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分断と混戦

ブックマークありがとうございます。

ダークストーリーで不定期更新ですが、最後まで頑張りますのでよろしくお願いします。


いつもコメントありがとうございます。

頑張りますので、応援よろしくお願いします。

「グォォォォオオオオオオオオオ!!」


獣神の雄叫びに含まれる威圧を吸収して、エイジの目を襲いかかって来る赤い目の集団に向けた。


「エイジ! 吸収!」

「承知だぜ!」


赤い目の集団の壁がバタバタと倒れて、その先の安部が見えた。


「そこを動くな!」


叫ぶ僕を無視して奴は僕を見て唾を吐き、背を向けて飛んだ。


舐めやがって!


「PSCTシステム起動!」


中指で3回叩くと、急激に上昇して木々の上まであっという間に辿り着いて、上から安部の姿を確認できる!


「全員避けろー!」


獣神のいる左側から声がした。

次の瞬間、轟音を立てて地面と木々が飛び散り、空に5本の爪痕が刻まれて消えていく。

僕も巻き起こった風のせいでバランスを崩しかけたが、何とか制御して下を見る。

そこには、獣神が腕を振り上げて立っていた。

・・・あれが神器クラスのスキルホルダーの力!


「こちらA地点! 第一部隊が敵と交戦した! 獣神! 炎術師! アイズの姿を確認! 第二部隊を急がせてくれ!」

『こちらB地点! 支配属性と人形使いがいた! 悪癖、白蛇と共闘している! あれ? お前は?』


もう一つの地点も交戦に入ったらしく、通信が送られて来たが、不自然にブツンと途切れてしまった。

おそらく通信していた人がやられたのだろう。


僕は、森の奥から襲いかかって来る炎の弾の進路に移動して右肘を出すが、その正面に、突如として黒ずくめの剣士が姿を現し、刀を振りかぶって向かってきた。


「がっ! ある・・・じ。せめて」

「エイジ!」


ギリギリのタイミングでエイジが棍棒に変化して刀を受け止めるが、スキルが使えなくなり、エイジの口も動かなくなってしまった。

飛行も危険なことがわかっているので、システムを切って地面に降りる。


「お前は! あの時の!」

「・・・」


専用装備の重みが僕の体にのしかかる。

身体強化も使えなくなってしまったのか!?


棍棒を構えて一歩下がるが、相手も刀を顔の横に立てて構え、同じ一歩を詰める。

昔あった示現流に似たような構えがあったと記憶しているが、アレは一撃必殺の意志を込めた構えだったはず。

相手から発する圧のようなものに押されて、顔を一筋の汗が流れる。


「その構えは、渡辺師範が得意とするもののはずだが?」


突然横から小荒井さんが刀を黒ずくめの剣士に向かって振り下ろす。

剣士は流れるようにその刀を受け流し、反撃をしようとしたが、手首を返した時点で小荒井さんが間合いの外にいると判断したのか動きを止めた。


「すまなかったな、瀬尾くん。君の速さについて行けなかった。さて、警察関係者か? いや・・・細いな。渡辺師範から直接指導をいただいた者か? どちらにせよ敵方にいる事実はいただけないな」


小荒井さんも剣士と同じ構えをとるのと同時に、空気がヒリついた。


僕は剣士のスキル範囲から出ようとジリジリと下がるが、そうはさせまいと剣士が一足踏み込んで一気に僕との距離を縮め刀を振り下ろす。

僕も棍棒で受けようとするが、その前に小荒井さんが割って入ってその刀を受け止めた。


「こいつは俺が引き受けよう。お目付役としてはダメなのだろうが、この先に用事があるなら行くといい」

「相手は・・・強いですが・・・」

「任せろ! 行け!」

「はい!」


僕が剣士の横を走り抜ける。

剣士も僕を追おうとしたが、小荒井さんが巧みに鍔迫り合いで押し込み、それを防いだ。


「俺との対戦は不服か? だが付き合ってもらうぞ!」

「・・・チッ!」


数歩走ったところで棍棒が元に戻った。


「っプハ! 最悪だぜ! よりにもよって奴かよ!」

「エイジ! あいつのスキルは何だ!? 無効系のスキルじゃないのか!?」

「違いますぜ、主人! アイツはスキルエラーだ! スキルなのにスキルを使えなくするバカだ! アイツを無視して意思を保てるスキルは、それこそ慈愛の奴らと大罪の奴らしか無理なんだぜ!」

「スキルで優劣ってあるのか!?」

「あるんだぜ!」


この戦いが終わったら、じっくりその辺の話をしないといけない。


「PSCTシステム起動! エイジ、頼む!」

「承知だぜ! 主人!」


中指で3回叩き飛び上がって炎の弾が発生している場所を発見した。


「そこか! 安部!」

「いい加減しつこいんだよ!」


安部が木々の中から飛び出して来た。

こいつの姿を間近で見たのは、阿蘇の灼熱ダンジョン以来だ。

あの時と比べて・・・身につけているアイテムと髪型が変わった。

日本刀も背負っていて、近接戦闘にも対策をしていることが見て取れる。

こいつは、幾つのスキルを持っているのか・・・。

だけど、僕のエイジの方が強い!


「エイジ! 全て吸収だ!」


中指を4回叩くと速度が上がって視界が歪んだ。

その中央にいるのは安部の姿!

棍棒を再度作り出して槍のように構える。

ヤツは刀を抜いた。


ガキィィィン!


棍棒と刀が交差して、僕はヤツを抜き去って急旋回する。

安部は生命力吸収、魔力吸収、スキル吸収のトリプルをくらって、少なくともバランスを崩しているはずだ。

だが、いるはずの場所に目を向けると、そこに安部の姿はなく、別方向に向けて逃げていた。


「エイジ!」

「違うんだぜ、主人! 吸収はしていたんだぜ!」


速度はそのままでやつを追いかけ、再度棍棒を構える。

安部も刀を構えた。

強烈な音が再び響いて、僕がまたやつを抜き去って、すぐさま減速し、旋回して安部の姿を確認した。

やつは・・・吸収の影響を全く受けていなかった!


「何があった! エイジ!」

「曲げられた! 俺様の吸収が別の場所に誘導されるように捻じ曲がったんだぜ!」


・・・ありえない。

同じような効果を持つスキルが発見されることはよくあることだ。

同じ名前のスキルが幾つも見つかっているし、あの人のスキルと関連付ける必要は全くない。

でも・・・事前情報が・・・ダンジョン群で彼女だけが見つかっていないという事実が脳にへばり付いたかのように離れない!


「安部ぇぇぇぇぇぇえええええええ!」


中指を5回叩く。

最速で安部に向かって飛び、中指を2回叩いて急減速し、棍棒を振りかぶって叩きつけた。


「安部ぇ! どこでそのスキルを手に入れた!」

「何を勝手に吠えてんだよ! 訳わからないこと言ってんじゃねーぞ!」


至近距離にいるのに吸収できていない!

だが、僕の棍棒をこいつは両手で握った刀で受け止めている。

なら違うはずだ・・・アレは指で指し示した方向に誘導できるスキルのはずだ!


「誰からそのスキルを奪った!」

「知るっ!」


下から竜巻が立ち昇った。


その風圧に僕と安部は引き剥がされ、強制的に距離を取られた。

更に、その中から僕が知る2人が飛び出して来た。


1人はキツネを2匹従えて、空中を走り抜ける鬼木さん。

もう1人は・・・風神の姿になった莉乃だ。


「莉乃・・・」


莉乃も・・・僕を見たような気がした。


「俺を見ろよ! クソ坊ちゃんがよ!」


風に乗って炎の弾が襲って来たが、エイジの肘の口が全て吸い込む。


「誰が坊ちゃんだ、クソ野郎!」

「テメーだよ! 僕僕僕僕、気持ち悪! 何だその小学生の一人称は!」


右斜め下から安部が向かって来る。

突いてきた刀の側面を叩いて逸らし、右肩をぶつけ合う。


顔が近づき、安部の表情が全て分かる。


僕が気持ち悪い?

お前の方こそ気持ち悪いんだよ!


「近づくな! 臭い!」

「クセーのはテメーだ!」


棍棒と刀が何度も打ち合う。

エイジの吸収が全く通じない。

いや、放たれたスキルだけは吸収できている。

指向誘導のようなスキル以外にも、何か特殊なスキルを身につけているはずだ。


視界の端で、炎の槍と壁が見えた。

あのバカが戦っているんだ。

あいつが出てくる前に・・・全ての敵を倒すはずだったのに、こいつのせいで・・・こいつが余計なスキルを身に付けたせいで!


「さっさと倒されろよ、人殺しが!」

「坊ちゃんが! 俺から受けた恩を無視して、俺を勝手に批判してんじゃねーよ!」

「お前から受けた恩なんて何一つとしてあるわけないだろうが!」

「そうやってお前らは見ないふりしてんだろ! そして都合のいい場面だけ切り抜いて俺たちを批判するんだ!」


何回も互いの武器を打ち合って、互いに押し込み、安部の額が僕のフェイスガードにぶつかる。


「お前の方こそ何言っているか分からないよ。殺人野郎の言ってることなんて理解したくないけどな!」

「そうやってお前たち普通は呑気に暮らしているんだよ! 俺たちが頑張ってお前らの罪を背負っているってのによ!」


・・・はぁ?

本当にこいつは何を言っているんだ?


こいつは何も頑張っていない。

僕のじーちゃんとばーちゃんを殺し、アイテムを奪っておいて、何を頑張っていると言うのか?


安部の体を蹴っ飛ばし、薬指で叩いてゆっくりと地面に降りる。

安部も僕を睨みながら少し離れた場所に降りた。


「言ってみろよ・・・お前がやってることを・・・俺が受けてる恩恵ってやつをよ!」

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― 新着の感想 ―
エイジのが効かない理由に一つだけ心当たりがある装備があるがそれならば瀬尾はぶちぎれ決定やなぁ ふとかなり様々なものを選択して吸収できるエイジなら味方いなければこのあたりいったいの水分や酸素を奪って自…
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