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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
黄泉比良坂編
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島根県神社庁

翌日、島根県神社庁の事務長にアポイントが取れたので、才城所長と僕だけで伺うことになった。

松江市から西に車で移動して、出雲神社のさらに西側の建物に着いた。

建物の入り口には、既に人が出て僕らを待っていて、姿を見せたら深くお辞儀をされた。


「初めまして。事務長とアポをとっている松江市探索者組合の所長の才城です」

「探索者組合所属の瀬尾です。よろしくお願いします」

「ご丁寧にありがとうございます。案内役を勤めます、梶木といいます。事務長は中でお待ちしておりますのでこちらへお願いします」


僕らも近づいてお辞儀をして自己紹介をする。

迎えに出ていた人も再度お辞儀をして自己紹介をし、僕らを中に案内した。


木造の建物の中は、人の気配はするものの凄く静かで空気が澄んでいる気がする。

自然と足音も抑えるように歩いて、この静けさが壊れないように気をつけた。


それから僕らはいくつかの扉を通り過ぎて、事務長室と表札のある部屋の前で止まった。


「失礼します。お客様がお見えです。」

「どうぞ」


中から男性の声が聞こえた。

凄く澄んで響く声だ。


僕がそう考えていると、梶木さんが扉を開けて、僕らに入室を促した。


「失礼します。松江市探索者組合の所長を務めております、才城です。本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございます」

「探索者組合所属の瀬尾です。よろしくお願いします」

「初めまして。島根県神社庁の事務長を務めております。樋口翔吾といいます。以後お見知り置きを」


才城さんと樋口さんが名刺を交わし、僕も彼の名刺を受け取った。

縦書きの行書体でシンプルな名刺だったが、多少凹凸がある。

なんだろうとよく見ると、凹凸が花を模っていた。

オシャレだ・・・。


「どうぞこちらにお座りください」


樋口さんの勧めに従って、僕達は来客用のソファーに座り、名刺をテーブルに置く。

そして才城さんが一度お辞儀をして喋り出した。


「この度は自衛隊との連携に協力していただきありがとうございます。おかげで当方の探索者たちも安心して探索に向かえます」

「いえいえ、困った時はお互い様です。こちらとしても私たちの有用性というものを周囲にお見せしないと、何かと言われてしまいますからちょうどよかった・・・は不謹慎ですけど、私個人はそういう思いです」

「できれば出雲大社様も連携できればと思うのですが・・・」

「あちらは出雲大社教が仕切っておりますから、私どもでは・・・ね」


樋口さんの言葉に才城さんも「存じております」と小さく頷いた。


「えっと、不勉強で申し訳ないのですが、神社庁は全ての神社を統括しているのではないんですか?」


僕の言葉に樋口さんはニコッと微笑んだ。


「普通の方々はそう思われてもおかしくはないでしょうね。なまじ『庁』という文字が入っていますから誤解を与えるのでしょう。実際は所属は任意になります。なので有名どころで言うと、日光東照宮なども所属しておりません。旧暦は何かしら問題もあったようで・・・離脱もあったようですから」


おそらく、ネットで詳しく調べれば出てくるのだろう。

事務長はちょっとうんざりした表情で斜め下にため息をついた。


「えっと、では今回は出雲神社の助力は得られないってことですか?」

「・・・えー、回答する前に。出雲大社です。そこは間違えないようにしてください」

「あ、え、あ、はい」


思わぬ指摘と圧に頭を急いで縦に振る。

なんの考えもなしに使っていたが、何か違いがあるのだろうか?


「格が違うのですよ。大社は神社の上に位置して同列ではありません。特に出雲大社は、いずもおおやしろと呼ぶこともありますので、地元の方々と話をされる場合は注意してください。悪意がなくても取り返しのつかないミスというものはどこにでも存在しますので」

「分かりました。ご教授いただきありがとうございます。何も知らずに地元の方に愛されている場所を汚すところでした」

「事前に気付けたので良しとしましょう。さて、先ほどの質問ですが・・・」


樋口さんは大きく息を吸ってゆっくりと吐き出す。


「まず無理でしょう。私たちが先に動いてしまったため、表立って協力関係を築くことはできないと考えられます。ただ、黄泉比良坂が受肉祭を起こしてしまった場合はその限りではありません。その時は、私が引きずってでも宮司殿を連れ出してみせます」


そこまで決意を固めないと出てこない人なのだろうか?

そんな人なら協調性にも問題あるだろうし、いっそ抜きで考えた方が良さそうな気もするのだが・・・。


「今の宮司は千家義知さまが務めていらっしゃるのですが、黄泉比良坂をご訪問された際に衣装にスキルが付きまして、そのスキルが鎮めなんですよ」

「鎮め・・・ですか?」

「ええ」


それはまた・・・神様によく効きそうなスキルだな・・・。


「ただ、そのせいで宮司殿は引き篭もってしまいまして・・・神を鎮めるなんて自分には重すぎる! とかなんとか言っているらしいです」

「まあ、神様に使うぐらいしか考えられないですよね・・・。ダンジョンには効かないのでしょうか?」

「それも含めて今回は出ていただきたいのです。なにせ、鎮めのスキルがどのような状況の時有効なのか。もしダンジョンブレイクを鎮めることが出来るのなら・・・凄いことになります。北島家や他の分家の方々にも助力をいただいてでも緊急時には出ていただきます」


心強いと思いながら、同時におや? と疑問が生まれた。


「出雲大社の方々とは交流があるのでしょうか? お話の流れだと、所属していない神社なので交流がないとばかり思っていましたが」

「交流はございます。旧暦はどうか不明ですが、新暦になって神が存在を現し、魔力やダンジョンが生まれた後は蟠りなどこだわっている場合ではありませんので、徐々にですが話し合いを行い連携を強化し、情報交換をしております。他の所属していない神社にも同様に話し合いをしているはずですよ」


なるほど。

僕が探索者になる前の自衛隊・警察・探索者組合の関係か。

各自のプライドは一旦横に置き、日本を守ることを優先する。

反発もあっただろうけど、それを乗り越えて徐々に溝を埋めていったのだろう。

ただ、現状でも反発が残っているため、表立って神社庁と協力関係を示すことはできないのか。

その障害物も、早急に取り除かれるといいのだけど、そう簡単にはいかないのか・・・。


「それでは、緊急事態となった場合、私が瀬尾くんから連絡をもらいますので、直ぐにご連絡します。樋口さまに直接電話してもよろしいでしょうか?」

「はい、問題ございません。ワンコール、私の方からしましょう」

「ありがとうございます」


樋口さんが携帯を操作して才城さんの携帯を鳴らし、直ぐに通話を切った。


「それでは、しばらくは緊張が続きますが、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


頭を下げて退室し、僕らはそのまま神社庁を後にした。


「ちょっとだけ、緊張しました」

「私もです。特に出雲神社にはびっくりしました」

「申し訳ありません。そこまでのこだわりと言いますか、正式な名前とか格とか重要視していなかったのが原因です。以後気をつけます」


流石にもう二度と同じミスはしない。

心にそう誓って、ミラクルミスティーの人たちにも絶対教えておこうと決めた。

高城 四葉 女 身長159センチ 体重48キロ

7月18日生まれ 6章(宝箱探索編)時点で26歳

保有スキル:危険感知、残像、腕力強化弱

探索者ランク:3級

性格:仲間の調和を重要視する。時にはリーダーとしてみんなを引っ張っていく性格。

家族構成:両親、妹、妹

履歴:埼玉県出身。高校卒業後、同級生だった麻生と植木を誘って探索者になった。阿蘇の灼熱ダンジョン攻略の際にアイズに殺される。

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