第四十九話 ホムラの超越能力
◇ ◇ 謎の迷宮 ◇ ◇
さて、とりあえず幻想の書が使えるようになったのはいいけども・・・・・・
「どうやって使うの?」
《力を注げば良いんだよ。本契約してないから、常にエネルギーが注ぎ込まれてるわけじゃ無いんだしね》
なるほど。
エネルギーを注ぎ込むと。
とりあえず、陽光の力でも注ぎ込んで・・・・・・
《ちょ、ちょっと待って!? その力は本契約しないと処理仕切れない。別のにして欲しいな》
「なら、本契約しちゃおうよ。どうすれば出来るの?」
《・・・・・・本契約はやだ。どうせ、最後は同じ考えに至るしね。なら、危機を乗り越えたら解除出来る仮契約の方が良いでしょ。リスクが余りにも高すぎるからね》
断られた。
というか、リスクがあるんだね。
なんか、悲しみと絶望の気配を漂わせたからこれ以上は追求しない方が良さそうだ。
と言うわけで、普通に魔力や闘気とかを流し込んだ。
すると、本のページが記載された。
スキル一覧が数ページに渡って記載されて、それを超えると一ページ丸々と一つの呪文の詳細がかかれた呪文のページが一ページだけ記載されていた。
呪文名は【ケサン】・・・・・・何これ?
《【ケサン】・・・・・・剣を召喚する呪文だね》
「剣を召喚って・・・・・・意味が無くない?」
ストレージに収納してある剣を取り出せば良いだけだしね。
割と瞬時に取り出せるし、ほぼ意味ない呪文だと思う。
《召喚された剣は複製体だから、どれだけ破損させても良い代物だからね。だからかなり便利だよ?》
「複製体・・・・・・なるほど。確かに便利だ」
投擲に使うナイフは結構厳しかったからね。
時間掛けて作ったナイフを使うわけにも行かなかったから、量産品しか使えなかったりとかね。
これで複製出来るんだとしたら、かなり便利になる。
なにせ、容易には量産不可能なナイフを用意すれば、この呪文で何本でも召喚出来るんだから。
手に入れた呪文の詳細を説明すると、トリューは嫌そうな顔をした。
「ウヘェ・・・・・・お前のヤベェ投擲がパワーアップするのかよ。お前のナイフの雨は【熱鎖縛葬】すら逸らすからな。なんで、お前の耐性乗っかってるんだよって突っ込みたくなるよ」
【熱鎖縛葬】擬きを逸らすナイフね。
純粋に陽光の力を操れるようになったから、短時間だけ陽光の力を繋げるパスを作る為に髪の毛とか血を混ぜてるからね。
ほんのちょっとだけでも、逸らすだけなら耐えてくれるしね。
試練終わったら返却されるから、容赦なく使っても問題無いという理由もあるからね。
試練という環境下でだけで使えてた手段でしか無いのはどうかと思うけど。
「ってか、よく考えたら武技じゃ無いんだよな。まさか、アレは素であんな速度で投擲してるのか!? 的確に素早く、それでいてほぼ鎖に命中してるって頭おかしいだろ!?」
「小ホムラのバックアップありきだけどね」
流石にナイフの雨を的確に素早く投げるには、小ホムラの思考能力のバックアップが必要だよ。
格納空間の小ホムラは結構な数が居るからね。
動かさずに思考に回せば、技量不足でも先を読みながら戦える。
「てか、あのホムンクルスも大概インチキ臭いよな。超越能力由来だろ?」
「私、超越能力は持って無いよ?」
「んなわけあるか!? 目の前で堂々と【我が世界は進出する】使っておいて持ってませんはあり得ないだろ。ホムンクルス出したり収納したりしてるアレだよ! 知らずに使ってるのか?」
アレ超越能力なの!?
便利な格納空間くらいにしか思ってなかった。
「本当に超越能力なの!?」
「ああ、内なる世界と繋げるような代物なんて超越能力以外ではまずあり得ない。ましてや自覚無しで使えるとなるとな」
まさか、私が既に超越能力を持っていたなんて・・・・・・
ストレージとはまた別の側面を持つ便利な代物だけどね。
「しかし、よく考えたらお前って記憶失ってたんだったな。なら、忘れてても別におかしな話じゃ無いか。だとすると、割と結構な数の超越能力を感じたのも気のせいじゃ無い可能性があるな」
って一つだけじゃ無いの!?
「何個くらい?」
「さあ? 同じ代物の別の使い方って可能性も普通にあるからな。断言出来るのは三つ以上って所くらいだ。二つははっきりしているからな」
「何と何がはっきりしているの?」
「さっき言った進出世界と分体形成だな。正式名称は知らんが、そう言う力があるって事は知っている」
分体形成・・・・・コクウが言ってたあれだね。
コクウも名前知らない辺り、皆分体形成って呼びすぎて本来の名前忘れられてる感じかな?
私は既に持っていたからこそ、錬金術で偶然作り出せてしまったんだね。
使い方完全に忘れちゃってるけど。
そういえば、コクウが言っていた超越能力の中に【我が世界は進出する】ってのがあったよ。
コクウの錬金術師の母親が持っていた超越能力なんだろうか?
というか、進出世界って言いやすいね。
そっちで呼ぶことにしよう。
「じゃあ、使い方次第で・・・・・・強くなれる?」
「無理じゃ無いか? 理由は知らんが、超越能力が不完全に起動している感じがするからな。進出世界も自由に扱えてないんだろう? 本来、自分も内なる世界には入れるんだぞ?」
展開している自分自身が入れるの!?
小ホムラにしろ本体の私にしろ、展開していないと入れないよ。
まあ、そもそも格納庫・・・・・じゃなかった内なる世界の入り口の範囲が狭すぎて本体は入れないんだけどもね。
「って、そういえばトリューは超越能力持ってるの? 模倣とかじゃ無くて」
「俺の鎖は正真正銘超越能力だぞ。てか、超越能力を一つでも獲得した異質な特異個体がレアミッションの大ボスを務める訳だからな。影響を受けて自意識を獲得する際に手に入ってるんだよ。誕生の際に超越能力を獲得する種族もいるから別におかしな話では無い」
ちゃんとした手順を踏まずとも、特殊な経緯で手に入る可能性があるんだね。
でも、だとしたら・・・・・・
「それなら、なんで擬きに収まってるの?」
「擬き言うな。まあ、アレと比べたら擬きだけどな。単純な話、あいつがあの技の行使に使っているのは鎖を操る超越能力以外にももう一つ超越能力を行使しているってだけだ。最も、熱鎖縛葬には根本的に必要では無いが使った方が威力が上がるって類いの補助的な代物みたいだけどな」
もう一つ超越能力使ってたの!?
説明されてないけど、根本的に必要では無いなら説明するわけ無いよね。
トリューのが擬きじゃなくて、ダイアルの方が強化された【熱鎖縛葬】だったって話なんだろうね。
「じゃあ、トリューはどういう方法で【熱鎖縛葬】を使っているの?」
「俺か? 純粋に鎖に熱を走らせているだけだ。あいつみたいに一点に強力な熱を集中させて叩きつける何てことは出来ない。エネルギーロスの多い無駄な方法だよ」
そうなんだ。
だとすると、普段のあの攻撃手段はもう一つの超越能力ありきの代物だったりするのかな?
なら、私が推測している【熱鎖縛葬】の本当の使い方の方が良いんじゃ無いかな?
というか、この情報のおかげでもう確信が持てた。
私の推測は間違いなく当たってるってね。
「というか、そろそろ移動しようか。この辺、明らかに操られたモンスターとか出てくるからな」
「操られたモンスター?」
何それ?
というか、なんで操られているって断言・・・・・・いや、トリューは試練モンスだからそう言う感覚があるのか。
「見れば分かる。てか、来たぞ!」
トリューが指を指した方向に奇妙なモンスターが現れた。
頭には奇妙な力が宿されたわっかが付いていて、表情が明らかにおかしいモンスターが。
うん、これは誰がどう見ても操られてるって一発で分かるよ。
でもこのまま襲われるのはごめんだから容赦なく倒させて貰うけどね。
トリュー「あれ? ひょっとして俺レギュラーキャラ入り?」
作者「試練終わっても出てくるレギュラーキャラになりそうな感じはするね」
トリュー「よっしゃ! 試練終わったら出てこれないと思ってたけどそうはならないんだな!」
ホムラ「出番気にしすぎパート2」




