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人類はレベルとスキルを獲得出来ませんでした  作者: 妹尾真拓
黄泉比良坂編
116/197

特殊清掃工場防衛

いつもいいねありがとうございます。

更新が遅いですが、よろしくお願いします。

「ここが標的になる・・・ですか」

「はい。僕たちが敵の立場なら、僕らのアイテムが離れているこの瞬間を狙います。時間は読めませんが、真夜中が一番可能性があると思います」

「1時~3時が来そうだな」

「お酒を入れてたらアウトな時間ね。起きてられないわ」

「また肌の手入れにお金かけないと・・・」


僕の予想を聞いて、工場長は深刻な顔で応接室のテーブルを睨む。


「僕たちの装備はいつ頃清掃が完了しますか?」

「清掃消臭は1日あれば十分です。逆に言うと1日は必ずかかります。黄泉比良坂には行っていないようなので、そこまで酷い臭いはしていませんでしたが、この工場の消臭工程が黄泉比良坂仕様の特別工程しかないのです」

「分かりました。途中で装備を取り出すことも不可能ですか?」

「不可能ですね。全ては機械任せでラインに乗っていますので、一度入れたら自動で進むだけです」


せめて金田さんの大楯と真山さんの剣を出してもらいたかったが仕方がない。


「私はサブウエポンを使うから気にしなくていいわよ」


腰につけたショートソードをポンポンと叩いて僕にウィンクする。

確かマジックキラーというスキルが付いていて、魔法関係は基本的に切って壊すことができるそうだ。

ただ、普通に物も切れるため、取り扱い注意の品だ。


「この施設で全方位確認できる場所はありますか?」

「うーん・・・外になるが、貯水槽からなら全方位確認できるはずです」


工場長の言葉に僕は頷いた。


「瀬尾くん、橋がある西側はともかく川のある東側も監視しないといけないの? 吸血鬼とか不死系って流水を渡ることができないって聞いたことがあるけど?」

「もしそうならありがたいですね。でも、何らかの方法で上空を飛んできたら、川なんてあってもなくても一緒です。相手も僕たちが川からこないと考えて準備しているかもしれません」

「そっか・・・」


朱野さんは腕を組んで地面を見てブツブツと何かを考え始めた。


「僕はこれから貯水槽に行きますので、何かあったら電話しますが誰の電話にかけたらいいですか?」

「わたしわたし! 緊急だと2人とも両手が使えなくなるからわたしが適任!」

「分かりました。電話番号を交換しましょう。そちらも何かあったら連絡してください」


僕から朱野さんの番号を打って発信する。

彼女の携帯が着信したのを確認してそれを切った。


「これで履歴から発信できますね」

「そうだね・・・ラッキー」


ラッキー?

聞き間違いかと思って朱野さんを見るが、彼女は僕に方を見ずに携帯の操作に集中していた。


まあ、気にすることでもないだろう。

ひとまず朱野さんの携帯番号を登録しようとして新規登録をしていると、日野さんからメールが届いた。

急いで登録を済ませてメールを開くと、PDFが添付されていて、それを開くとキョンシーに関する情報がズラリと出てきた。


「すみません、工場長。ちょっとここでキョンシーに関する情報を共有してもいいですか?」

「大丈夫です。私は退席しますので、この場所は好きに使ってください」


そう言って工場長は退室した。


「見づらいかもしれませんが、先ほど日野さんから届いた資料です」


資料によると、キョンシーとは基本死体で意思がなく、移動する際は両手を前に出し足首と足の指の力だけでジャンプする奇妙なモンスターらしい。

ただし、額には術者には従順にするためのお札が貼り付けられていて、それを剥がすと人を無差別に殺すモンスターになるそうだ。


「噛まれたら同類になるのかよ」

「壁に背をつけて息を止めたら感知されないって・・・不可能ね」

「色々な漫画にも登場しているんですね。動物の身体とつなぎ合わせてるのもある」

「ゲームのキャラになると暗器使いですよ。かなり強敵になりそうですね」


問題は、喋ったりするキョンシーもいるということだ。

ただでさえ身体能力が人間を超えているモンスターに、意思があって駆け引きされるとかなり厄介だ。


「うーん、口の向きを閉じる方にしてればいけるかも」

「何体ぐらいいけそうですか?」

「相手次第だけど、普通の人間相手なら10人前後ってとこね」

「相手の抵抗力次第ですか?」

「それがねー、基準が分からないのよ。魔法とか放出されたスキルなら確実に指向誘導できるんだけど、本体になると成功したりしなかったり」


何か基準があると思うのだが、まだ判明していないようだ。


「エイジは会話できないか?」

「あー、こいつ半覚醒ですぜ。15%しかないのに相性か? 寝ぼけているみたいで会話が全く意味不明だぜ」

「スキルがそんな状態でも10人は指向誘導できるんだ」


これで15%なら、20%や50%になるとどうなるんだろう。

みんなとりあえず噛みつきに対する防御策を考えて少しだけ身体を動かす。

僕も立って襲いかかってくるキョンシーを避ける動作をイメージした。

だけど、動きに関する資料が映画の一部しかないため、これで大丈夫か自信が持てない。

念の為に、左腕に鉄板の盾を取り付けた。

キョンシー自体は魔力吸収で無力化できるだろうが、最低限、事故で噛み付かれるのだけは防がないといけない。

映画の情報が正しければ、身体力の差は強化で埋まるはずだ。


「それでは、僕は貯水槽に行きます」

「分かったわ。今はまだ大丈夫だと思うけど、注意してね」

「そちらも。3人なのでカバーしあえると思いますが注意してください」


時刻は10時少し前。

僕はトイレを済ませて、外にある貯水槽に登った。

高さを利用するタイプのようで、貯水槽の上で立ち上がると360度遮るものがなくなった。

・・・これなら遠くまで見える。


東と西を主に見ながら、1人でモンスターを警戒するのも久々だと思い、昔を思い出す。


阿蘇に行く前は1人で行動していたが、生命力吸収のおかげで生物に関しては警戒する必要がなかった。

阿蘇に着いて灼熱ダンジョンで天外天と一緒に行動して、パーティでの動きを学んだ。

モンスターを本当に警戒するようになったのはあれからだ。

僕のミスでパーティメンバーに迷惑がかかるということを気にしていたかもしれない。

莉乃がいたから・・・楽しく話ができる人がいたから負荷もそれほどなかったのだろう。


「莉乃・・・何をしているのかな? 僕のこと、少しは思い出してくれてるかな?」


座って空を見上げて星を探す。


「水瓶座はどれだろ?」


星座なんて全く覚えてないから見つけることはできないけれど、少しでも莉乃に近づきたくて星々に手を伸ばす。

・・・届かないと分かっているけれど。


それからも、周囲を警戒しながら休憩を挟み、エイジとも会話をしながら時間を潰していると、遠くの方で何かが壊れる音がした。


東の方だ・・・。


真夜中の12時を過ぎた。

空は真っ暗で、身体強化していても対象が近づかないと僕からは確認できない。


何がくるか警戒していると、一際黒い点が空を飛んでこっちに向かって来ていた。


「最悪だ」

「再戦ってとこですかね、主人」


符に覆われたその巨体が、僕から見える位置まで近づいて来てその口を大きく開く。


「エイジぃぃぃぃいいいいいいい!」

「ガッテン承知だぜぇぇぇええええええ!」


口から放たれた黒いエネルギーを肘に付いた口が吸い込んでいく。

更にエネルギーによって押された風が僕の身体を強く押した。

ベルゼブブの籠手があれば、押されても気にしなかったのに!


貯水槽にしがみついて風が収まるのを待ち、そして立ち上がって飛んでいるモンスターを睨んだ。


「蘇るほど僕が憎かったのかい? アイスドラゴン!」


真っ赤に輝く目で僕を睨んで、符に覆われたアイスドラゴンは戦いを開始すると言わんばかりに大きく吠えた。

城島 真一郎 男 身長168センチ 体重67キロ

9月24日生まれ 7章(阿蘇攻略編)時点で59歳

保有スキル:強化中毒

探索者ランク:なし

性格:部下の失敗を笑顔で許す穏やかな性格。

家族構成:妻、息子、娘

履歴:陸上自衛隊西部方面隊隊長。第三次屋久島奪還および第四次屋久島奪還に参加。現時点最高の強化補助スキルホルダー。かつてスキルを使い過ぎて仲間を中毒者にしてしまったことを悔いている。

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