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男2人で男飯

コメントありがとうございます。

励みになります。

後、評価があったと思うのですが有難うございます。

ダーク色の強い作品だと思いますが、楽しんでもらえるよう頑張ります。

佐藤さんと2人で部屋に戻って、僕は冷蔵庫に向かい、中にある飲み物を漁る。


「佐藤さん、何か飲みますか?」

「この時間だからな・・・炭酸系ある?」

「コーラとミツヤならありますよ」

「・・・ミツヤにするか」

「分かりました」


ミツヤと自分用にペットボトルの緑茶を持ってリビングに行くと、佐藤さんはテレビのリモコンをポチポチ押して、昼の情報番組に切り替えた。


「どうぞ」

「お、ありがとな」


プシュ! と開けて、そこを佐藤さんはじっと見てから口をつけずに僕に目を移した。


「瀬尾、お前さ・・・」


ぐぅぅぅぅうううううううう!


空気を読まないお腹が突然空腹を訴えた。


「・・・ブッ!」

「すみません・・・」

「ぶはははははははははははは!」


佐藤さんのツボに刺さったらしく、大声が部屋に響く。

僕は顔に血が集まっているのか、ちょっと熱くなって手で仰いだ。


「ちょっと、朝から何も食べてないのに、それなりの運動をしたので」

「いいよいいよ。冷蔵庫に食料ある? ちょっと作ってやるよ」

「いや、悪いですよ!」

「いいって。昼前に押しかけてきた俺も悪い。一緒に男飯といこうぜ」


佐藤さんが笑いながらキッチンに向かったので、僕ももう止めずに一緒に入った。

冷蔵庫の野菜室には、にんじん玉ねぎじゃがいもなど、一般的な野菜があり、佐藤さんは何かを考えながらそれらを取り出す。


「米もあるよな?」

「はい、ありますよ」

「オッケー。んじゃ、ご飯を炊いといてくれる?」

「分かりました」


僕は米を研いで、どうせ夜も食べるだろうから3号をセットして炊飯器のスイッチを押す。

早炊きで20分。

佐藤さんはフライパンを取り出してコンロの上に置き、シンクの横にまな板と包丁を用意して、まな板の上に野菜とベーコンを置いた。


「何を作るんですか?」

「オムライス。いろんな物をみじん切りにしてご飯と一緒に混ぜるだけだからな」


そう言いながら、まず、にんじんとじゃがいもを水で洗って皮を包丁で剥いていく。

ピューラーを使わない・・・この人は大雑把に言ってるけど、多分料理ができる人だ。


「皮剥き上手いですね」

「独り身長いしな、訓練で野営とかもするから必然的に調理は身につくんだよ」


確かに、携帯食なども持ってはいくけど、炊き出しとかする際には自衛隊でカレーなどを作ることがよくある。

その際に包丁が使えないとか生物が触れないとか言えないだろうし、魚を捌くのも見て覚えるのだろう。


野菜をみじん切りにしてベーコンも小さな正方形に切りそろえたところで、ご飯がまだ炊けていないので、それらを一つの皿にまとめてラップをして冷蔵庫に入れる。

その間に僕はリビングからミツヤと緑茶を持ってきた。


「ありがとな」


佐藤さんがそれを受け取ってグビグビと音を立てて飲み込んだ。


「瀬尾の周りでさ、お前のために亡くなった人っているか?」


不意に佐藤さんの口から僕に質問がきた。


「・・・第5航空師団の人たちですね。縄文杉に僕が辿り着くまでの時間稼ぎで・・・接近戦をして死にました」

「そっか・・・。すまんな、辛いことを思い出させて!」

「いえ、背負っていることなので。あの人たちのことは一度も忘れていませんから大丈夫ですよ」


それから、食事の味付けや佐藤さんのレパートリーを聞いていると、米が炊けた合図がなった。

佐藤さんは炊飯機から米を全部ボールに移して、フライパンを温め、冷蔵庫に入れていた野菜とベーコンを一気に痛めて、塩とコショウを軽く振る。

その後、ご飯を3回に分けてフライパンに入れ、ケチャップを入れて全体を混ぜた。

それを全てボールに移して、今度は卵を2個取り出してかちゃかちゃとかき混ぜ、フライパンに広げた。


「フライパンは別のを使わないんですか?」

「ん? ・・・ああ野営だと気にしないことだからミスったな。今回は俺のメシってことで目を瞑ってくれ」


広げた卵にケチャップライスを適量置いて、クルッと巻いた。


「ほい、持ってけ。ケチャップは好みでかけろよ」

「ありがとうございます」


トレーにオムライスとスプーン、ケチャップ、お茶を持って席に戻ってケチャップをかけて佐藤さんを待つ。

その後数分で、佐藤さんも席に戻ってきてケチャップをかけた。


「それじゃ、食べようか」

「はい」


数日前にもオムライスは食べたが、向こうのは鶏肉を使ったチキンライスで卵も同じ巻くタイプだが、こっちの方がなんだか家庭的な味を感じる。

・・・お兄ちゃんとかいたら、こういうふうな感じだったのだろうか?


『それでは、飛騨地区のダンジョン群より、中継が繋がっております。増田アナ』

『はい、こちら飛騨ダンジョン群です。今はもう静まっておりますが、一時は自衛隊・警察・探索者組合が連携して対処しなければならない状況でした。また、この騒動の裏には今世間を騒がせている反神教団の関わりがあると警察から発表がありました』


僕はその言葉に反応してテレビを向いた。


「今・・・ボロボロとこいつらの犯行らしき事件が明るみに出ているらしいな」


超広域認識阻害が消えたせいだ。

あいつらの最大の隠れ蓑が剥がれたおかげで、警察も奴らを探知しやすくなったに違いない。

僕も、奴らの情報が入り次第、そこに向かうつもりだ。

死が迫っているのなら・・・やれる事とやらなければならない事を早急にやる。

ただそれだけだ。


『なお、この事件に巻き込まれた2級の朱野探索者が今も生死不明の状態となっております』

「おい・・・朱野探索者って」

「・・・クソ!」


今の状況で、僕が向こうに行く方針はありえない。

多分、誰に聞いてもダメだと言われるだろう。

せめて朱野さんの無事を祈りながら、食べ終わった皿をシンクに置き、水を溜める。


「大丈夫か?」

「・・・ちょっと、マズイです。でも、今ここを離れると、次の決定打に間に合わない可能性が高いので動きません」

「分かった。俺の方でも何か情報がないか調べておくから。何かあったら俺か梅林寺、巳城、頼圀、類家を頼れ」

「はい。その時は必ず頼ります」

「あと・・・明後日の夜は空けとけよ。ちょっと皆んなで飲むことになるだろうからな」

「えっと・・・分かりました。空けときます」


佐藤さんは食べ終わった皿を僕と同様にシンクに置いて水を溜め、戻ってきて僕の頭をガシガシと撫でる。


「ちょっと!」

「おっと、すまんすまん。弟みたいな感じがしてさ」


笑顔で手を振り、僕に背を向けて部屋から出ていく。

僕はバサバサになった髪を、手で撫でてハネを元に戻す。


・・・朱野さんが行方不明。

僕は携帯の登録から、鬼木さんの名前を探し出してタッチした。


コール音が3回流れた。

後2回・・・もう2回・・・。

だが、鬼木さんは電話に出ず、僕も諦めて電話を切った。

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