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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
ダンジョン排除地域編
151/197

ダンジョン時代に期待する人々

なんだか下の方の仕様が変わってますが、気にせず読んでください。


コメントいつもありがとうございます。

のんびり読んでください♪

打ち合わせ室に僕が先に入って、椅子に座って待って欲しいと言われたので待っていると、校長がお盆にコーヒーカップを二つ乗せて、コーヒーの揺れに視線を固定して持ってきた。

・・・足元見てないけど大丈夫だろうか?

僕もハラハラしながらその様子を見ていたが、校長は溢すことなく持ってきて、コップの一つを僕の前に置いた。


「いやー、学校について色々な方に説明はしてますが、瀬尾さんに説明するとなると一味違う緊張がありますね」


僕の前に座って何かを抑えるようにコーヒーに口をつけた。


「緊張をする必要はありませんよ。どちらかと言ったら、僕の方が緊張する立場です。正直に言って、知的障がいのことは頭の片隅にある程度で、このような学校があることすら知りませんでしたから」

「まあ、普通の人はほとんど関わることもない学校ですから。これからこの学校のことや、同じような施設のことを知っていただければ幸いです。同じように知らない人へこの事を話すタイミングがあるかもしれませんし、少しでも広がれば子供達を支えてくれる人が就職してくれるのではという希望もあります」

「・・・人手が足りないんですか?」

「足りません。旧暦はひとクラス6名に2人の教員がついていたという資料が残っておりますが、今ではひと学年40名を3人で切り盛りしています。・・・そのせいで職員の目に届かない時に危険な行動をして怪我をしたり、情緒不安定になって癇癪を起こし、暴力を振るう子もいます」

「・・・」


関東はダンジョンが存在せず、他の場所に住むよりも安全なため、一気に人が流入し、飽和状態になってしまったのも要因の一つだろう。


「それに・・・子供を置いて危険な仕事に向かい、結果・・・子供1人になってしまうという例も・・・去年だけでも4件ありました」


校長は悲痛そうに目を閉じて深く息を吐き、言葉を続ける。


「そういった子供たちは児童養護施設にお願いするしかなく。突然変わる環境や初めて会う人に怯えて、心が追いつかずに癇癪を起こして、せめて顔だけでも知っている私たちが向かうことも多々あります。それに・・・こう言ってはなんですが、お金の問題もあります。施設もタダで運営しているわけではないので・・・」


世界に新しい法則が適用されても、変わらないとこは変わらない。

もしかしたら、旧暦よりも悪くなっているかもしれない。


「ところで、瀬尾さんは阿蘇のダンジョンを攻略されたとのことですが」

「はい、そうですね。後2人と阿蘇神社の協力があってようやくですが」

「その中で、こう・・・知力や心・・・精神力を上げる薬やアイテムなどあったりしませんでしたか?」


ああ、なるほど。

校長が僕から知りたい情報はこれか・・・。

だけど、今の僕は彼が期待する情報を持っていない。

それに、アイテムならダンジョン内でスキルの確認ができるが、阿蘇にあった木の実のように稀に採集できる物は確認することができない。

温泉のように、即効果が確認できるものならわかりやすいのだが、僕でも1週間ダンジョンに篭って、アイツを見つけるために、目を皿のようにして探した結果副次的に発見した物たちだ。

あの、生死が迫ったダンジョンで、そこまで周囲に目を向けることは、僕にはできなかった。


「残念ですが、僕には・・・」

「そうですか・・・。あ! いえいえ、それが当然です。それどころか、瀬尾さんが見つけることができないのなら、誰が探しても一緒ですから。ですが、もしそのようなアイテムや何かがありましたら、是非とも我々に教えてください。1人でも多くの子供たちの救いになります」

「分かりました。アイテムなら確認することができますので、僕の出来る限りでよければ」

「よろしくお願いします。それでは、学校内を一緒に歩きませんか? 施設を見ながら色々と説明いたしますので」


校長の案に乗って、僕は学校を見学することになった。

学校内はスロープが多く、何故そうなっているのか分からなかったが、玄関を通り抜ける際に、車椅子に乗った子が先生と一緒に外に向かっていた。

外にはバスが待っていて、中には同じように車椅子に乗った子供たちが順番に入って行く。


「車椅子の子供たちもいるんですね」

「はい。あの子たちは毎日バスで送り迎えをしていますね」

「神経関係・・・ですか?」

「生まれつきもいますし、生まれた直後に病気になったとか急変したとか・・・」

「ポーションを使った記録などは?」


バスが発車して、校長は中にいる子供たちに手を振って笑顔で別れる。


「昔の記録で、ポーションを使用したけど全く効果がなかったというものがあります。恐らく状態異常扱いなんでしょうね」

「阿蘇の温泉は行かないんですか?」

「行くだけで・・・1億以上もかかる場所に行けるほど、彼らの親は裕福ではありませんよ。ほとんどが、関東で生活できるギリギリの生活をしています。瀬尾さんはテレビのニュースは最近観られましたか?」


そういえば、最近テレビは観てないな。

ネット検索もほとんどしていない。

情弱に拍車がかかっていなければいいのだが・・・。


「瀬尾さんが阿蘇のダンジョンを攻略した後、阿蘇山のモンスターの生態系が変わったらしく、最初に九州の自衛隊が総力で登頂して確認したそうですよ。そこで公式にフィールドでの難易度が高くなっているとの発表がありました。もう一般人にとって、阿蘇の回復の温泉は生きているうちに行きたい場所No.1ですよ」


あの時の噴火後、阿蘇はそんな状況になっていたのか・・・。

今追っている問題が解決したら、また阿蘇に戻って探索してみよう。

莉乃と一緒ならどんな状況でも突破できそうだし。

僕はそう心に決めて、校長に連れられ学校内を見て回った。


生徒たちの工作や展示品を見て、彼らが将来どういった職につき、どうやって生きて行くのかを聞いて、そろそろ帰ろうというところで、最後に校長が校門で真剣な表情で僕を見た。


「私は今の時代に期待しているんですよ」

「・・・」

「旧暦は宗教という概念は存在していましたが、神の存在は不確かでした。むしろいないという方が大多数だったでしょう。でも、神がいた。それなら彼らを・・・世界中にいるみんなを『普通』にしてあげれる何かが・・・えっと、普通というのはその・・・」

「大丈夫です。分かります」

「はい・・・。要は、薬なりアイテムなりが創られているのではないか? それがダンジョンにあるのではないか? と。命がかかっている場面では難しいかもしれませんが・・・是非ともよろしくお願いします」


校長が頭を下げた。

切実な思いだった。

僕は彼に頭を下げて間違えることのないように口を開ける。


「僕の目に届く範囲で、手を伸ばせる範囲で良ければ」

「はい、それで十分です」



学校見学を終えて、僕はそのまま帰る気になれず、またバーに行くことにした。


「あの人は、今日もいないな」


仕方ないのでカウンターに座ってファジーネーブルを飲んでいると、半分以上飲んだところで新しいお客が入ってきた。


「やはり今日は、いたのであーる!」

「じっじじじーさん! こここ声が大きいよ!」

「気にしないのであーる! 瀬尾くん! 数日ぶりなのであーる!」

「お久しぶりです、百乃瀬さん」


上機嫌で僕の隣に百乃瀬さんは座り、その隣にお孫さんが座った。

お孫さんは相変わらず振り回されているみたいだ。


「なかなかなのであーる! 生中でいくのであーる!」

「っれ、レモンサワーで」


2人の飲み物が前に置かれて、ホクホクと喉を鳴らして美味しそうに飲む。


「ぷはぁー! 疲れた脳に心地よい刺激なのであーる!」

「ご機嫌ですね」

「分かるのであーるか! そうなのであーる! ゴーレムが走ったのであーる!」

「走るまで出来たんですか!?」

「わし、天才! 褒めるのであーる!」

「いや、本当に凄いです!」


足というのは体重が重ければ重いほど、激しく動かせば動かすほど壊れやすい箇所だ。

そこが巨大ゴーレムの一番のポイントだ。

敵と戦う以上、各パーツに負担がかかるのは当然だが、足の関節は、自重・衝撃・捻れと、色々な力がかかる場所だ。

走らせるとなると、かなり相性のいい素材か何かがあったのだろう。


「え? 訊いてもいいですか?」

「えー、訊くのであーるかー? 重要機密なのであーるよ?」

「お願いしますよ。僕だって巨大ゴーレムを将来作れるのなら作りたいんです」

「将来のライバルを育てるのであーるかー?」

「ライバルにはなりませんよー。お願いします!」

「どーするのであーるのかなー」


自分の成功を自慢したいけど、自分から言うのは嫌だ、だけど言いたい。

そういう思いが彼から溢れ出ていたので、僕も彼とのやり取りが楽しくなって、このやり取りを5回ほど繰り返した。


「ほっんんんんんとうに、うっっっっざいやり取りだよ!」


一部の人には不評だったみたいだ。

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― 新着の感想 ―
消えたりもせずそれどころか難易度上がるのかぁ気軽に攻略しても人類の生存圏が狭まる恐れすらあるとはなぁ周回させないぞという意思すら感じそう
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