サークルの姫
「はい、検査結果問題なし。では、退院して下さい。変態さん」
「ありがとうございます。その節はすいませんでした!!」
そうソエギ女史に昨日よりだいぶ冷たい視線を向けられながら、乾いた笑いで回答し、頭を下げて、退院の支度を進める。
昨日の真夜中のナースコール事件(実際にはナースコールは押していない)はソエギ女史にももちろん伝わっているようでかなりプリプリと怒りを露わにしているようだ。
故意ではなかったがかなり反省はしていると同時にキドへの怒りは昨日の比ではないほど大きくはなっていた。
玄関へ至る道のりに何度も何度も病院でお世話になった人々に謝罪の言葉を言い続け、自分の足で退院した。
病院を出て、病院関係者に聞いていた最寄り駅に向かい歩るこうとしたとき、玄関近くに止まっていた車がこちらに向かってヘッドライトを一度点滅させ近づいてくる。
一瞬、身構えるが、車の運転席の人物がドアガラスを開き、車内から発せられた声を聞き、安心した。
「退院おめでとう、ミイラくん」
「ありがとうございます、部長」
大学の3年生で映画研究会の部長、円谷 紗織だった。部内ではキド先輩と同じ部の先輩の一人でシナリオライター兼監督もつとめ、身長が小学生からずっと前に並ばされたと自称する程低くく、それに相まって愛らしく見た目から通称、織り姫とも言われている。
「何かと不便だろうと思ったから車で迎えに来たよ、ミイラ君」
「おお、ありがとうございます。助かります。お言葉に甘えて乗せて頂きます、部長」
「うん、乗って乗って」
部長の言葉に従い車に乗り込むと彼女は両手に飲み物を持っていた。
「コーヒーと紅茶どっちがいい?」
笑顔でそう尋ねる部長はキド先輩とは違い本当に気遣いできるタイプの為、本当に部員から慕われている。
「じゅあ、コーヒーで、すいません」
「いいのいいの、快気祝いには安いかもしれないけどw」
「そんな、ありがとうございます」
「うん、元気そうで良かった、行こっか? ミイラ君の家ってこっちだっけ?」
「ああ、ナビ入れます」
そうして、部長の運転であっと言う間に帰路に着いた。
部長は話しがし易いのでつい映画関連の話で盛り上がった。
「そうなんだ、あんま見ないジャンルだけどミイラ君が言うなら、今度見てみるね」
「部長のお眼鏡にかなえば良いですが……、と、すいません。もう着いちゃいましたね。ホント、ありがとうございました」
「いや、いいんだ。私もミイラ君と話せて楽しいし……、それに安心したよ」
「?、……何か不安にさせることがありましたか?」
「まあ、今回の事件で映研を嫌いになっちゃわないかなぁと思ってたんだよね。その……」
「飲み会の後に襲われたからですか?」
「まあ、そだね」
「僕が言うのも変ですけど……、それは考えすぎですよ?」
「そうかな?」
「僕も含めて誰もこんなことが起きるなんて予想すら出来なかったんですから」
「まあ、そう言われちゃうとそうだけど」
「寧ろ、今考えると僕で良かったです。部長や他の女子部員とかだったらと想像すると怒りさえこみ上げてきます」
「そうなの? でも、私だってミイラ君がケガしたって聞いたときは驚いたし、心配したよ……もっと早く連絡も欲しかったし」
頭を下げながら素直に連絡が遅くなった件を謝罪する。
「その件はホントすいません。明日から映研に復帰しますんで」
「まあ、元気そうだからいいけどね。でも、ホントに明日からで良いの復帰?」
「はい!! 検査でもどこも問題なかったので、お願いします」
「分かった。というか助かるんだけどね。じゃあ、また明日ね。詳細はまた連絡するね」
「はい!! では失礼します!!」
部長の車から降り、彼女が見えなくなるまで手を振った後、2日ぶりの我が家に着いた。
7・19時に投稿します。気になったチェックしてください。
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