研究所見学
ブックマークありがとうございます。
完走まで頑張ります!
襲ってきたゾンビの詳細を教えてもらい、みんなでどういう対応を取るか意見を合わせた後、僕らは皆嶋さんに施設を案内していただくことになった。
「元は小学校だからね。特別何かあるわけでもないし」
彼女の言う通り、施設自体は本館、別館と体育館のみで目立った特徴はない。
どこでも見られる3階建ての鉄筋コンクリート造だ。
それでも中で行われている解体ショーは凄く、魚系のモンスターから鳥系もあれば、先ほど襲撃を受けたゾンビ系のモノもあり、凄くバラエティーに富んでいる。
「これから体育館に向かうけど、凄いよ」
皆嶋さんが、ちょっと意地悪そうに笑みを浮かべて、扉を開く。
その内に・・・ドラゴンの骨が頭から尻尾まで綺麗に並べて寝かされていた。
「これは・・・」
「凄いわね・・・前回の天空大陸のドラゴンかしら?」
「頭蓋骨が陥没してるな。とんでもない攻撃を喰らったんだろう」
僕も金田さん達と一緒にドラゴンの骨を観察する。
いくつかパーツがなくなっているが、誰かの装備品にでもなったのだろう。
それから頭に回って観察し、何故か記憶に引っ掛かるドラゴンの大きさに首を傾げた。
「何処かで見たような?」
「これ、英雄くんが倒したアイスドラゴンの骨だよ」
「あっ!」
皆嶋さんの解答に僕の記憶が思い出される。
そういえば、頭のこの辺を最後に踏み抜いた記憶があった。
「ここに運ばれていたんですね」
「流石主人だぜ。俺様が劣化した状態でこんな大物を倒すなんてよ。だけど、今の俺様とならもっと凄いことができるから期待して待っててくれ!」
「ああ、分かってるよ、エイジ。皆嶋さん、これって触っても大丈夫ですか?」
「いいよ。研究材料分は取ってるし。あ、記念落書きとかはやめてね・・・いや、逆に有りか?」
「しませんよ」
触れてみると少しだけひんやりしている。
まだアイスドラゴンだった時の性質が残っているんだろう。
「これ・・・凄いね」
隣に朱野さんが来て僕と同じように骨に触れた。
「アイスドラゴンってどのくらいの強さだったの?」
「はっきりとは分かりません。当時の生命力吸収で動けなくして踏んだだけですから、直接殴り合うことはなかったんです。でも、もし魔石があったとするなら、やっぱりA級だったと思います」
「・・・私たちだと、正面に立つのも難しい相手だね。睨まれただけで腰抜かしそう」
「こいつよりも強いブラックドラゴンとホワイトドラゴンもいますけど、僕もできれば二度と会いたくないですね」
「これよりも強いドラゴンがいたんだ・・・。あ、もしかして1級の渡辺さんが喰われたって・・・」
「ブラックドラゴンに食べられたそうですね」
当時のパーティメンバーからの証言で、装備ごと丸呑みされたそうだ。
みかんの木にあれだけ執着していたから、そのニュースを後から見てちょっと変に思ったが、僕が変に発言して混乱させるのもまずいと思い、その考えは僕の中だけで止めている。
「この体育館で見て回る場所は終わりだけど、後は所長室だけかな? 行く?」
「最後に中に入らず入り口から覗くかたちで見ておくかな。一条さん、それでいいですか?」
「中の物に触れなければいいぞ。物は近日中に全て回収する予定だ」
「価値のある物も中にはあるから、置いていって欲しい物もあるんだけど?」
「お前も警察の一員なんだから分かるだろ。例外は無し、全部回収だ」
「はいはい、分かってるよ。はぁ~、所長のお気に入りだったからあの部屋に置いていたのはミスだったな~」
何か特別なものがその部屋にあったようだ。
捜査の関係上、それだけを回収というわけにはいかないらしい。
皆嶋さんはガックリと頭を垂らした。
「そんなに貴重なんですか?」
「貴重・・・。もう二度と手に入らないだろうね」
何があるんだろう。
僕らは廊下を歩いて、見て回る前に話をしたらデスクがいっぱいの部屋に戻った。
「表からでも入れるんだけど、いつもこっちから入ってたから」
流れでこっちの部屋に入ってしまったのだろう。
1番奥にある扉の前に立って皆嶋さんが手をかけた。
「ちょっと汚いかもしれないけど、引かないでね」
不安になる一言を言って、彼女は扉を開けた。
まずは本。
パッと見ただけでも、日本の神話から近代歴史、物理学やら宗教思想の本など、ジャンルを問わずに本が散らばっている。
他には、色々書き殴った紙が散らばっている。
後、変なスキルが付いた物が放置されていた。
「あー、ダンジョンに持っていかないと俺様でも確認ができねぇぜ、主人」
「いいスキルがあったら放置されてないと思うから、大丈夫だよ。このままにしておこう」
「了解だぜぇ~」
中に入って触るわけにもいかないため、あくまでここから見るだけだ。
「なっ! 皆嶋!」
「お、気づいたね」
「ヒッ!」
「うわ・・・マジか」
「うっわキモ」
「話には聞いていたが・・・」
日野さんの驚きの声を皮切りに、皆んなが上を見て思い思いの感想を口から出していく。
僕もみんなに倣って・・・それを見た。
「これは・・・昆虫の脚?」
それは巨大な一本の脚だった。
ただし、こんなに大きいと元の本体はもっと大きい虫になっているはずだ。
「こいつは、蝿の王だな?」
「正解。所長の色々なツテを使ってようやく手に入れた一本。他の部位は国とか自衛隊が優先的に持っていったけど、これだけは所長が必死の形相で手に入れてたな」
当時を思い出したのか、クスリと小さく笑って、指輪がついた左手で口元を軽くおさえる。
そして・・・ちょっと悲しそうな表情をした。
施設を全部見終わって、僕らは皆嶋さんにお礼を言って車に乗った。
「日野、何か分かったか?」
施設から出て、しばらくしたとこで一条さんが訊ねる。
ここまで来れば何を言っても大丈な距離になったのだろう。
「何も無いですね。強いて言えば生物の臭いが酷かったぐらいですか」
「モンスターをあれだけ解体していれば当然か。隠し扉は無かったのか?」
「今日の段階では不明です。密閉されてたら俺にも知ることはできませんから、怪しい場所は再度調べる必要があるでしょうね」
「後で研究所として改修工事をした時の図面を取り寄せる必要があるな」
この2人は、あの時間で打ち合わせをせずに情報を集めていたのか。
それに比べて、僕は本当に見学するだけで終わってしまった。
「警察として訓練受けてないとそんなもんだよ。それにしても、体育館のドラゴンの骨と蝿の王の脚は凄かったな」
「私はドラゴンの骨が一番すごかったよ。あんな物、もう一生見る機会ないだろうな」
「そうね。ドラゴン自体が滅多に出会わないから今日のはいい経験になったわ」
「そう言えば、皆嶋さんが言ってた幽幻道士ってみなさん知ってますか?」
「うーん、アレはまだ、台湾と中国でしか出てないスキルだね。その系統のスキルが日本にあること自体ビックリな存在だよ」
朱野さんが険しい表情をした。
「警察の方で道術士について情報は無いんですか?」
「無い。ハッキリ言って大陸系のスキルは調査が進んでいないのが現状だ。神道やキリスト教系は有名どころなんだが、道術に関しては俺も初めて聞く」
日野さんの答えに3人が頷く。
「モンスターもキョンシーなんて見たことない」
「ゾンビや骸骨系の方がよく見るよね」
日本では、そうとうレアなモンスターらしい。
「参考の資料とかないんですか?」
「警察の方で持ってるよ。日本は一時期宗教に関しておおらかな時代があったから、どんなモンスターが来ても大丈夫なように世界の化け物系の資料を集めたらしい。今でも最新情報は更新しているって聞いてる」
今でも新しい情報があるみたいだ。
まあ、日本の河童でも色々説はあるから海外でも同じモンスターでも所々で違うのだろう。
ドラキュラもドラキュラ伯爵とエリザベートの2種類に加え永命種でいうとノスフェラトゥもいる。
鬼にいたっては、場所場所で同じようなモンスターが多数存在するため集めるのも一苦労だろう。
「キョンシーについて、資料を後でください」
「分かった。探索者組合と自衛隊にも共有できるように公開してもらおう」
キョンシーがどんなモンスターか分からないけど、情報がないと不測の事態が恐ろしくなる。
幽幻道士・・・。
おそらく23人のうちの誰かなのだろうが、必ず捕まえて見せる。
木下 和臣 男 身長175センチ 体重58キロ
2月16日生まれ 7章(阿蘇攻略編)時点で18歳
保有スキル:火輪子(炎帝)
探索者ランク:5級
性格:我が強く、何にでも主導権をとって先頭を進もうとする性格。甘木市での一件があって、両親と自分の性格について話し合い、ブラックアイズの館山から人間関係について学んで一歩引くことを覚えた。
家族構成:両親。北海道と福岡に祖父母がいるが、甘木市の一件で没交渉。
履歴:甘木市の高校に通っていたが、騒動で居づらくなり神奈川に移住した。しかし、両親の許可をとって静岡で一人暮らしを始めブラックアイズに付きまとう。ドラゴン襲来の際に、単独で霊峰富士にアタックし、炎帝を手に入れた。ブラックアイズの如月日和子とは恋人関係。