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第四十二話 フィフスキメラ

 ◇ ◇ Sideダイアル チョコ草原のヒミツの場所 ◇ ◇


「戦闘者か。ならその強さには納得しか無いな。俺達と同類だもんな」


「納得するな。そもそも、貴様のような輩と儂が一緒って地点で虫唾が走る」


 オルファンは嫌な表情を浮かべつつそう言う。

 一つの共通点だけでクソみたいな性格の奴と一緒にされたら、誰だってそう言うだろう。


「なら、その体と戦闘経験を手に入れ俺はさらなる高みへと至ってやるよ」


「やれるものならやってみるがいい」


 オルファンは刀を鞘に収めつつそう言った。

 それを見て騎士団長は嘲笑う。


「ははは! 俺を素手で倒そうってか? いくら何でもそれは舐めすぎだろ」


「貴様は抜刀術をしらんのか? さっきも披露したはずだがな」


 瞬間、オルファンは鞘から刀を勢いよく抜き放つ。

【居合一閃・雷鳴】、雷の音を轟かせながら雷の力を纏った刃が振るわれる。


「アギャガガガ・・・・・・」


「ふん、断末魔すら汚らわしいな。最も、ここで死ぬのはダイアルが許さないだろうがな」


 騎士団長は倒れる。

 瞬間、死体が消えて騎士団長が再び現れる。


「は? 別の体に乗り移れてない? それに、何故ここでリスポンしているんだ?」


「簡単な話だ。既に貴様等はダイアルの領域内に足を踏み入れている。死んでここから逃れられると思うな」


「さっさと君も領域支配覚えてほしいものだけどね」


 やれやれと首を振りながらダイアルはため息をつく。


「今の儂は物質と空間の確立で手一杯だ。そっちにまではまだ手を伸ばせん。本来短期間で体得するような代物などでは無いからな。儂はまだまだ未熟という事よ」


「領域支配? 空間の確立? 意味話からねえ! 何なんだよお前等は! やれ、兵士共!」


 理解不能な自体に頭がこんがらがったのかやけくそになり、兵士達を操りオルファンに襲わせた。

 しかし、兵士達は一瞬で切り捨てられた。

 騎士団長に使った太刀筋とは違う、痛みを感じない太刀筋で。


「いくら力があろうが明確な意思のない者に負ける程柔では無いわ」


「それに、技術も殆どないただの突撃だしね。こんなのでよくボクに勝てると思ったね」


「・・・・・・ふん、最初から俺が勝てるとは思ってないわ。やれ」


 騎士団長がそう言った瞬間、ダイアルの周囲の地面からロボットが生えてきた。

 そのロボットから黒い紐みたいなのが射出されダイアルをぐるぐる巻きにした。


「最初から俺は囮だ。異質な鎖の力だろうが、この程度の兵力じゃ眼帯女に勝てないんでな。屈辱を押し殺し束縛する装置を開発させたんだよ」


「なんともまぁ・・・・・・クラフターを道具しか使えない無能と蔑んでおきながら、結局自分も道具便りでは無いか」


 結局クラフターは道具を使うしか能がないといいながら、騎士団長も結局の所どうにもならないときには道具を頼るしか能がないという情けない行動に出るのだ。

 自分の事は棚に上げて他者を陥れる。

 大半の戦闘者はそう言う人物なのだ。


「何とでもいえ。異質な道具を使う奴をどうにかするには、同じ力をぶつけてやらねばなるまい。拘束してしまえばどうにでも・・・・・・」


「アハハ、馬鹿だね。本当に馬鹿。折角だしボクの力を一つ開示しよう」


 ダイアルは全身に巻き付かれた黒い糸を見ながらこういった。


「ボクの超越能力【その鎖は自在に舞う(チェーンダンス)】は別に鎖だけに作用するわけじゃ無いんだよ?」


 ダイアルの【その鎖は自在に舞う(チェーンダンス)】、その力が及ぶ対象は鎖だけでは無い。

 鎖とは鉄の紐、鉄の紐を操れるならそれと同系統の紐も操れる。

 そういう解釈により力の及ぶ範囲は今束縛している黒い縄にも及ぶ。

 自分の所有物だけが操れるわけでは無い。


 力で掌握されてなければダイアルにとっては束縛など何の意味も無いのだ。

 力で掌握していたところで、不意打ちで束縛しないと勝てないような相手に掌握されないように掌握しきれるかは怪しいところではあるが・・・・・・


 そもそも、ダイアルは不意打ちなどされてない。

 自身の領域で起こった事を把握出来ないわけが無いのだ。

 最初から束縛する装置の存在は承知の上で束縛されたのだ。

 なぜ、あえて束縛されたのか?


「まあ、使わないけどね」


 舐めプである。

 わざわざ対応しなくても問題無い。

 どうにでもなると考えたが故の舐めプである。


「ダイアルよ・・・・・・分かってて喰らうのはいかがなものかと・・・・・・」


「折角だからこの機械を鹵獲したかったしね。だからあえて喰らった」


 ダイアルは黒い紐を、まるで氷でも砕くかのように割り拘束を解いた。

 束縛していた機械はいつの間にか凍り付いていた。

 誰に気がつかれることも無く凍り付かせたのだ。


「なぁ!? 何が起こって・・・・・・」


「【冷鎖凍縛】・・・・・・鎖というか紐でも糸でもそういう類いのものを使って、対象に対応する力を伝達させるのがこの技の系列だからね」


 そう、熱鎖縛葬にしろ鎖で叩きつけることをする必要は無いのだ。

 紐形状の物体を用いて対象に力を叩きつけることができるならどういう形で放とうが問題無いのだ。

 縛り上げる、対象に鎖を突き刺すなどしてから力を流し込むという行動から発展し、兎竜などが扱う超高熱を事前に溜め込んだ鎖を対象に叩きつける熱鎖縛葬が生まれたのである。


 だが、この技はそこまで強くない。

 鎖を使ってエネルギーを叩きつける。それだけの代物なのだ。

 故に本人からして見れば、もはや本気を出すときにはもう使うつもりも無い過去の技の一つでしか無いのだ。

 この技を使っている地点で既に舐めプされてると言うことなのだ。


「巫山戯るなよ・・・・・・何なんだよお前は!」


「さあね。ボクも自分自身が何者なのかなんて分かってない。はっきりしているのは・・・・・・」


 ダイアルが普段から付けている手袋を外した。

 その両手は見比べるとかすかに色が違う。

 それだけで無く、サイズこそほぼ同じだがまるで別人の手のひらのように見えた。


「フィフスキメラって事かな? 元々五つ子として生まれてくるはずだったのに、どういうわけか一人で生まれてきた」


 フィフスキメラ。

 本来であれば五つ子として生まれるはずだったのに、一人の人間としてまとまってしまった。

 キメラ、稀にそう言う性質で生まれてくる子供が居る。人間とて例外じゃ無い。

 子宮の中で兄弟が混ざり合い融合してしまうことで起こって生まれてくるのだ。

 ダイアルはその性質を持っていた。


 そして、更に悲惨なことに全ての兄弟が特別な瞳を持っていた。

 三王、光と闇、魂、天、そして時・・・・・・

 五種類の瞳に八つの力を宿した一対の瞳をダイアルは生まれたときに手に入れてしまった。


 悲しいことに五つの子供が混ざり合い脳は通常よりも優れてこそいたがせいぜい二倍を超えないレベルでしか無かったのだ。

 五種の瞳の情報量を捌ききれる程の力は無かった。

 そして、重要な内臓類は通常よりパワーアップしていたが他はそうではなかった。

 骨は統制が取れず五つの子がそれぞれ歩むはずだった成長をたどり、肌は境目から変色し、成長するに従って奇形になっていった。


 彼女は名前も付けられず捨てられた。

 偶然通りかかった人に助けて貰い、いろいろな人とのふれあいが無ければ世界を恨み魔王と化していただろう。

 後に力を手に入れ、自らの肉体の成長を最低限矯正し整えなおし今の体となったのだ。

 顔面は全ての兄弟を平均化し、矯正しなくても問題無いところは矯正しないようにして、自らは五つの子が合体したキメラであるという事実を受け入れ今に至るのだ。


「さて、捕縛完了って所かな」


 騎士団長は既に力なくうなだれていた。

 まるでもう動く気力すら無いかのように・・・・・・


「酷い話だ。其方の正体を明かすと同時にあり得ない情報量を強制的に叩き込むとは・・・・・・」


「生まれたときから常人から外れた脳を持つボクでさえ捌ききれない程の情報だ。アレがどうにかできるものじゃないよ」


 しかし、今でこそ普通の体を手にしたダイアルだが一つ問題があった。

 瞳の力はそのままだったのだ。

 キメラ化した瞳の力はその強大さ故にえぐり取ったとしても再生する。

 さらに、その瞳から得られる情報量は莫大なのだ。目隠ししていても問題無く行動が出来るレベルで。

 目隠しをしていたとしてもその情報量は膨大、普段から未来を予測してワンテンポ先に動かなければ普通に動けないレベルで。


 常人よりも優れた脳を持っているにも関わらずこれなのだ。

 全てでは無くとも情報を叩きつけられてまともで居られるわけが無い。

 こうして、ここでの戦いは終わった。

ダイアル「情報を捌くために頭が使われてるけっか処理落ちみたいになってるだけだから、処理の仕方を変えるだけで未来予測で行動を定めることが出来るんだよ。未来視は使ってない。ボクとホムラ共通の体質が阻害するせいで使うと余計に処理が悪化するからね。常日頃からできるもんじゃない」

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