名前のない友達
早乙女 佳代子 17歳
という設定が何となくあります。
信じるってなんですか
安心ってなんですか
それを与えてくれるあなたは
誰ですか
人の顔色を伺って、自分の立ち位置が分からなくて
上辺の笑顔に淡く胸を踊らされ、見えない視線に深く肉を抉られ、それでも必死に演じ続けるピエロ
いつからだったか下駄箱に入るようになった手紙をなんとなく引き出しにしまっていた
「大好きだよ」
「君は僕の大切な人だよ」
「ずっと一緒だよ」
「いつか迎えに行くよ」
「僕を忘れないで」
「永遠に愛してる」
いつもひとことずつ書かれた白い飾りのない便箋
小さくて、不揃いの文字
名前のない手紙
ギラギラした頭痛が、ほんの少し、柔らかくなる気がした
今日は珍しくうまくいった
私は多分間違えなかった
目まぐるしい迷い道
何が正しいのかわからない、手探りの獣道
ある日昼休みに屋上で、フェンス越しに下を見ていた
ただ見ていた
このフェンスを越えて、一歩前へ進むと、私は飛べるのではないか
下へ落ちて血飛沫をあげる肉体を見ながら大きな羽根を揺らして、どこか遠くへ行けるのではないかと思った
「行かないで」
翌朝、下駄箱にそのひとことが書かれた便箋
「君を守りたい」
誰かが私を見ている
誰かが私を知っている
怯える私を知ってる
疲れた私を知ってる
孤独な私を知ってる
あなたは誰?
期待してはいけない
名前も言わない人だから、きっと現れることはない
それでも続いていくそのひとこと達は私のギリギリな自己認識を、ほんの少し温かくしてくれた
「君は誰よりも強く美しい」
私は誰よりも弱く醜い
「君は自由だ」
私は何もかもにがんじがらめだ
「抱きしめたい」
姿を見せないくせに
的外れな言葉達
あなたにはどんなふうに見えてるの
馬鹿にしたくなる、見下して、めちゃくちゃにしたくなる
でも
「君と死にたい」
時折見せる、鋭利な誘惑
これ以上は望まない
だから、ずっと私を見ていて
甘い言葉で私を守って
いつかは終わるなら、私はそれとともに消える
だから、これからもずっと、私を見ていて
お願いだから
名前のない友達
つまらないものをこれからも時々投稿しようと思います。
誰かの目の前に現れたら、そっと見守ってくれると嬉しいです。