予定変更と東京観光
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ホテルで一泊して次の日、僕は宮地さんに寮まで送ってもらった。
寮の中に入ると受付に雨宮さんはいなかった。
不思議に思いながらも、僕は自分の部屋に戻って服を着替えてのんびりしていると、12時になったので食堂に行き、麻婆豆腐丼を食べることにした。
ピリリと山椒の辛味がいい感じに舌を痺れさせる。
その食べている途中に、僕の携帯が振動して着信を知らせた。
画面を見ると、知らない番号なのだが固定電話からだったので、受けてみた。
「はい」
『お忙しいところ大変申し訳ありません。わたくし、小田原探索者専門学校で副学長をしてます、相沢といいます。瀬尾様の携帯であっておりますでしょうか?』
「はい、あっています。初めまして、瀬尾です」
『あ! お忙しいところ申し訳ありません。今、お時間大丈夫でしょうか?』
「はい、大丈夫ですよ」
僕は、まだ半分ほど残っている麻婆豆腐丼を見たが、そこまで長時間話すことはないだろうと思い、箸を一度置くことにした。
『よかった。えっとですね、この度、当学校で講義をしていただける件について、是非とも事前打ち合わせをさせて頂こうと思いまして電話をいたしました。ご都合のいい日で2時間もあればと考えていますが、いかがでしょうか?』
「えっと、講義をする場所や時間、話す内容についてということでしょうか?」
『はい、そうです。今回のダンジョン内での撮影配信について政府が制限を緩和したことを含めて、内容と動画ツクールでの配信を一緒に考えたいと思います』
なるほど。
僕を使って、学校と国と組合の言葉を代弁させようと考えているのかな?
特に若い世代が無闇矢鱈にダンジョンに突撃しないように、僕の口から忠告して欲しいのだろう。
最終的には本人たちの意思や倫理観に委ねるしかないから、僕がいくら言っても意味はないと思うけど、ここは彼らに乗ってあげたほうがいいだろう。
「僕の方は、自衛隊の都合と被らなければいつでも大丈夫です」
『承知しました。先方の担当者と連絡を取って調整させていただきます。ご担当者様のお名前は? どなたと連絡を取ればよろしいでしょうか?』
相沢副学長に訊かれて僕は言葉につまった。
そういえば・・・今の自衛隊の窓口って誰だろう?
「えっと、第一師団の矢田師団長か宮地准尉であれば確実だと思います」
『承知しました。それでは日時が決まりましたらご連絡いたしますので、よろしくお願いします』
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そうして電話は切れた。
・・・今度、自衛隊と警察の窓口担当者を確認しないと。
そう考えて、置いていた箸を持って、残っている麻婆豆腐丼に向かおうとしたところで、再度電話が震えた。
今度は知らない携帯番号からだ。
僕は3コールほど放置してみたが、切れる気配がないので、また箸を置いて通話マークをスライドさせた。
「はい」
『昨日はすまなかった。矢田だ』
まさかの矢田さんだった。
取ってよかった。
放置してたらとんでもないことになるかもしれなかった。
「いえいえ、大丈夫でしたか? なんだかお辛そうでしたが」
『ああ、大丈夫だ。私のスキルが発動すると必ずああなるからな。ただ、瀬尾くんがいるときにああなるのは想定外だった。結果、あそこに放置するようなかたちになってしまって申し訳なかったな』
「僕は大丈夫です。宮地さんも呼んでいただけましたし」
『そうか、彼とは知り合いだったな。さて、鎌谷さんについて次回の面会の日時なのだが・・・』
彼を説得するという話か。
実は、僕はその件についてかなりの自信を持っている。
この話題を出せば、彼が同じ解答に行き着いていない限り協力は得られるはずだ。
だが、次に出てきた矢田さんの言葉に僕は少し混乱することになった。
『しばらく未定だ』
え? っという言葉が頭に浮かんで消えた。
反神教団を捕まえるにあたって、彼の協力は絶対だろう。
僕としても、莉乃と安部の場所がわかる情報はすぐにでも欲しい。
なのに・・・未定?
「えっと?」
『申し訳ないが・・・問題が発生した。見逃すことができない問題だ。今、上層部でもこの件について対応しているから、関東まで来てもらったのにすまないが、自由に行動してもらって構わない』
「そうですか・・・」
師団長である彼女がそう言うのだから、とてつもない問題が起きたと考えたほうがいいだろう。
僕が口を出してはいけないレベルの問題の可能性が高い。
「分かりました。それなら、ちょうど良かったです」
『ん?』
「探索者専門学校から打ち合わせをしたいとの打診があって、日時について自衛隊と話をして欲しいって先ほど伝えたばかりなんですよ。これから電話をしていつでもいいと伝えます」
『・・・そうか。では、こちらも次の日時が決まったら事前に連絡する。それではまた』
そう言って電話が切れたので、僕は履歴から専門学校に電話して副学長と話をし、明日午後1時に寮まで迎えが来ることになった。
その後、残っていた麻婆豆腐丼を食べてどうしようかと考えたが、どうせなら観光をしようと自分の足で東京に向かうことにした。
小田原駅から東京駅まで普通だと1時間30分ぐらいかかるということなので、お金を下ろして新幹線に乗り、お台場を目指すことにした。
「とりあえず東京駅を買ったけど・・・品川駅でも良かったのか?」
携帯で調べたのだが、いくつかルートがあるみたいだ。
迷わなければいいのだけど・・・。
とりあえずホームの番号をネットで調べた通りに進み、何とか東海道本線の電車に乗り換えて新橋で降りた。
それから今度はゆりかもめとかいうルートの電車に乗って台場に到着することができた。
だが・・・、
「瀬尾がいる! なんで!?」
「え? 本物? そっくりさんじゃなくて? コスプレじゃなくて?」
「まさか! だって島根にいるって・・・でも写真と一緒?」
「シャウトに目撃情報があった! 本物だ!」
周囲の目が僕を捉える。
僕は身体強化を使ってトップギアで走り出した!
「握手!」
「サイン!」
「髪の毛!」
くそ!
球体が見えにくい!
でもこっちにユニコーンモデルが!
あれがいるんだ!
広場を正面に左手にそれが姿を現す。
巨大なロボット。
旧暦では未来に作られる予定だった存在。
新暦になった今、宇宙は夢の存在になってしまった。
僕はそれの正面に立って見上げる。
危険は百も承知でそれを待つ。
動いて!
動いてくれ!
僕には時間がないんだ!
「いた!」
遠くから声が聞こえた。
時間は14時37分!
動いて! 動いて!
「動いてくれー!」
僕の叫びは届かず。
追ってきた人たちに囲まれて押され、警備員に端っこに追いやられて泣く泣く対応することになった。
キュピーン! と音がした。
そして掛け声と共に音楽が鳴り始める。
ああ・・・見れなかった・・・。
それから人がどんどん集まってきたので、全員を対応することを諦めて警備員タクシーを呼んでもらい、その場から離れた。
また、落ち着いて見れる時に来よう。
その時は携帯で動画を撮るんだ。
あのツノが割れる瞬間を・・・撮るんだ。
僕は再度来ることを心に誓ってお台場を後にし、先日来たバーにまた入った。
流石にまだ早いかと思ったが、食事はできないが飲むことはできるとのことなので、カウンターに座ってファジーネーブルとツマミをお願いした。
周囲を見回すが、僕以外にいるのは2人だけ。
百乃瀬さんは残念ながらいないようだ。
「まあ、そう都合よくいるわけないか」
お台場で見れなかった思いを忘れるために、話をしたかったのだがしょうがない。
僕は一杯だけ飲んで大人しくタクシーに乗って寮へと帰った。