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黒と衝撃

 金属と金属がぶつかり合う音がし、闇夜に火花が散る。


 光と音の発生源には二つの影があった。


 一つは黒い革靴を履き、黒いカッターシャツに黒いネクタイを締め、黒い上下のスーツを着ている。

 そんな真っ黒な装いの上に黒いフルフェイスのヘルメットを被り、両手には黒いバイクグローブを身につけ、鉄パイプを二刀流で持っている。

 やや身長が低いが先ほどから、鉄パイプを振るう毎にブンブンと言うよりは、ビュービューというまるで暴風を思わせる音を響かせている……、鉄パイプがもしも人間に当たれば骨を粉々に砕きそうな絶対に近づきたくな雰囲気を漂わせた如何にも怪しげな人物。


 もう一つは、工事用の白いヘルメットに青い上下のユニフォームとその上から反射板の付いたベストを着ており、手には車両誘導用の誘導棒である通称ニンジンを持つ警備員のような姿をした二足歩行のロボットだ。

 出荷時から比べるとサビと塗料が剥がれており、現在進行形で鉄パイプで殴られ、ボディがボコボコの状態になりながらも両腕に取り付けられた赤く光るニンジンをライトセーバーのように振るっている。


 ニンジンの赤い光は上下左右に振られているが黒い人物は背中に羽でもついているようかのように縦横無尽に逃げ回り、時には反撃とばかりに、ロボットの身体に凹みを増やしていく。

 戦場となっている工事現場の囲いや機材等は激しい戦闘の所為で傷付き、見るからにボロボロになっている。


 そして、幾度目かの金属のぶつかる音の後、あまりに激しい動きで異常に熱を持った鋼のボディの所為か、ロボットの潤滑油が発火し、辺りに煙りと物が燃える嫌な匂いを発し、ロボットの動きが一瞬鈍った。


 ヘルメットの人物はその瞬間を見逃さず。右手に持っていた鉄パイプを空中に放り投げ、狙い通りの球をジャストミートで振り抜くプロ野球選手のように両手に持ち替えた鉄パイプをロボットの頭部めがけて振り抜いた。


 ロボットの顔面を捕らえた鉄パイプはカーーーーッンという甲高い音と共に折れたが、同時にロボットの頭部は胴体からねじ切られ、宙を舞い、ぐるぐると回転しながらグングンと高く飛び、工事現場の高い囲いを飛び越え、工事現場に設置されている緑十字の旗を飛び越え、場外まで飛んでいった。


 黒い人物は左手を高く上げ、折れた鉄パイプを手を振るうように振り回し、頭部を破壊されたロボットは膝から前方に崩れ落ちた。


 辺りは先ほどの戦闘が嘘のように静寂に包まれ、ヘルメットの人物はこちらを振り向く。


 一部始終を見ていた僕はヘルメットの人物に伝えた。


「あ、ありがとうございます???」


 ヘルメットの人物は僕の声が聞こえているにもかかわらず無視を決め込み、手に持った鉄パイプを引きずり、カラカラという音をたてながら、こちらに近付いてくる。


 僕は現在、頭部を負傷し、何者かによって地べたにうつ伏せにさせられていた。

 先ほどまで意識を失っていたが、目を覚まし、目の前に広がっていた光景は状況的に不審者を警備員が捕らえるようとして、逆に返り討ちにあったように見える。


 だがその光景を見た後に僕が発した言葉は不審者への感謝の言葉だった。


 ……果たしてこの言葉は適切なのだろうか?


 そんなことを考えていると黒い人物は僕の目の前で一度立ち止まり、僕の状態を確認した後、僕を跨いで視覚から消え、視覚外でガラスが割れる音が響き、更にガサゴソという音が鳴った。


 また、ヘルメットの人物の足音が近付いてきたと思った瞬間。


 僕の口元は布のような何かで塞がれ、締められる。布は鼻を覆い、目を覆いと徐々に顔を浸食し、ついには顔全体が覆われた後、解放された。


 わずかにある布の隙間からヘルメットの人物をのぞき見ると、何度もこちらを見、頷いているようだった。

 

 そうして黒い人物は僕を弄んだ後、僕の首もとを掴み持ち上げようとしたところで、建設現場の外からパトカーのサイレンの音が聞こえた。徐々にこちらに近付いてきているようであった。


 黒い人物は、その音を聞いた瞬間、僕の首から手を離し、急いでその場を後にして消えた。一瞬こちらに振り返ったがそのまま走り去る。


 僕は立ち去るバイクの排気音のような音を聞いた後、再び訪れた静寂に安心し、いつの間にか意識を手放した。



 僕が次に意識を取り戻した瞬間、見知らぬベットにいた。服は白い病院着に着替えさせられ、頭部に触れると包帯が巻かれていた。首を捻るとやや痛みを感じたがそれを我慢し、辺りを見るとベットの隣には袖机が置かれており、そこには花瓶に活けられた花と僕が持っていた鞄があった。


 携帯端末スマホの存在を思い出し、鞄を引き寄せ、中身を探り、携帯を取り出す。


 携帯を立ち上げると昼の12時35分という表示と共に鬼のような数のメールと着信履歴が確認出来た。


「……まずい」


 と、こぼして、ため息をはいた。


 気が重いとは思いつつも、着信履歴にあるバイオハザードマークをあえて付けた人物にコールバックをしようとした瞬間、「ミイラさぁーん」という声と共に病室の扉をノックする音が聞こえた。

 声に反応をしつつも、しばらく黙っていると声の主は「ミイラハヤトさぁーん、入りますね」と言った後、僕のいる部屋に引き戸を開け、入ってきた。


 コツコツという音を響かせ、声の主はこちらに近付いてきて、突然ベットを囲っているカーテンを開き、こちらを見ている。


「起きてらしたんですね、ミイラさん?」


 そう発言した人物は顔の上半分には横に長い四角形のバイザーを付けており、見た目20代位に見える看護師型の女性アンドロイドだった。

暫く朝の7時に投稿します。気になったチェックしてください。


面白いと思って頂けたら、嬉しいです。


道 バターを宜しくお願いします。


他にも作品をアップしています。


作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかりますw

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