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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
新潟県村上市DF編
197/197

レベルアップの弊害

長らくお待たせしました。

現実に目を向けないといけないことが増えて意識を割くことができませんでした。

地道にですが頑張っていきますので、のんびり更新を待っていただけると嬉しいです。

廿六木のドヤ顔を見て僕が感じたことは、眉唾のニ文字だった。

他の人の顔を見ても、誰も廿六木の論に賛同していないのがわかる。

そんな僕らの表情を見て、廿六木は失望したかのようにため息をついた。


「君たちに分かるように説明しよう。まず、レベルがアップした際の恩恵は何かな?」

「強くなることだろ」

「その通りだ」


ノータイムで木下が答え、廿六木が笑みを浮かべて手を組んだ。


「では、具体的にどう強くなると思う?」

「どう強く? 普通に筋力だろう」

「防御力が上がれば必然的に皮膚や骨も強くなるな」

「頭の回転も早くなる。反射神経もだな」

「動体視力もですね」


廿六木の問いかけに、僕たちの口から複数の回答が出て、廿六木は満足そうに首を縦に振った。


「そう、その通りだ。ちなみに、このレベルに関しては、実は我々よりも旧暦のライトノベルやゲームの方が詳しいことはご存知かな?」

「まさか・・・。旧暦は神の存在すら眉唾だったはずだ」

「ところがだ。我々人間の想像力というのは豊かなもので、レベルに関してはあり得そうなことは全て記載されているのだよ」


そう言うと、廿六木は懐から一冊の文庫本を取り出して僕らに見せた。


「この本によると、レベル差が10以上になった場合、男女間の性行為が上手くいかなくなるらしい」

「・・・は?」


突然の違う角度からの説明に、思わず僕の口から「は?」が溢れた。


「ふむ。セック」

「性行為ですね。まあ同じ意味ですがマイルドにいきましょう」

「そうかね。では続けるが、この本に書かれていたことは至極真っ当な事だった。何故なら、レベルが10上がればその分生殖器も同じだけ頑丈になり、感じるということも鈍くなるからだ」


謎な持論を展開されて、僕らはついていけず額を押さえた。


「人は人だろ。レベルアップしたところで身体が変化するわけでもないし」

「おや? 君たちは先程言っていただろ? 強くなると。何故君たちの股間のモノや内臓も同じように強くなるとは思わないのかな?」


その発想に思い至らない僕らを、廿六木は面白おかしく笑う。


「レベルアップすれば多少の攻撃で体が傷つくことはなくなるし、痛みも感じなくなるのだろう? ならば、普通の人がある一定の刺激を感じて快楽を覚えていたことが、それ以上の刺激を感じないと快楽を覚えなくなるという考えに至ることは普通じゃないのかな?」


彼の言葉に僕らは黙った。

それは、僕らが彼の言い分について一部納得してしまったからだ。


「レベルアップによって生まれる差異はそれだけではない。先ずは視覚。目の動きも普通の人とは違ってくるため、通常の動きが遅く見えてしまう。もしかしたら、赤外線や紫外線も見えるようになるかもしれない。

次に聴覚。聴覚が強化されることによって、小さな物音も聞こえようになるだろう。目で見なくても反響音で周囲の風景を見ることも可能になるかもしれない。

そして言葉。今私たちが話している速度よりも、もっと早く言葉を紡ぎ、通常の人では聴き取れなくなるだろうな。コンピュータ言語というものを知っているかな? おそらくあれと同じように聞こえるようになるだろう。

そうなってくると、意思の疎通も難しくなるだろうし日常生活も変わってくる。・・・それはもう・・・別の生物と言ってもおかしくないのではないかな?」


彼の楽しそうな声に、僕らは小さくため息をつく。


「だから進化、ですか?」

「そうなのだが、それだけじゃない。さっき言ったこと以上に問題なのは、レベル差があると子供ができないんだよ」

「はっ?」


突拍子もない言葉に僕は思わず聞き返した。


「簡単に言うと、レベルアップした母体に合わせて、精子や卵子もレベルアップすると想定されるのだよ」


どこからともなく「グググ」と唸り声が聞こえた。

彼の言葉に想像が追いつかないのだ。


「つまり、仮に卵子の母体がレベルアップしていたとすると、普通の精子では受精できないということですか?」

「その通りだ。人工授精したとしても、レベルアップした卵子に精子が適合できず、細胞分裂出来ないだろう」

「でもそれは、あくまで仮説ですよね?」


僕の言葉に、廿六木は笑顔になって大きく手を打った。


「その通り! 仮説! 仮説なのだよ! そしてそのレベルにチャレンジする者がいる! 見たい! レベルアップした存在を見て、観察して、診察して、分析したいのだよ! そう思わないかね!」


子供のようにはしゃぐその姿を見て、僕は左手で顔を押さえた。

無理だ・・・。

彼のことを理解できないし、同レベルで考えることができない。


「同レベルでしか子孫を残せない! 明らかに別種族になった存在! 私はそれを見たい! 調べたい! 解剖したいのだ!」

「なら・・・向こうにいたままでよかったじゃないですか」


呆れながら呟いた僕の言葉に、廿六木は笑いながら首を振った。


「同じ立ち位置で見てどうする。こういう時は別視点で、新鮮な気持ちで見たほうが感動も強いのだよ」

「だから僕たちですか?」

「その通りだ。敵方からの視線ほど新鮮なものはない。アレがレベルを得たあかつきには、敵としてアレの脅威を知りたいのだよ」


廿六木の「アレ」と言う不自然な呼称に、僕たちは疑問の視線を合わせ首を傾けた。


「アレとは何のことですか?」

「アレはアレだ。名前も生い立ちも性別すら不明な反神教団の統率者だよ」

「・・・アニキのことですか?」

「君たちがそう呼んでいることは知っているが、実のところ内部の人間でもアレのことは性別すら知らない。あ、違うな。知らないではない。忘れている、が正しい」


その言葉に、僕の背中に何とも言いようがない怖気が走った。


「記憶できない・・・と?」

「その通り。アレはスキルが関係していると言っていたがな。仮面を外される度に誰だか分からなくなるのは困った。実害がアレを忘れる事だけだからな、平和で防ぐことも結局できなかった」


廿六木に対する攻撃ではないため、平和が発動しなかったのだろう。

だが、それは同時に僕らに恐怖を覚えさせた。


「エイジ、何のスキルか分かるか?」

「いやー、ちょっと想像できないですぜ。多分ですが、そのスキルが暴走しているか、狂ったんだと思いますぜ」

「狂った?」

「そうですぜ。俺様たちは意思があるから好きな主人とは占有率を上げて会話や触れ合いを楽しみたいし、嫌いな相手とは保有すらされたくないんだぜ。まあ、本当なら適合を0%にして使われなければいいだけなんだが、狂うってことはそれ以上に何かないとあり得ないから・・・ちょっと想像できないんだぜ」

「そうか・・・」


炎帝の方を見ると、彼女は難しそうな顔をして顔を背けた。

彼女にもスキル名が分からないのだろう。


「エイジ、吸収することは?」

「・・・おそらくだけど、主人・・・無理だぜ。俺様が気づく前に効果が終わっちまって吸収できないと思うんだぜ」

「そうか」


結局のところ、廿六木は僕たちと同行することになった。

彼意思が固く、無視しても隠れてついてくる可能性があったのと、彼を捕縛勾留することが不可能だったため、僕らは渋々受け入れざるを得なかった。


「どうしたものか・・・」


権藤さんが頭を抱えて呟いたが・・・貴方はここにいるだけでしょう。

実際に迷惑を被るのは僕たちです!

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― 新着の感想 ―
調整機能が発達しなければ廿六木の言うとおりになんですよね 生まれもった知能があがれば別人レベルになって人生黒歴史みたいに悟る人も量産されそう
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