意外と強引?
その後、女性は意識を取り戻し、ベンチにけだるげに座り直した。やっと話が出来ると思ったが、頭が痛いと何度も繰り返すので、効くかどうかは微妙だが、二日酔い予防用のドリンクを渡すと、女性はお礼も言わずにドリンクを煽り「にがっ!?」とボヤいた。
だがなぜだろうか、怒りはまったく感じない。美人は得する世の中なんだなぁと勝手に決めつけ、このまま立ち去るのも惜しかったので事情を聞いてみた。
「おねえさんはここら辺で働いてるの?」
「えっ?」
女性は再びキョロキョロと辺りを見る。
「だってそんな格好だしね。キャバクラとかで働いてるんじゃないの?」
「人を見た目で判断しないでよ」
「えっ!? 違うんだ。じゃあなんでこんなところで寝てたの?」
「…。」
彼女は自分の記憶を呼び起こしながら、目線を僕に向けてきた。
「そういう君は何なの? なんでこんなところにいる訳?」
「僕は大学生で、サークルの飲み会で先輩を送った後、公園を歩いてたら、おねえさんを見つけました」
「…。」
「名前はミイラと言います」
「…。」
「あなたの名前は?」
「…。」
「……僕の目を見ながら、無視ですか?」
僕の言葉にハッとした後、女性は両手で顔を覆い、肩を落としながら口を開く。
「ねえ、あなた……、ミイラさん? だっけ?」
「ええ、合ってますよ」
「……ミイラさんに迷惑を掛けるんだけど聞いてくれる?」
「えぇ!?」
「思い出せない。何も」
「何が?」
「なんでここにいるのか含め、まったく記憶にない……」
「マジで!?」
そう言った後、彼女は黙ってしまった。こんな状態の女性を放置も出来ず。だが、このまま映研の酔っぱらいどもの巣窟に一緒にはつれていけない。本当に記憶がないのであれば交番に連れて行くにしても、今の混乱した状態だとまともに話しも出来なさそうだ。
取り敢えず、こんな暗いところでは彼女の気分も落ち込むと思った為、近くのファーストフード店に場所を移動した。
カウンターで自分のドリンクと酔いさまし用に彼女のドリンクを購入し、適当な席に座る。
「少しは落ち着いた?」
「うん」
「そっかぁ……、そういえば持ち物とかはある? 携帯あれば知り合いに連絡出来たりするけど」
「あっ、そうですね。えーっと」
そう言って多少酔いがさめたのか彼女は素直に自身の身につけているものを探り始めた。
……それにしても彼女はスタイルが良いので男としての本能なのか、ドレスで強調されている胸元などについ目がいってしまう……マジマジと見るのはかなり目に毒だし、しばらく目をそらすため、深夜の人がまばらな店内を眺めた。
カウンターにはこんな時間まで仕事だったのか疲れた顔のサラリーマンが片手に携帯、片手にハンバーガーを持ちながら、テーブルにだらけた姿勢で突っ伏し、携帯から目線を外さずもう片方の手で機械的に口元に栄養を補給中。
違う席には男女カップルが楽しそうに談笑していた。……どうせ、男が自慢話して女がてきとーにすごいすごい言っているだろう。
違う席では見た目高校生位の女子が携帯を両手持ちして必死にメッセージの遣り取りをしているようだよく見ると結構荷物が多い、家出かな?
そんな風にぼけっとしている僕に彼女が話しかけてきた。
「ねえねえ、ミイラさん。これは手がかりになるかな?」
彼女の声に振り返り、彼女が手にしていた物に視線を向ける。
「……まあ、なるかな、貴方が酔っぱらってた原因がなんなのかくらいは」
「そう? コレ何?」
そう言って彼女は映画何かで、酔っぱらいか、雪山遭難者が持っているだいたいウィスキーが入っていたりする金属製の水筒を手渡してきた。
取り敢えず受け取り、蓋を開けると中身はほぼほぼ無く酒の匂いがした。蓋を締めて底を見たりもしたが特段何も書いていない。
「この水筒にはアルコールが入ってたと思うけど、それ以外に何も手がかりはないね」
「そっか」
そう言いながら、彼女は購入したアイスコーヒーをストローですする。
「……何も思い出さない?」
「……あっ」
「どうした? 何か思い出した?」
そう言った僕の顔を見ながら彼女は両手を腹部に添えている。腹に何かあるのだろうか、そう思い腹部を見てみる。……子供がいたりすのだろうか?
「お腹空いたなぁ」
そう言いながら、申し訳なさそうに僕をちらちら見てくる。
……逆にお腹が空っぽのようだ。
「…。」
「空いたなぁ~……」
何度もそうのようにもう何度、何度も言いそうな雰囲気を醸し出すので根負けし、「……良かったら何か食べる?」と尋ねた。
7・19時に投稿します。気になったチェックしてください。
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