第四十三話 矢避けを攻略するには
◇ ◇ 拠点 錬金工房 ◇ ◇
チョコ草もとい、コネクトグラスを手に入れてから一日が経過した。
私はあの後、騎士団にとらえられていた錬金術師の少年をシャウラに任せて道具作りに挑戦していた。
・・・・・・矢避けの結界。
今回は使う相手が色々舐めまくってたおかげでポンコツだったからまだどうにか出来る隙があった。
人質作戦にさえされなければそのまま殲滅できていただろう。
だけど、もし頭が良い奴に使われたら?
それに、モンスターが同系統の力を使える可能性もある。
いくら兎竜の試練の所みたいに適性値が50にならないからと言って、ほぼ的確に投げているナイフが逸らされるのはね。
私の持っている強力な手札がナイフ投げと武技【小星斬】だ。
【小星斬】は割と消耗が激しくて迂闊に使えたものじゃない必殺技クラスの武技だから気軽に使えないんだよね。
汎用武技よりも先に必殺技クラスを習得しているのは割とおかしいきもしなくも無いけど。
【長距離・切断術】は武技じゃなくて錬金技術の応用だしね。
まだ、オボロもコクウも武技を習得していない。
コクウは武技を持っているんだと思うけど、強力すぎて折れた槍じゃないと使えないんだろう。
あれ、異様に頑丈だしね。何故折れたのか分からないレベルで・・・・・・
どちらにしても、使えないわけだし持ってない前提で考えた方が良い。
武技が使えるのはレクトさんとドルフィスさんだけ・・・・・・
そしてそのレクトさんのメインウェポンは弓だ。
矢避けなんて使われたら攻撃系の武技を使えるのは私だけになる。
周りの冒険者がそんな体たらくでどうなんだとは思うけど、禄に冒険に出てない状況下で騎士団とかやっかいなのに巻き込まれるとは思ってなかったしね。
ちなみに、シャウラ曰く街の表通りを歩いている分には襲ってこないとのこと。
無実の人間を犯罪者に仕立て上げる行為が発覚した地点で、運営が本格的に介入してくるとのことらしい。
運営側にグルが居たとしてもどうにもならない事態になるから、戦闘者がアホやらかさない限りは襲ってこないとのこと。
むしろ襲ってくれた方が楽で良いとまで言ってたね。
運営側にグルとか根拠も無くシャウラが言うとは思えないからそのことを聞いてみた。
そしたら、街の近くで騎士団がドンパチして音沙汰無いのはいくら何でもおかしいとのこと。
間違いなく運営側に領主の仲間、あるいは領主を操っている黒幕が居るとのことらしい。
運営側が問題起こすような奴を領主にするとは思えないから、ひょっとすると操る装置か何かでどうにかしているんじゃ無いかとのことらしい。
騎士団がリーダー以外は意思を剥奪されて道具にされてるからね。
どうやら反抗的なまともな戦闘者の騎士は永久に意思を剥奪されるとのことらしい。
ダイアルが騎士団長含めた騎士団全員をシャウラに寄こしてきて発覚したとのこと。
なんでも、チョコ草原のヒミツの場所にある試練場で他のメンバーが挑んでいるのを待っている最中に襲ってきたらしい。
そして、返り討ちにされたあげく錬金術師含めた全員を捕獲されて今この拠点に放り込んでいるとのこと。
にしても、チョコ草原にまだ秘密があったんだね。
ざっと見た感じ草原しか無かったけど、どこかに洞窟とかあったりするのだろうか?
・・・・・・簡単に見つかる場所なら秘密とは言われないよね。
ダイアル曰く、今の私達には手に余る環境らしいので強くなったら探してみるのも良いかもしれない。
ちなみに騎士団員は錬金道具でその脅威をどうにか退けていたらしい。
錬金道具無しに騎士団が突撃したら普通に壊滅してたんじゃ無いかとのこと。
うん、そんな実力なのになんでダイアルに勝てると思ってしまったんだろうね。
普通に突破するどころか戦闘系の試練受ける程余裕がある人達が相手なのに、普通に挑めば壊滅するような騎士団が勝てるはず無いでしょうに・・・・・・
ちなみに、捕縛された騎士団の中で永久に意思が剥奪されてしまった者は医療室を拡大して全員寝かせてあるとのこと。
セルフィスが全力で治療のために色々試行錯誤しているみたいだけど上手く行かないみたいだ。
改造されてしまった脳を上手い具合に再生させる必要があるみたいだけど、脳は再生しないからね。
だからどうしようもないんだ。
脳を再生させる手段が無い以上はね。
典型的な戦闘者は馬鹿で愚か者で扱いやすいから意思を剥奪してなかったりするんだろうね。
私の所に来た騎士団は全員典型的な戦闘者集団だったみたいだからね。
メインはダイアルの捕縛で私達はあくまでもついでだったって所だね。
メインでは無かったにしても撃退して錬金術師を確保しちゃった以上は完全に目を付けられた。
今のままでは冒険に出た瞬間に襲われかねない。
対抗策を考えないと・・・・・・
とりあえずレクトさんの弓だよね。
これに矢避けの結界をぶち抜く力を与える。
そうするにはどうしたら良いのか・・・・・・
・・・・・・完全にネタだけど、アレを使ってみることにしよう。
渡したときのリアクションが微妙になりそうな代物になるだろうけど、一応ちゃんとした性能秘めてるからね。
素体はそれにするとして問題はどうやって突破するかだよね。
どうやって突破するか・・・・・・
って、直接作った本人に聞いてみる方が早いか。
彼は今、別室でゆっくり過ごしているしね。
この世界に繋がる前からあった実質閉鎖空間のもう一つの外にしか出られないからね。
今出るのは私達以上に危険だからね。
折角だし錬金術師仲間と意見交換でもしてみようか。
更に技術力向上の為にね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それで僕を呼んだわけですか」
錬金術師の少年、フラスくんはそう言った。
恐怖から解放された翌日なのに悪いとは思ってるけどね。
早いところ対策しないと不味いのは事実だし・・・・・・
「矢避けの結界は僕だけの力で作った代物では無いので、全ての構造は分からないですができる限り協力します」
やっぱりか。
重要な錬金道具の知識は中途半端にしか無いとは思っていた。
使い捨てにする気満々だったからね。
典型的な戦闘者の馬鹿は兎も角、そいつらを管理している奴は頭が悪くは無いだろう。
シャウラも黒幕が典型的な戦闘者みたいに馬鹿だったら、まだやりやすかったって言ってるくらいだしね。
死ぬか騎士団から奪還されて知識を共有される可能性も考慮しているから殆ど知識は無いだろう。
でも、使っていた道具の構造を全く知らないという訳では無い。
道具そのものも奪取してあるから、解析も出来るしね。
ロギロスが持っていってそれっきりだけど。
錬金術もいつの間にか使っているみたいだし、錬金道具だろうが解析は出来るでしょ。
持っていった理由は、ロボットに搭載させる気なんだろうね。
そこそこのサイズの代物だったしね。
フラスくんの背負っていたリュック全体がまさかの矢避けの結界を張っている道具だったしね。
アレを持ち歩くのは相当疲れるだろうね。
フラスくんも持ち歩くだけで結構疲弊していたみたいだしね。
「今回持ち歩いたのを貫くだけなら魔力を纏わせれば良いだけです。ですけど、上位の代物があるのでそれに通用するかどうかは・・・・・・」
「魔力を纏わせるね」
上位の代物には通用するかは微妙だけど、今回のにはそれで通用すると・・・・・・
矢に魔力を纏わせるね。
うん、だとするとやっぱりアレを素体として考えた方が良いね。
私は素体にする予定の、原型である杖を取り出した。
元はここから始まったわけだしね。
「え・・・・・・・? それは一体なんですか?」
「見た目はアレだけどちゃんとした錬金道具だよ」
光る!鳴る!DXホビーロッド。
量産しやすく錬金回路が非常に作りやすい、最高の武器だ。
・・・・・・見た目が完全におもちゃでしか無いというのを除けばね。
ホムラ「トリガーを引くとサウンドと共に魔力弾が発射される」
フラス「サウンドは必要なんですか?」
ホムラ「実のところ必要性はあまりない」




