第九話 ボクと契約して錬金術師になってよ
10/23 内容リメイク
◇ ◇ 拠点 錬金工房 ◇ ◇
一日経過して錬金術だけのレシピを購入して来た。
全部失敗レシピだけどね。
「ホムラ、それが例の失敗レシピ集?」
「そうだよ。この中から使える所を抽出して学習していくつもりだよ」
「それ、難易度高いと思うよ?」
だろうね。
普通に学習するよりも面倒なのは事実だよ。
でも何故か錬金術の本が流通してないからここから探り当てるしか無いんだよ。
「・・・・・・私も手伝うよ。薬関係なら知識があるから読み取れそうだしね」
「それじゃあよろしくお願いするね」
「うん、よし! 頑張るぞ! ウチはこの中からレシピを調べ上げていくな」
フィルが本気になったからか口調が変わった。
スイッチ入ると口調が変わるんだよね。
一人称も私からウチに変わるしね。
そう言う性格なんじゃなくて自分の中で切り替えるために意図的にしているっぽいけどね。
「それじゃあやっていこうか」
私達は設計図の解析を始めた。
数を読み込んで理解を深めていかないとね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「う~ん、結構難しいけど何となく分かってきた」
少なくとも付与の法則と付与の文字の種類なんかは大雑把に把握した。
これなら簡単な付与なら出来そうだ。
でも、これが正しいかを確かめるためにも簡単な付与を試してみるのが一番早いね。
錬金術の本で修正したはいいものの対応する文字が見つからなくて付与できなかったもので試してみるのが良いかもしれない。
試しにやってみよう。
作るのは魔力を流すと光る硝子という単純な照明器具を作り出す付与だ。
肝心の光らせる所が盛大に誤植されてて機能しなかったんだよね。
なんでこんな欠陥錬金術本しか手に入らなかったのか疑問に思うよ。
誤植の部分を変えてっと・・・・・・
それじゃあ起動開始!
「うわ、光った! 成功したんだね」
「うん。上手く行ったよ。とりあえずこれは正しい付与文字ってことだね」
この調子で失敗レシピを修正して付与の知識を深めていこう。
ちゃんとした付与のレポートなんかも今後のためにまとめて本にしておこう。
修正したレシピもね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一週間が経過した。
午前は錬金術の研究、午後は戦闘訓練を繰り返しているうちについに錬金術のレシピ全てを閲覧完了した。
付与文字も大体出てきた。
「さて、とりあえずこれだけの付与文字があれば簡単な錬成陣を作れそうな気はするね」
「ウチはそうは思わん。なんせ、肝心の錬成陣の基本的な作り方が分からんもんな」
確かにその通りだ。
簡単な錬成陣の作り方すら分からなきゃ意味が無いね。
一から構築するにはまだ経験が不足してるからね。
錬成陣のベースさえあればな・・・・・・・
◇ ◇ ファストクラフトの街 訓練所 ◇ ◇
私は錬成陣をどうするか考えつつ訓練所に入った。
今日は久しぶりにダイアルが訓練所に来ていたみたいだ。
先週教えて貰ってから訓練所には来てなかったからね。
「久しぶりだね。訓練は順調かい?」
「訓練は順調だよ」
「その口ぶりだと錬金術の方はどん詰まりってところかな?」
戦闘訓練は順調だ。
あと少しでモンスターに勝利できるレベルまで鍛えられたからね。
まあ、まだまだ厳しいものはあるけど。
「ところでダイアルはこの一週間何処行ってたの?」
「遠くまで行って試練受けてきた。地味にやっかいで面倒な試練だけど得られる報酬だけは凄まじいから受ける価値があるんだよな。まあ、試練内部がタチ悪い状態になっていたせいで達成できずに戻る羽目になったわけだけど」
うわ、成果上げられないで戻る羽目になったんだ。
ダイアルもなんだかんだで上手く行ってなかったんだね。
「タチ悪い状態って?」
「試練どころじゃない状況になってた。今のボクじゃ手が付けられないから試練中断して戻ってきたんだ。どうにかするためにセカンドフォートで錬金術の教本買おうとしたら全部売り切れててな。ひょっとすると誰かがあちこちの街で錬金術の本買い占めてるんじゃないかこれ?」
セカンドフォートにならあるっていってたけどそこも無かったのね。
というか誰かに買い占められてたんだ。
だから役に立ちそうに無い錬金術の本しか残されてなかったわけだね。
「ホムラは錬金術は順調かな? 失敗レシピの中に目的の物が見つからないとかだったり?」
「一応ある程度学習を終えて錬成陣を作ろうかって段階まで来たんだけど・・・・・・どうやって作ったらいいか見当が付かなくてね」
試行錯誤したけど上手い具合に行かなくてね。
付与文字が足りてないのかな・・・・・・
「なるほどね。失敗レシピの中にあるんだけどハズレ引いたって所かな?」
「ハズレ? まさか失敗レシピの中にあるってこと?」
「そういうこと」
って事はあの254のレシピの中に無かった訳ね。
運がなさ過ぎる。
「・・・・・・よし! 良いこと考えた。ボクと契約しない?」
「契約?」
一体何の契約だろうか?
「怪しい契約を迫るのは無しでござるよ」
「怪しい契約じゃ無いよ。純粋にこんかい挑んだボクの試練の手伝いをいつかして欲しいって話だよ」
「試練どころじゃ無いことになってる試練に?」
確かそれがきっかけで錬金術の本を探しにいってたんだよね。
だとすると錬金術を使って欲しいのかな?
「ボクは錬金術を学んだところでまともに使いこなせないからね。ましてや教本無しに一からとなると無理だ。根本的に才能が無いからね」
適性があったところで才能がなければ使いこなせないってことね。
出来るだけやってみるかみたいな感じで本を買おうとしたら無かったってことなんだろう。
「なるほどね。それを提案するってことは・・・・・・」
「ボクが持ってる錬金釜と数冊しかないけどまともな錬金術の本を進呈するよ。ちなみに試練に挑むのは八月末までにだね」
「時間を定めるんでござるか!?」
「試練の内側にとどまってるうちに何とかしないと手遅れになりそうだからね」
手遅れになるってことは試練そのものが崩壊するのかも知れないね。
錬金術さえあればどうにかなるってことだろう。
「あ、ここで決めなくて良いよ。君の工房主のシャウラの所にも話持っていくから皆と相談して決めてくれれば良い」
シャウラのこと知ってるってことは既に面識があるんだね。
確かにちゃんとした工房間の契約だし相談無しに勝手に受けるわけには行かないよね。
「しかし、それならプレイヤーでは無いクラフターの錬金術師を雇えば良いだけじゃ・・・・・・」
「アハハ、オボロちゃん。君はクラフターの錬金術師を雇うのがどれだけ難しいか知らなかったりする? それ加えて今は錬金術師のクラフターを誰かがかき集めてるらしくてとてもじゃないけど雇えた物じゃ無いんだよ」
「クラフターの錬金術師ってそんなに希少なの!?」
てっきりもう少しいると思ってたけど・・・・・・
「希少だよ。元々錬金術を始める敷居が高いのもあってね。正直言ってなりたいって人を雇って育てた方が早いレベルだよ」
錬金術って敷居高いんだ。
そこまで高そうに見えなかったけどね。
「不思議そうな顔してるね。鍛冶師とかと違って大きな施設は必要無いけど明確な知識とセンスが必要なのが錬金術なんだよ。鍛冶師なんかは最悪知識無くてもやり方さえ知ってればどうにでもなるけど錬金術は違うからね。変形術にしたって明確な知識が無ければ行使できないんだよ?」
そうなのかな?
変形術はそうでも無さそうだったけど・・・・・・
「物体を変形させる変形術は違うと思ってるかもだけどそれも必要なんだよ。力を通して理解するってことはそれを導き出せる程の知識が前提としてあると言うことなんだからね」
あ、そうか。
変形させるのにも知識が必要なのね。
確かに完成形がイメージできてないとまともに作れないもんね。
だからこそ錬金術師のクラフターは少ないんだね。
だとするとプレイヤーとの契約ってのは悪い手では無いのかな。
クラフターのNPCを雇い続けるのはダイアルにとっては厳しいだろうしね。
帰ってシャウラ達に色々と相談だね。
契約出来れば錬金術も進むしね。
ダイアル「ボクと契約して錬金術師になってよ」
ホムラ「碌でもないマスコット風に契約迫るのはやめて欲しいな」
オボロ「どういうことでござる?」
ダイアル「ただのネタだから気にしなくて良いよ」




