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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
ダンジョン排除地域編
139/197

同じ趣味

文字起こしに時間がかかってすみません。

頭にあるのに文字にすることがこんなにも難しいとは・・・。


ブックマーク? 評価? どちらか不明ですがありがとうございます!

見ての通り更新が亀の歩みですが、よろしくお願いします。

感覚のない右腕が大きく振られる。

その度にエイジが「オオオオ」と声を漏らしているから、結構な力で振られているのだろう。


「鎌谷さん! 感動しすぎだ。瀬尾くんが戸惑ってるどころか、ちょっと引いてるぞ!」


矢田さんの声が届いたのか、激しく振られていた鎌谷さんの腕がピタッと止まる。


「あぶねーあぶねー。俺様が取れっちまうとこだったぜ」


エイジが小さくぼやくが、一度装備したアイテムはその部分を切り取られない限り取られることはない。

そう思えるぐらい振られたという感想なのだろう。

そして、エイジにそう思わせた人は胸に手を当てて大きく深呼吸して僕に笑顔を向ける。


「ごめんね。ネットでしか会話していなかったから、テンションが上がってしまったよ」

「え!? ネットでですか?」


僕は中学生の頃、ネットにハマったことがある。

具体的に言うと、ネットの海に落ちている旧暦のゲームや動画、漫画などだが、僕だけでは探し出すことが難しく、強欲の掲示板というタダで情報が得られる場所でその手の情報を集めていた。

もちろん、自分からも情報を出して中にいる人たちと友好に会話をしていたのだが、鎌谷さんが言っている会話はこれしか考えられない。


「初めまして、ハンドルネーム『恋するうさぎ』さん。確か・・・何とかグラフの歌詞だっけ?」

「うわー、え? どの板ですか? 攻略系? 捜索系? あ、感想系もありましたね」

「捜索と攻略だね。裏技の情報とか弾幕回避の参考動画のありかを情報交換したよ」

「えっと、攻略系の捜索と裏技はそれなりに人がいたけど、弾幕ということはシューティングの攻略動画の捜索はそこまでいなかったはず。小豆狸さん、一番搾らないさん、ヒャッホイさん、アカバネさん、あとは・・・」

「・・・」

「緋緋色さん?」

「はーい! 俺だよー!」

「ウォーーーー! 緋緋色氏! 初めまして! こんな場所で会うなんて、奇縁です!」

「ホントだよ! 急にうさぎ氏が板から消えてみんな心配していたよ! そしたら氏が消えてから急に有名になった人がいて、詳しく調べたら同一人物の可能性が出たから今日が楽しみだったんだ! 色々と個人情報を漁ってしまったから、見られたくないものも見てしまった可能性があるけど、口外は絶対しないと俺のコレクションに誓うよ」


見られたくないというのは、おそらくじーちゃんとばーちゃんのことだろう。

僕は苦笑いを浮かべて小さく頷く。

見られるどころか、調べようと思えばネットに情報がある状態なので、気にしていても仕方のないことだと僕は理解しているつもりだ。


「それよりもこっちに来てくれ。僕のコレクションルームだよ!」

「あ! 鎌谷さん!」

「矢田ちゃんはダメだよ。ここからは趣味を披露する場だから、同志以外は入れないんだからね!」

「はぁー。分かりましたよ。こっちで待ってます」


矢田さんはそう言って、キッチンにあるコーヒーメイカーに向かって慣れた手つきで操作を始める。

鎌谷さんがコーヒーを飲んでいるようには見えないから、来客用に置いているのだろうか?


そういう疑問を残しながら、僕は鎌谷さんに連れられて彼が出てきた部屋に入った。


「うっわ!」


圧巻な景色が僕の目の前に広がっていた。


「ふっふっふ。御覧じろ御覧じろ。俺が頑張って手に入れたコレクションの数々。題して『鎌谷式・千年書庫』だよ!」


自信満々に両手を広げる鎌谷さん。

すごいドヤ顔なのだが、その表情もこれらのコレクションを見れば理解もできる。


「うわー、動画でしか見たことがない同人ゲームもある。これって、攻略動画がどこにあるか訊いていたゲームですよね? こっちはレア雑誌に載ってた漫画! 現物残ってたんだ! 受注生産しかしなかったフィギュアまである! いくらかかったんですか!?」


驚きすぎて言葉が止まらない。

漫画も全巻揃ってるし、シリーズもののゲームも抜けがない。

見つけて持ち主と交渉するだけでも結構な時間がかかったはずだ。

しかも、本当に貴重な雑誌やフィギュアはガラスケースに納められていてホコリがつかないように配慮されていた。

・・・素晴ら!!


「いいな、いいな・・・」

「人間ていいな?」

「古い動画のネタを持ってきますね」

「何となく言いたくなってしまっただけだよ」


ニヤけながら言う鎌谷さんの気持ちも分からないこともない。

僕もこれほどの宝物を価値のわかる人に見せることができたら同じ顔をしたいたはずだ。

ここには及ばないけど、僕が集めていたものは・・・あの日燃えたからな・・・。


昔に思いを馳せながら鎌谷さんのコレクションを見ていると、一区画だけ趣の違う場所にたどり着いた。

そこにあるのは、奇妙に光を放つカプセルとケーブルで繋がった数台のデスクトップ、そして3つの大画面テレビ。


「これは・・・」

「俺の仕事道具だよ。そっちのカプセルが指定物探知スキルが付いたアイテムで俺しか動かせないようになってるよ。そっちの大画面はパソコン用。うさぎ氏と会話したのもこれだよ」


一つの大画面の中で、三白眼の金髪トラ柄衣装をした女の子がバレリーナのように爪先立ちでクルクル回っている。

今どき珍しいスクリーンセイバーだろうか?


「あー、また遊んでいるよ・・・」


僕は見ていた画面を鎌谷さんも見ると、彼はそう呟いてマウスを動かしてカーソルを少女に当て、左クリックをして一気にドラッグした。


『ぎゃああああああああ!』


画面の中の女の子が叫び声を上げて高速でクルクル回転したあと、アニメのように目を回してその場に倒れた。


『何しやがりますか、緋緋色氏!』

「1人だけ観客になろうとしても、させるわけないよ、ヒャッホイ氏」

「ヒャッホイ氏!?」

『イェーイ! お久し~、うさぎ氏!』


板の中でも1番お世話になった人だ。

この人は旧暦のファミリーコンピュータのエミュの在処に精通していて、いろいろと教えてもらっていた。


「お久しぶりです、ヒャッホイ氏! まさかこういう形でお会いできるなんて思いませんでした!」

『俺もだ、うさぎ氏。あの時は俺好みの音楽を探してくれてありがと。そのおかげでかなり心を落ち着けれた』

「お役に立てることができたのなら何よりですよ」


ヒャッホイさんは一時期すごく病んでいて、掲示板の会話でもそれを察することができるほど酷かった。

少しでも心を休ませる方法として、好みの音楽を訊いて、ネットに落ちれいるものを片っ端から聴かせてみると、そのうちの一つがヒットしたらしく、2週間後には掲示板上では落ち着いているように見えた。


「しかし、ヒャッホイ氏がこんなに可愛らしい方だとは思いませんでした」

『中の人のことを言わない。グッドをやろう! 緋緋色氏! 見たか!? これがネット紳士だ! 見なくていいもの聞かなくていいものは全てスルー! 緋緋色氏も見習え!』

「すまなかったよ、あの時は。いつまでも根に持つなよ。何度謝ってもほじくり返すから、こっちも疲れるよ」

『俺の本体はこっちだからな! うさぎ氏もその認識でよろしくな!』


ヒャッホイさんは可愛らしい見た目で胸を張り、画面の中でフン! と鼻から息を吐いた。


それから僕らは趣味の話に花を咲かせ、僕は持っていたレアプラモの話になり、それが燃えたことなどを伝えていると、突然ジリリリリリリ! と警報器が鳴り響いた。


「な! 何が!」

「あー、我慢の限界か・・・」


警報に焦る僕に対して、鎌谷さんは落ち着いて立ち上がり、背筋を伸ばした。


「ヒャッホイ氏、すまないが今日はここまでのようだよ」

『分かってる。どうせまたうさぎ氏は来るんだろ? その時また来る』


ヒャッホイさんがそういうと、誰も触れていないのに画面がブツンと音を立てて電源を落とした。


鎌谷さんは、それから僕も立つように促して苦笑する。


「矢田ちゃんが我慢の限界みたい。向こうに戻ろうか」


・・・なるほど。

確かにそれなりに話し込んだ気がする。

それを気づかせるための警報なのか?


僕らが隣の部屋に戻ると、鬼の形相をした矢田さんが足と腕を組んでいた。


「・・・何か言うことは?」

「待たせて、ごめんね、ごめんね〜」

「今すぐ殴りたい、この笑顔」


流石に僕は頭を下げて謝罪した。

どうやら3時間弱、彼女を放置していたみたいだ。

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― 新着の感想 ―
ネットの仲がよかった蒸発した友人とリアルで会えるしかも偉人となればなるほどw この時代はいろんなこういう趣味に関するものは貴重品・骨董品だらけになってるんでしょうね。でもだいたいが生産地日本と考えれ…
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