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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
新潟県村上市DF編
196/197

廿六木一郎の次なる進化論

遅くなりました。

地道にですが進めておりますので、のんびり待っていただけるとありがたいです。

よろしくお願いします。

真ん中に廿六木を連れて、僕らは囲むように組合に入った。

元々あった総合庁舎を改装して探索者組合が使用しているのだが、日本海側の探索者組合の建物は場所の関係上日本海から現れるモンスターを警戒できるようになっている。

その警戒システムは最上階にあるのだが、その設備を守るために、この建物はいざという時要塞になるように設計されているらしい。

理由の一つとして、日本海側にはドラゴンキラーが一機も設置されていないこともあるのだろう。


「さて、どうして3人が新潟に来たのかは報告を受けているから問題はない。だが、廿六木がいることまでは聞いてなかったのだが・・・連絡漏れか?」


目の前にいる北陸地域統括支部長の権藤さんが僕らを順番に見て、最後に太々しく座っている廿六木をしっかり睨んだ。


「威圧が出せんか」

「平和というスキルらしいです」

「厄介な」


深いため息をついて権藤さんは真壁さんを見て説明を求めた。


「反神教団でやることをしたから、こっちの目線で成果を確認したいそうですよ」

「どの口がそんなセリフを!」


口を怒りで震わせて権藤さんが廿六木を睨むと、彼はフンッと鼻を鳴らした。


「いいではないか、たかだか敵だった人間が同行するだけだぞ? 私はただ、自分の理論が正しかったかを第三者の視点で見たいだけなのだからな」


その言葉に権藤さんの腰が浮いて、動きが止まった。

全身が震えていることから何をしようとしたか分かる。

廿六木を殴ろうとしたのだろう・・・そして平和に止められた。


「・・・お前が研究していた事は、もう知っているぞ! そしてお前が関わって起きただろう事件についてもな!」

「ほう・・・何をしただろうか?」

「大阪の人狼! 香川のキメラ! 秋田の殺人鬼! これらの犯人の特徴は、全て人体とスキルを強引に結びつけられた形跡だ! お前の研究はより強く、より効率的にスキルを扱う方法だったな! そしてその最後の論文が、人為的にスキルと人体を結ぶ方法だ!」

「あまり・・・思い出したくない失敗作どもだな」

「人の心はないのか! お前には!!」

「私が私の作品をどう言おうが私の勝手だな。唯一作品として薄目で見れたのは獣神ぐらいだ」


あまりの言いように、権藤さんは顔を真っ赤に染め、真壁さんも廿六木を殺しそうなほど睨んでいる。


「廿六木さん。貴方はどういう目的で彼らを作ったのですか?」

「どういう目的とは?」


不思議そうに問い返す彼に、僕は心を落ち着かせて唇を舐め、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「皆嶋さんは神を殺すためにモンスターとの融合を試みました」

「そうだな。拒絶反応のせいで不可能だったようだが。最後はそのモンスターに取り込まれたのだったかな?」

「百乃瀬さんも神と戦うために巨人を造り出しました」

「そうだな。神化出来ずに結局人形として壊れてしまったな。結果、ゴミを作ったに過ぎないな」

「貴方は何のために、そのようなスキルと人を強制的に繋ぐということをしたんですか? 神と戦わせるためですか?」


そこまで言って、彼はようやく僕が言いたいことを理解してくれたのか手を叩いて大きく頷いた。


「なるほどなるほど。私の目的か。前の2人が神を倒すアプローチとして研究を元にした力を示してきたからそう考えたのか。だがな、それを私に当てはめるのは間違っている」


少しだけ嬉しそうに廿六木は言って、僕に正面を向けた。


「私はね人類の次なるステップ・・・進化した先を見てみたいんだよ。そして次の進化の先は・・・レベルではないかと考えているんだ。神など切り裂こうが慈しもうが貶めようが崇めようが下に置こうが上に置こうがどうでもいい。あんなものいてもいなくても一緒だ」


その目は本当に神に対して何も感じていないのか、それよりも別の事柄を重視しているかのように虚空を見ている。


「諸君らは人間が猿から進化した事は知っているかな?」

「ダーウィンですか」

「正解。ちなみにその事を信じているかな?」


廿六木の言葉に、僕は口を閉じた。

権藤さんも真壁さんも、木下も何も言わない。

理由は簡単だ。

現実にその瞬間を見ていないからだ。


「古代化石よりこの進化論は真実味を帯びて通説となったわけだが、それは本当に真実なのだろうか? 私も色々スキルを試して過去を視ようとしたが、結局叶わなかった。それが叶えば、私たちがどういう行動をすれば進化出来るか判明したかもしれないのにな。だから私は次の進化をするためにスキルが関係しているのではと考えた」


フンッと鼻を鳴らして廿六木は椅子の背もたれに体重を預けた。


「だが、それは間違いだった。スキルは人を進化させない。それどころか独立した意思を持っていた・・・君の右腕がそれを証明していた」

「やはりあのとき・・・」

「ああ、そうだ。君のスキルを調べて確信を得た。本当に無意味なことを今までやってきたと悔やんだよ。だからこそ、次のステップに移ることができた」

「次のステップ?」

「もう一つ、私の中に人類を進化させる可能性を秘めた力が存在している。何か分かるかな?」


分かる・・・と言うのは違う。

ただ、彼が所属していた反神教団という組織のことを考えれば容易に答えに辿り着く。


「レベル」

「正解だ」


廿六木はどこか嬉しそうに声を震わせて僕を見た。

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