第五十八話 シャウラの秘密
◇ ◇ 幻想迷宮 ◇ ◇
「ねえ、アンノウンって一体何? コクウもそうみたいだけど私知らないんだけど・・・・・・」
「あ、そうか。ホムラは・・・・・・・・・・・」
ん?
なんか、聞き取れなかった。
「コクウ、今なんて・・・・・・」
「コクウ。ホムラにあまりその話題は出すな。記憶を中途半端にしか思い出せてないホムラにこの事について触れるのは危険だ。疑問に関しては後で答えてあげるから、ホムラの前でその話題を出さないように」
シャウラが何かしらの方法で遮ったのね。
何を言いかけたのか凄く気になるけど、シャウラは結構頭が良いからね。
意図的に私にかつての情報を与えないのは、何かしらの影響を危惧してらしいからね。
出来るだけ自然に記憶を取り戻させた方が良いとのことらしい。
ワードで記憶を取り戻させるのも、本来ならいいはずなんだけどね。
多分、さっきかなり記憶を取り戻しているから自覚してないだけで結構負担がかかってるんだろうね。
だからこそ、シャウラは止めたんだろう。
「・・・・・・察し良すぎるのも考え物だね」
そして、私が察したことが普通にばれてた。
シャウラは察しが良すぎるよ。
「ところでアンノウンって?」
「さあ? 正体不明だからこそアンノウンだしね。何かしらの代償を背負って絶対遵守の力と一つの凶悪な力を持って生まれてくるってことと、母親か父親のどちらかが絶対遵守の力を持っていると生まれることがあるって事くらいしか知らないね。それ以外何も分かってないんだよ。どうしてそういう力を持って生まれるのとか何もかもね」
シャウラも分かってないんだね。
自分自身の事ならてっきり知っていると思った。
「シャウラの力ってひょっとして周囲を堕落させるとか?」
あ、そうだよ。
コクウの代償が感情燃動力炉による常に自身の感情を奪われ続けることだしね。
シャウラも非常によく似てるし、対象の活力を奪うなにかがあるとか?
「残念ハズレ。後付けでえた超越能力で私の疲弊を押しつけることは出来るけど能力は別物だよ。普段見せている強靱な思考能力だよ。体は疲れていても頭だけは決して疲れることは無い。無数の情報を処理することの出来る。自分自身は動かず相手を動かすというまさに、一見すると怠惰にしか見えない能力が私の力だよ」
「体は禄に動かないのに頭だけはずっと疲弊せず動き続けるって地獄過ぎるだろ・・・・・・デメリットがでかすぎじゃないか?」
「だね。普段動けているのは、これを相殺する術があるからだしね。他に何かがあるのかも知れないけど、それは私も知らない」
トリューの問いかけにシャウラは答える。
デメリットしか無いよね。
コクウのは恐らく感情を変化させ自分に還元することができるけど、シャウラはただ単純に思考能力が拡張されただけ。
恐らく、物理的に考えることが出来ない状況にでもならない限りは何をしたところで思考能力を止めることは出来ないとかのメリットはあるんだろうね。
考え方によっては逆にデメリットかも知れないけど。
「なるほどね。多分、隠された能力はありそうだね」
「あるだろうね。最も、何なのかは予想が付く。でも、使う気にはなれん。使わない方が良い。君のそれも使うと危ういでしょ?」
「・・・・・・あ~、何となくどういう能力なのか分かった気がする。確かに危ういね」
私も察した。
シャウラは司令塔みたいな感じになっている。
でも、指令を出す兵士もセットになるはずだ。
つまり、シャウラのもう一つの力は兵士を生み出す力だ。
そして、危ういというところから考えると兵士は洗脳した生き物ってなる。
思念で常に変わる戦況を認識し、それをリアルタイムで指示をだしていく。
自身は安全な場所でのんきに寝ながらゲームでもしているかのように戦場を支配する。
それこそがシャウラの力の真骨頂なんだろうね。
というか、寝ながら指示を出すのは今もやっている事だしね。
小ホムラみたいなのがあるんだ。
リアルタイムで指示を出すなんて普通に出来るだろう。
使えば使う程、認識する事柄に現実感が無くなり平然と捨て駒なんかを作り出す。
無感情に無作為に、チェスや将棋なんかでやるように。
コクウのそれも危ういけど、シャウラのもそれと同じくらい危うい。
一歩間違えてたらシャウラは人類の敵になっていた可能性が十分あり得る。
「危うすぎるだろ。災厄をもたらすようなら・・・・・・」
「安心して良いよ。私はその力は手に入れたとしても使わないだろう。使ったとしても相手を操るようなことはしないさ。この力を与えた奴がいるなら、そいつの思い通りになりたくないしね」
あ、そうか。
リアルタイムで指示を出したりする機能が間違いなく備わっているから、便利な機能だけを使うというのもありなんだろうね。
でも、シャウラは使う気にはならないんだ。
なんか、誰かと同じようになりたいから意図的にその力は使わないと決めている感じがする。
「それじゃあ、この話はおしまい。とりあえず、ホムラ・・・・・・幻想の書を手に入れたんでしょ?」
「そうだよ。本契約まではしてないけどね」
「私はある程度回復した。今の内に本契約済ませておいた方が良いよ」
シャウラは立ち上がって通路の奥を見た。
モンスターが入ってこられないようにしてあるはずなのになんか妙だ・・・・・・
モンスターが付近でうろうろとしている。
「君が作った錬金道具に負荷をかけて壊す気だよ。製作技術を万全に使えないクラフターが修理することなんて出来はしないと思ってるんだよ。実際、完全に壊されたら修理出来ないでしょ?」
「確かにそうだね」
壊れてなければ修理は出来るけどね。
にしても、意図的に負荷をかけて迷宮を縛る錬金道具を破壊しに来たってことなんだね。
モンスターというよりも、私が進入許可を出した者以外はここに入ってこられないようになっている。
入ってこられないようにするから侵入しようとすればはじかれる。
その弾く過程で錬金道具に負荷がかかるんだ。
何度も弾かれるように体当たりを仕掛ければ相応の負担がかかる。
何度も何度も弾かれてたらそれ相応の負荷が錬金道具にかかる。
そうなると壊れるよね。
さすがにそこまで頑丈に作ってないから壊れてもおかしくない。
というか、これで壊れないようにする素材なんて持ち合わせてないからね。
「ホムラ、負担が掛かるなら頑丈にするんじゃ無いよ。他にも方法はあるはずだからね」
「負担が掛かるなら頑丈にするんじゃ無い?」
多分、道具製作のアドバイスなんだろうね。
頑丈にするだけじゃ無くて・・・・・・ああ、そうだよね。
壊されかたが壊されかたなんだし頑丈にするだけが正解じゃ無いんだ。
本契約済ませた後に改良してみることにしよう。
《それじゃあ、始めるよ?》
《いつでも良いよ》
私が幻想の書に触れると本がピカッと光る。
そして、私自身が本に取り込まれて・・・・・・いかないね。
あれ? ザフキエルって人を見ると本に取り込まれるんじゃ・・・・・・
《いささか不思議な形になったけど契約完了だね。驚いたよ。幻想の書に取り込まれない形の契約ってあったんだね》
《普通は取り込まれるの?》
《普通は幻想の書が本体になるからね。これだと、幻想の書を自身の一つとして扱っているって感じになってる。でも、使用には特に問題は無いかな。私の想像以上に契約が早く終わったしね》
時間掛かるって話だったけど、ここまで早かったのはイレギュラーなのね。
とりあえずは契約は無事に完了して幻想の書の力を万全に引き出せるようになったみたいだ。
《とりあえず、これでもう一度生産技術の適性の縛りを緩めるよ》
《ちょっと待って。今の適正レベルで試作してから、作れると確信してからだよ》
契約したから、ソニスの手助けで適性を緩められる回数が増えた。
でもせいぜいあと数回だ。
さらに、さっき製作技術の縛りを緩めたことで向こうも万全に対策しているだろうから製作途中に緩みが切れる可能性がある。
つまり、一度の製作で何回も適性を緩めないと作れないかも知れない。
だから、一回作れたら終わりの可能性が極めて高い。
そのことを考えて、試作して手早く作れるようにしておこう。
シャウラ「あ~本気で体がだるい。うっとうしいんだよね君達」
操られモンスター共「グベラギャァ!?」
メタトロン「何なんだよあの半分女! 適性をさらっと無視しやがってよぉ!」




