第四十八話 迷宮に飲み込まれた街
◇ ◇ ??? ◇ ◇
私は今日もいつもみたいに過ごすつもりだった。
朝ご飯食べて、戦闘系試練を全部やりつつ小ホムラに生産系試練をクリアさせ、その後はアトリエで色々と試行錯誤して作る。
そんな一日になると思ってた。
まさか、安全な街中でこんな事になるなんて思っても無かったんだ。
私は食堂でいつものように朝ご飯を食べていた。
その瞬間、拠点全体が揺れ始め周囲にひび割れができはじめた。
そして私は奇妙な場所に放り出されたんだ。
得体の知れない石畳の場所に。
まるでゲームで良く出てくるダンジョンみたいな場所だ。
何が起こったのかはさっぱり分からない。
でも、普通ではあり得ないことが起こったというのは確かだろう。
「一体何が起こったの?」
ステータスウインドウを出す。
奇妙なことにクラフターとしての適性が失われている。
全適性が封印されてる。
まあ、小ホムラの冒険者としてのクラフター適性がそのままだからどうにでもなるけどね。
「何が起こったのかは俺が聞きたいよ」
気が付いたらなんかうさ耳が生えた少年が居た。
・・・・・・なんかどこかであった感じがする。
初めて会ったはずなのに・・・・・・
「さて、明確に対話するのは初めましてだよな。さんざん戦いまくった仲だし、こんな姿になった俺が分からないわけが無いだろ?」
「もしかしてレイムチェラビドラゴン!? 試練のモンスターの君が何故そんな姿に!?」
既視感を感じるのも当然だった。
最近戦いまくってるからね。
毎日のように戦ってたらそりゃ分かるよ。
多少姿変わったくらいなら、気がつけるよ。
・・・・・・多少どころじゃないけどね。
「フルネームだと長くて言いづらいだろ。確か兎竜って呼んでたよな。兎をとって呼んで竜はそのままでトリューとでも呼んでくれ」
「分かった。にしても、何故トリューはこんな姿に? それに、何が起こったのか知ってるの?」
「知らないな。街全体がとんでもないことに巻き込まれたってのは分かる。あんたと戦いまくって自意識がはっきりしてるからか、レアミッションの試練モンスの俺も巻き込まれたっぽいな。姿に関しては、あのままだと活動しづらいから人化したまでだ」
なるほどね。
そんなこと出来たんだ。
にしても、完全に見た目はうさ耳生えた少年って感じだね。
私より背が低いのは正直意外だった。
「他の皆は何処に行ったか知ってる?」
「さあな。仮に分かってたところで、地形がコロコロ変わるせいで合流なんて夢のまた夢だろう。地形が変わった瞬間、お前が目の前に居たって感じだから偶然出会う以外で合流はあり得ないだろうな」
なるほどね。
だとしたら、仲間に遭遇するのも偶然に頼る必要がありそうだ。
「ところでトリューはどうするの?」
「お前についていくさ。何が起こるか分からんからな。クラフターの生産能力を奪うなんてこの世界のルールではあり得ない。確実に何かがあるだろう」
この世界のルールではあり得ないね。
そんなあり得ないことが今起こっている訳か。
つまり、チートあるいは運営が関わっているんだろうね。
まあ、運営の場合だと間違いなくルールに違反している類いの人だろうけど。
「ところで、トリューは元の姿に戻れるの?」
「難しいな。人になるなら兎も角、竜化には相応の時間がかかるし変身もポンポン使えるものじゃ無い。というか、人化を使ったばかりだからあと一時間近くは変身出来ないぞ」
竜になるのもそう簡単なことじゃないんだね。
となると、トリューの力を当てにするのはやめた方が良さそうだ。
竜状態だと凄く頼もしかったんだけどね。
「人の姿だと何処まで出来る?」
「【熱鎖縛葬】は発動させるまでに時間がかかる。とてもじゃないが、お前の【小星斬】みたいに手早く出せる切り札にはなり得ないだろう」
【小星斬】と違って反動無しに何発も出せるが、時間かかる地点で繰り出すのは【小星斬】以上に難しいだろうとのことらしい。
まあ、【熱鎖縛葬】擬きは相応の火力あるし、多少時間かかっても問題無い。
私の消耗を抑えて【小星斬】の使用回数を抑えること出来るしね。
「ところでホムラよ。お前は他の武技は使えないのか?」
「使えないね。使える気がしない」
まだ、明確に形に出来てなかったからね。
そりゃ昨日今日だし仕方が無いけどね。
「なるほどな。・・・・・・二度目に勝利したら渡すつもりだったが、今渡した方が良いだろう」
トリューはストレージかインベントリかは分からないけど、それに相応する所から一冊の本を取り出した。
表紙にはセフィロトの樹みたいなのが描かれている不思議な本だ。
「何それ?」
「幻想の書だ。貴重な代物なんだぞ。お前がバカスカ挑むせいで俺が強くなったから報酬として渡せるようになったんだよ。一年に一度限定だけどな」
試練のモンスターが強くなると報酬が豪華になるんだ。
知らなかったよ。
「そんなもの貰っちゃって良いの? 私はまだ試練達成してないよ?」
「問題無い。それは試練の達成の有無は関係ないからな。見定めた相手に渡す代物で試練とは何の関係も無い。俺が試練モンスだから試練で見定めてから、見定めた相手に渡そうとしていただけだからな。報酬は別の形で上がってるよ」
そして、トリューは私に幻想の書を手渡した。
本をめくるとそこには・・・・・・何も書かれてなかった。
というか全部白紙だ。
「・・・・・・何も書かれてないんだけど?」
「だろうな。最初は白紙らしいし、何かする必要があるんだろう。最も、資格が無ければ使えないらしいけども・・・・・・流石にお前が資格無しとは考えづらいからな」
資格が無ければ使えないのか。
ってことは、普通に私に資格が無い可能性があるね。
「でも、武技関連の話題でこれを渡したって事は何かあるんでしょ?」
「本に書かれた呪文を唱えると強力な技を放つことが出来るみたいなんだよ。炎の玉を放つ【ブイフト】だとか、強力な一撃を食らわす【スラシァ】だとかな」
なるほどね。
幻想の書にはそう言う力があるんだ。
なら、ちょっと試しにやってみよう。
「スラシァ!」
・・・・・・何も発動しない。
やっぱり本が白紙だから発動しないのかな?
「武器無しで【スラシァ】は使えないだろ。剣を振りまわす呪文なんだからさ」
・・・・・・どうやら、前提をちゃんとしていなかったらしい。
剣を振りまわす技なのに剣無しでどうやって発動するのって話だよね。
試しに剣を抜いて呪文を唱えてみたけどやっぱり駄目だった。
やはり、今の状態だと呪文は使えないんだろう。
どうしたものかとページ全体を右手でなでると、なんか本が光った気がした。
《全く、契約もしないで本の力を引き出そうなんて考えが甘すぎるでしょ》
「え!? 誰!?」
頭の中で誰かが語りかけてくる。
これは一体・・・・・・もしかしてこの本?
「幻想の書で何か変わったことがあった? 本の色が白から変わってるけど」
どうやら、トリューにはこの声は聞こえてないみたいだ。
てか言われて気がついたけど、本の表紙の色が変わっていた。
さっきは真っ白だったのにしっかりと色づいている。
《私の声は君にしか聞こえないよ。全く、無意識に仮契約できるなんてとんでもない適性だよ》
「無意識に仮契約? それに君は一体・・・・・・」
《私? 私は幻想の書に宿りし妖精の一人、ソニスだよ。仮とはいえ契約してしまったしこれからよろしく》
・・・・・・なんか、凄い不本意って感じがするね。
まあ、何も理解せずに勝手に契約しちゃったみたいだしね。
それも仕方が無いか。
こうして、この日を境に奇妙な場所の冒険が幕を開いた。
ソニス「旧作では無かったDEBANが来たよ!」
ホムラ「出番気にしすぎ。一章で打ち切り同然のファントムスカイオンラインの設定を完全に取り込ませたからね。元々登場人物がほぼ同じだったしね」




