発足!その名は!
※この物語はギャグです。あらすじは関係あるけど無視していいです。細かいことは考えずに読んでね。
「あの、王様、今なんと?」
天啓堂と大きく掲げられた豪奢な扉の前で、みすぼらしい格好の初老の男が口に人差し指を立てて青年の言葉を遮った。
「大きな声を出すではない。大臣どもならばともかく、貴族の連中の耳に入っては内乱に発展しかねん話じゃ。第七教会の懺悔室で詳しい話をする。先に行っておれ」
「は、かしこまりました」
◇ ◇ ◇
「と、いうわけで私たちはハズレスキルというものを考える会を結成するという結論に至ったのです」
「ごめん話が全く頭に入ってこなかったか、もしかしたらそもそも言ってないかもしれないから最初から詳しくしっかりねっとりもれなく聞かせてくれるかな?」
幽閉塔に呼び出された俺は、とうとう世俗から隔離されて実験台にされるのかと戦々恐々でこいつの到着を待っていたのだが、聞かされた話は全く意味のわからないものだった。
「ですから、魔王軍が攻めて来ているのですよ」
「それは知ってる」
「前線が押し下げられて最終防衛ラインの手前まで来ているわけです」
「そんな気はしてたけど知りたくなかった」
「次を破られたら世界が終わるわけです」
「え、この国が世界の最後の砦だったの」
「で、ですね、実はこの国は大地の女神様の守護下にありまして」
「あれ迷信じゃなかったのね」
「伝家の宝刀とも言える秘儀がありまして」
「ほう」
「なんと、異世界から勇者を呼ぶことができるのです」
「早くやれば良かったんじゃね?」
「しかしながら呼ぼうとするとですね、この国自体が召喚陣となっておりまして」
「ふむ」
「強力な能力を持たせた勇者を召喚すると国が吹っ飛ぶのです」
「本末転倒だな」
「主に国庫的な理由で」
「金かい!」
「それでですね、女神様に値下げを打診しましたところ」
「せこい国だわ」
「条件次第ではということでしたので」
「応じるんかい!」
「勇者に付与するスキルを可能な限りしょぼ、抑えることでなんとかできると」
「今しょぼいって言ったな?」
「そういうことで、世の中の役に立たないことに精通していそうなあなたを中心に人を集めてハズレスキルを考えていただき、その場凌ぎの勇者を召喚しようという魂胆でございます」
「ごめんなまだ見ぬ勇者、こんな国に呼ぶことになっちまって……」
一通りの説明を聞いて目頭が熱くなった気がした俺は泣き真似のポーズをするも、ふとあることに気づく。
「何で俺?」
「ですから世の中の役に立たないことに精通していそうなので」
「オブラートと言わず餃子の皮ぐらい厚いので包んでから言ってくれないかな?」
「ギョーザとはなんですか?オブラート?」
「あ、気にしないで」
正面切って真面目な顔で役に立たんと言われた俺のメンタルはまだ玉ねぎの皮一枚といったところだ。次剥いたら泣くぞ。
「そもそも勇者になんでスキルいるの」
「どうも召喚上、異世界の性質の存在をこちらに繋ぎ止めるにはこちらの世界のルールを付与しておかなくてはならないようでして」
「なくなるとどうなるんだ?」
「元の世界に強制的に戻されますが、端的に言うと死ぬそうです」
「ごめんな勇者……」
「戻った瞬間即死するそうです」
「なんで2回言ったの」
「そのため、簡単には外れなさそうなハズレスキルを考えていただきたいと」
「外れないハズレスキルってなんなんだよ」
「私もここに来るまでの間一通り考えてはみたのですが」
「参考までに聞きたいな」
「まぁ私の仕事じゃないのでやめました」
「世界の危機!世界の危機!」
「なんで2回言ったのですか?」
「声を大にして何度でも言いたいわ!」
「すみません、一応国家機密になりますので内密にお願いします」
「ああもう!」
こうして、登場人物の誰一人として名を明かさぬまま俺の物語は始まった。
「この幽閉塔は今後自由に使って頂いて結構ですが、国家機密であるのと同時に出入りするものがある以上目立ってしまいますので、ダミーの看板を設置させていただきます」
「ほう」
「こちらです」
『ハズレスキル研究会』
「恥ずかしい!!」