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第五十話 操りモンスター

 ◇ ◇ 謎の迷宮 ◇ ◇


「ギュガガガガ」


 頭にわっかの付いた牛だ。

 目は血走り白目を剥いている。

 よだれはだらだらと垂らしていて、明らかに正気ではないのは明白だね。


「何あのわっか?」


「知らん。だが、碌なものでは無いのは確かだろう」


 どう考えてもあのわっかが怪しい。

 でも、私の見立てでもどういう代物なのかさっぱり分からない。

 要するに未知の物質だ。

 解析しないと何なのかが分かりそうに無い。


「ホムラ。あのわっかを解析出来そうか?」


 解析ね。

 適性値が制限されたとはいえ出来ないことはない。

 でも・・・・・・


「倒した後、アレは残る?」


「消える。欠片も残さずにな」


 解析されることは相手も想定済だろう。

 倒した後に回収されないように消える。

 そうなるようにしていても何も不思議では無い。


《だろうね。アレは幻想の書の力によるものだと思うよ》


「ソニス!? 幻想の書の力によるものって、この本の力で編み出された力って事!?」


「本の奴がそう言ってるのか? マジかよ。本は特別な奴が認めた奴にしか与えられないはずだろ。なんでそんな奴がこんなたいそれた事をしているんだよ」


 特別な奴は試練モンスや領主などのゲームの舞台で重要な役割を持つ者が運営から権利を得て、初めて幻想の書を与える相手を選ぶことが出来るらしい。

 幻想の書を与えた相手は運営のトップとも言える人物が把握しており、動向をチェックしているらしい。

 世界に悪影響を与えてないかなど、そう言う確認だけだから詳しい日常までは把握されてないみたいだけどね。


「そうなると、私がこの本を手にした地点でこの状況は運営のトップに・・・・・・」


「無駄だろう。この空間はサバイバル系試練ほどでは無いが加速している。動き出すまでに何日かかるかわかったものじゃない。恐らくここでの一日が外の一分に相当するだろう。それに、運営側に味方が居るみたいだし、いくらトップとは言えど簡単には動き出せないだろうな。最低でも外で数時間経過しないと・・・・・・」


 てか、本の件が無くとも流石に気が付いてるとのことらしい。

 そりゃそうか。街一つ巻き込んだ事件だしね。

 にしても、運営に近いトリューがそういうってことは運営側にこの事件を引き起こした奴が居るのは確定なんだね。


 私は軽くモンスターを生かしたまま壁に磔にしつつそう考えた。

 トリューはどん引きしてる。

 対話してたらいつの間にか生かしたまま壁に貼り付けにしてるし当然か。


「【ケサン】は使わないのか?」


「どうせ大量に収納してあるからね。何度も【ケサン】言ってたスピードが足りない」


《ついでに、呪文強度も不足しているから最大で十本までしか召喚維持出来ないよ》


 知らなかったところにも補足を入れられた。

 ってことは、結局の所仕留める前提でしか使えないんだろうね。


「さて、とりあえず解析・・・・・・ん?」


 バキンとわっかが砕けた。

 その瞬間、モンスターがぐったりとし始めた。

 というか完全に息絶えてるね。


「なるほど、束縛して解析することにも対策をしてあるって事ね」


「えげつないことを・・・・・・何処まで行っても道具としか思ってない扱い方だ」


 道具だから、殺害することに躊躇無いんだろうね。

 にしても・・・・・・


「ソニスはこの呪文の力に心当たりは無い?」


《あるよ。多分フィセラの力だ》


 フィセラね。

 普通の呪文では無いのは確かみたいだ。


《フィセラの力は十個ある。その中にあるんだよね。悪用すれば他人を支配出来る代物が》


「そんなものがあるのか!?」


 ソニスの言葉をトリューも理解出来るように復唱した。

 その言葉にトリューは反応する。


《【メタケテル】って名前の力でね。能力が祝福の王冠だったかな? 自分の力を他人に分け与えるって力なんだよ》


「自分の力を他人に・・・・・・なるほど。悪用だな」


 自分の力を他人に与える。

 つまり、自分が支配出来るように力を強制的に分け与えるって事なんだろうね。

 自分の力だから分け与えた相手を強制的に動かすことが出来るとかそういうところだろうね。


「どうやったら解除出来る?」


《出来ないよ。だからこそタチが悪いんだよ。今持ってるのは私の知っている奴から変わってなければ、天使騙りのメタトロンかな》


「メタトロンか。確かに天使の名を騙ってるな。メタトロンって天使が居ることしか知らんが」


 たしか、結構高位の天使だったはず。

 セフィロトの樹の第一セフィラの守護天使だったかな?

 メタ(トロン)+ケテルでメタケテルって所だろうし、フィセラの大本はセフィロトの樹のセフィラをモデルにしているんだろうね。

 というか、セフィラを並び替えただけだしね。セをフィとラの間に挟んだだけだし。


「それじゃあ、メタトロンって奴を倒せば良いのかな?」


《倒したところで元に戻るとは限らないけどね。そもそも、今の君等が戦うのは無謀過ぎるでしょ》


「だろうな。強敵だろうし、せめて仲間をかき集めてからだろう。どこかに居るはずだ」


 そうだね。

 オボロ達もどこかでさまよっているはずだしね。

 合流には偶然を頼る必要があるから闇雲に探し回らないと行けないけど、見つかるはずだ。


《・・・・・・ねえ、倒したモンスターの死骸を本に吸収させないの?》


「え? 本に吸収ってそんなこと出来るの?」


「本は記録媒体だからね。出来なくも無いよ。本契約してないならモンスターの死骸からエネルギーを入手させてページを増やしてくしかないよ」


 本契約を拒んでるのはソニスなんだけどね。

 とりあえず、言われたとおりに死骸を吸収させてみようか。

 モンスターの死骸を本に近づけると、フッと死骸が消えた。

 そして、呪文のページが一ページ増えた。


「何の呪文だ?」


「【スラシァ】だね。トリューが言ってた剣を振りまわす呪文みたいだ」


 試しに使ってみると、強化された一撃を自由な形で振ることが出来た。

 どうやら呪文を唱えてから数秒感だけ強化されるという呪文みたいだね。


「あと、剣なしでも使えるみたいだね。疑似的な剣が顕現されて振ることが出来るみたい」


《その分呪文の力も弱体化するけどね。でも、不意打ちとかでは便利だと思うよ》


 呪文を唱えないと行けない地点で不意打ちにはならないんだけどね。

 呪文を唱えて発動のプロセスに、脳内で呪文を発動するというトリガーを引く必要がある。

 唱えたら勝手に暴発しないようにするプロセスなんだろうね。

 だから、意図的にすぐに呪文を発動させずに待機させるとかそういう事も出来る。

 まあ、数秒程度しか待機させられないんだけどね。


「ってことは、前提が必要な呪文は無いって事なのか?」


《それはあるよ。事前にその呪文を唱えてないと使えない呪文なんかがあるしね》


 説明を聞くにどうやら、巨大ロボを召喚する呪文があるとして、その派生として巨大ロボに必殺技を発動させる呪文があるとする。

 当然必殺技を発動させるには巨大ロボが召喚されてないと行けない。

 だから、前提として巨大ロボを召喚する呪文を必要とするって感じらしい。


 呪文とは無関係な何かが前提となる代物は基本無いらしいけどね。

 肉体が欠損しているとかだと話は別らしいけど。


「案外色々あるんだな。まあ、本契約していないホムラには関係の無い話か」


《そうだね。本契約はしない方がいいからね。メリットはあるけど、デメリットも大きいからね》


「そのデメリットを教えて欲しいんだけどね」


《やだ。契約する気になるでしょ。人間ってメリットばかり見て致命的なデメリット見ないでしょ。これはその類いだ。だからいや》


 完全なる拒絶である。

 それだけ、ソニスにとっては本契約は嫌なことなんだろうね。

 まあ、契約出来ないなら出来ないで何とかするしか無いよね。

天使騙りの誰か「そんな装備で大丈夫か?」

メタトロン「大丈夫だ。問題無い」

操りモンスター「グハァ」

メタトロン「あぁ、やっぱり今回も駄目だったよ」

天使騙りの誰か「お前が言うのかよ」

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