


自己紹介をして僕はそのまま座り、局長が誕生日席に、2人が僕の正面の1人がけソファーにそれぞれ座った。

特徴のある2人だった。

正直、秘匿するような部署には不釣り合いだと思えるほどに。

入江さんは中肉中背ではあるが、顔の右目に大きなアザがあり、一目で生まれつきのものだというのがわかる。

しかも、手袋などで隠してはいるが、左手は義手だろう。

僕が見た限り、少しも動いていない。

土尾さんは、顔に大きな傷跡があった。

上唇から鼻にかけて、随分昔に手術をしたようだが、かなり特徴のある傷痕になっていた。


「んでぇ、城山さんとはどこまで話をしたのかなぁ?」

「握手して終わりだ」

「警戒してるな。表情が硬い」

「だからぁ、私はダメだよって言ったのにぃ」


どうも、この人たちからは注意を受けていたらしい。

それでも握手をした辺り、職務に忠実なのか、自分の仕事に対する意識が高いのか。


「城山さん。スキルの内容を話すべきだ。この蟠りは危険」

「・・・そうだな。まずはすまない。許可無しにお前の情報を直接引き出そうとした」

「・・・謝罪は受けます。スキルで読み取れる内容を教えてください」

「ああ。俺の持っているスキルは真実の歴史といって、対象の生まれてから今までのの情報が文字として目の前に出てくる。条件は手に触れていることだ。俺が見ているのは、主に犯罪履歴とかカルマと呼ばれる数値が正に向いてるか悪に向いてるかとかだな。その2つを知るだけでも、この組織にとって有益か無益かが判断できる」

「私たちもぉ、最初にやられたからねぇ。今回の子は預かりだからぁ、止めておいたほうがいいよって言ったんだけどねぇ。城山さんもぉ、ちょっと相手を見た方がいいよぉ」

「だが、これをできるからこそ、俺はこの席に座っているのであってだな・・・」

「預かりの子にすべきじゃないな。この子は対ドラゴン用のキーマンだ」


2人がまともな事を言ってくれて助かる。

自分の持っているスキルに絶対の自信を持っている人の中には、害を与えるものではないからと言って、平気で使用する奴らがいる。

局長はその点、ここに来た人に絞っているようだが、僕は対象から外して欲しかった。


「まあ、理由は分からんが、結局見ることは出来なかったからな。そこだけは安心してくれ」

「えぇ~見れなかったのぉ? 自業自得だけどぉ、嫌われて損だねぇ」


うぐっと局長が何とも言えない顔をして黙った。

入江さんの言う通り、まさに自業自得だ。


それからとりあえず、僕のスキルや右手右足の事を伝えて、「調べていないんですか?」と聞いたら、調査書に確かに書かれていたけれど、右手だからスキルは効くだろうと考えていたらしい。

僕の右手右足は『元』で、アイテム扱いだ。

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