飛行シミュレーター
時間がかかっております。
しかも、技術の内容を加えると、現在の技術力とほぼ同等にして、尚且つ物語に不都合が生じないようにしないといけないので細心の注意をして書いています。
次も技術の話が入るので、気長に待っていただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。
対人用装備と阿蘇で使用した装備の違いは、飛行機能以外で言うと、そのスタイリッシュなフォルムが挙げられる。
冷却機能がなくなったおかげでスリムになったから、前回こだわることができなかったデザインを、これでもかと詰め込んだらしい。
それでも変えることができなかった点は、視界を守るフェイスガードとドラゴンバスター。
この二つだけは、取り付ける上で他の場所に変えることも完全に覆ってカメラ映像に変えることもできなかったようだ。
「カメラをつけるとなると、頭か耳の横になるんですが、どうしても攻撃を受けた際の弱点にしかならないと言う判断が出て、取り付けは無しになりました。録画用のカメラもないので、必要なら後日取り付けます」
小美野さんの言葉に、僕は首を横に振って要らないことを伝える。
「装甲は薄めなんですね」
「はい。装甲が厚い箇所は胸と背中、頭、両脚としました。もちろん、他の箇所の防刃防弾性能も普通の服とはかなり高い性能なのですが、運動を阻害しないようにあえてそのようにしています」
言われて「そういえば」と思い、屈伸と前屈を何度か行い、次に腰と肩を回す。
「確かに、自衛隊の装備よりも曲げ伸ばしがしやすいですね」
「懸念があるとすると、飛行モードになったとき、背中の装備から翼が出るんですが、武器を持った空中戦の際にそれが邪魔をするかな・・・と予想していますね。そこはシミュレーターで確認してください。それでは、そのまま右脚の説明をしますね」
右脚には前回同様ドラゴンバスターが付いていたが、説明によると、手に取って撃つことができるようになったらしい。
「ふくらはぎにある取っ手を握って引っ張ってください」
言われたとおりに取っ手を引くと、それに付いた筒が引き抜かれ、取っ手についているボタンが赤いライトを点滅させている。
「これは?」
「このライトは十分に充電されていない合図です。この脚部に7個のB級魔石をセットして、7回ドラゴンバスターが撃てますが、全て手で撃つ場合、一回充電されるごとに3発、合計21回撃てます。その分時間も短縮されていて、フェイスガードにも充電進捗は映っていますが、分かりやすくするために付けられました」
筒の口を壁に向けて、両手で持ったり、片手で持って腕を伸ばしたり重さを確認する。
身体強化を使っていたら、どんなに疲れていても、問題なく相手に照準を合わせることができるだろう。
「この装備は、人型を倒すのにA級モンスターを倒すほどの破壊力は必要ないのでその分集束させることを意識して製作されました。本来ならモンスター用として考えられていたんですが・・・まさか初実戦が人相手になるなんて・・・」
小美野さんの呟きに、僕も言葉が詰まった。
「あ、すみません。武器を作っておいて、その用途に口出すなんて・・・」
「いえ・・・人殺しなんて・・・どんな理由があったとしても、しない方がいいに決まってますから・・・ましてや、そんなつもりで作った武器じゃないのにその用途に使われるとなると・・・納得できないことは理解できます」
その後、いくつかの動作を確認して、今度はシミュレーターへ移動した。
そこには、シミュレーション用の飛行装置と、システムに連動したVR用ゴーグルが用意されていて、僕が中央に立つと、メンテナンスチームの人たちが手際良くそれらを僕に着けて装置を起動させた。
『練習用ですので、何かあったらこちらで緊急停止します。瀬尾さんのタイミングで飛行システムを起動させる音声パスワードを言ってください』
「はい。ふー・・・PSCTシステム起動!」
足が地面から離れ、僕の視界は一気に上へと押し上げられた。
VRの中では天井なんて関係ない。
受ける風圧も、あの室内で風を起こしているのだろう。
僕は空を飛んでいる感覚に感動しながら、ふと我に返った。
・・・方向が変えられない!?
身体を捻って向きを変えようとするが、風圧の方が強くて変えられない!
翼の向きを変えるキーワードがあったか?
いや、そんな説明なかった!
「お、降ろしてください! 制御ができない!」
『こちらでシステムを終了します。画面が暗くなりますので落ち着いてください』
目の前が急に暗くなって、システム終了という文字が現れた。
それから体にあたる風もおさまり、僕の足が床について、そのまま立つことができずにお尻をついて座ってVRを外した。
「すみません、方向制御ができなかったんですが、どうしたらいいのでしょうか?」
教えてくれなかったことに、若干苛立ってしまったので、口調が非難めいた感じになった。
『基本的には身体を傾けたり、上体を起こす倒すで制御できます。それ以外なら両腕を広げて手の向きを変えることでも可能です』
あの強風の中両腕を広げる?
身体強化必須の注文を受けて、僕はもう一度VRを装着し、身体強化を発動させた。
『それでは、次は真上ではなく斜めに飛んでみてください』
真上でももう何度か試したかったのにと思いながら、僕は体を斜めに傾ける。
「PSCTシステム起動!」
先ほどと同じように僕は飛行状態になって風を正面から浴びる。
今回は身体強化が効いているのか、先ほどよりも何となく風による拘束はキツくない。
僕は、これならできるか? と思って両腕を広げた瞬間、姿勢を維持できずに視界が回って地面に激突し、VRの画面が暗くなった。
「・・・エイジ・・・ベルゼブブと戦った時はこんなに難しくなかったし、かなり簡単に高速移動から空中停止もできたよね?」
「そりゃそうですぜ、主人。ベルゼブブのときは、俺様たちが100%の力で主人を支えていたから、今回みたいな不都合があるわけないんですぜ」
「・・・つまり、エイジたちにおんぶに抱っこだったと・・・。あれが当然だって思ったらいけないってことだな」
下手に高速戦闘を経験していたことが、今回の仇になっているとは。
あの状態だと、飛行できるとしてもその利点を十分に活かすことできず、突撃しかできないかもしれない。
「そんときは、大覚醒するしかないと思いますぜ」
エイジが僕の悩みに1番適切だが、一つしかない切り札を切るという解決案を出して、僕はさらに悩むことになった。
「飛行ってかなり難しいですよね」
小美野さんが苦笑いをしながら歩いてくる。
「これで本当に空中戦ができるのでしょうか?」
「えっと・・・理論上は・・・としか。後で開発チームと技術チームにお会いすると思いますが、彼らによると、最大出力で戦闘機並の速度が出せるそうです」
「戦闘機・・・マッハの速度が出せるってことですか?」
「はい・・・」
「・・・僕が衝撃無効を持っていないと出せない速度ですよね?」
「・・・」
小美野さんが、そーっと僕から視線を逸らした。
あれだ・・・開発と技術のメンバーが暴走したんだ。
しかもこれって、確かに僕がベルゼブブの籠手をつければ最大出力を出せるけど、操縦出来ないだろ!
試運転してないだろ!
かっこいいからとか、音速越えたいよね、で作っただろ!!
僕は一旦現実逃避をするために、頭を手で押さえて目を閉じた。
アクセス解析が見にくくなってたorz
慣れるのに時間がかかりそうです。