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第三十八話 チョコ草原のヒミツ

 ◇ ◇ チョコ草原 ◇ ◇


「ここがチョコ草原か」


 街から出て数十分歩くとチョコ草原に到達した。

 凄い近い場所だよね。

 冒険した気にならないレベルでね。

 まあ、最初は近場から始めていく物でしょ。

 未知の素材とかも手に入れたいと思ってるしね。


「チョコは・・・・・・どこにも無いでござるな」


「だろ? 名前に騙されたんだよな。っと、チョコモンスのお出ましだ」


 草原を見ていたら黒い塊で作った動物みたいなモンスターが現れた。

 これが泥スライムね。いや、チョコアニマルか。

 でも、ドルフィスさんがチョコと勘違いするのも無理は無い気がするね。

 かすかにだけどチョコの匂いを漂わせてる。

 見たところ泥なのに匂い漂わせてるって色んな意味でずるいと思う。


 そう思っていたら、コクウが槍の一突きでチョコアニマルを一撃で倒した。

 軽い攻撃なのにも関わらず倒される辺り、本当に弱いんだね。

 これなら子供でも倒せる気がする。


「ドルフィスに色々言ったけど、確かにかすかにチョコの匂いを感じる「だろ? だから・・・・・・」口に入れる気にはならないけど」


 ドルフィスさんがそうだろそうだろと言おうとした瞬間に追撃を入れるコクウ。

 まあ、いくらチョコの匂いがあるとはいえ口に入れるのはどうかと思う。

 禄に調べもせずに口に入れるなんてとんでもない行為だしね。

 毒があったらどうするのって話だ。


「ドルフィスさんが人体実験してくれてるから、舐めて調べてみるのもありかも知れないね」


「え、ホムラ?」


 倒したチョコアニマルの泥を指ですくって舐めてみる。

 ・・・・・本当にかすかだけど、チョコの味がする。

 泥もこれは・・・・・・泥と言うよりも・・・・・・


「オボロ、ちょっとこの泥舐めてみて」


「いや、舐めてみてといわれても・・・・・・まあ、舐めてみるでござるが・・・・・・」


 オボロがチョコアニマルの泥をぺろりとなめた。

 オボロが舐めた後にハッとした表情になった。


「・・・・・・カカオをそのまま崩して水で浸してどろどろに溶かした感じでござるな。それに、奥底からミルクチョコの感じもするでござるな」


「マジかよ!?」


 甘党だから甘くないチョコレートには気が付かなかったみたいだね。

 そもそも泥なんて食べる機会がないから、見た目も相まって泥と判断してしまったんだろう。

 ここの土が全てそうかは分からないけど、少なくともチョコアニマルは名前通りって訳だ。

 甘いチョコレートで出来ているわけじゃないだけでね。


 これが気が付かれなかったのってひょっとしなくても、ドルフィスみたいに甘いのを期待して来た人が多くてその結果分からなかった感じなんじゃ無いかな?

 気が付いてる人もいるかもだけど、ビターチョコに誰が手を出すかみたいな感じで禄に調査しなかったんだろうね。


「それ、泥じゃ無いんだ」


「大半が甘くない高純度カカオの泥でミルクチョコレートを細かく砕いた砂みたいなのを少量混ぜてある感じかな」


 カカオの味が強すぎてミルクチョコの味がほぼ打ち消されてて分かりづらいけどね。

 しかも、ここまでカカオが強いのに殆ど匂いがしない。

 多分泥カカオには匂いが無いんだろう。

 ということはこのかすかな匂いは全て泥に埋もれた砂利みたいになっているミルクチョコの匂いなんだろう。

 匂いの無いチョコって結構良いね。非常食的な観点で言えばかなり良い。

 匂いも楽しむ感じのチョコには出来ないけどね。


「【抽出術(エクストラクション)】、これで微臭泥カカオとミルクチョコに分離できた感じかな」


 抽出術。

 物体に含まれている何かを抽出することの出来る錬金技術だ。

 これで、砂利のように含まれていたミルクチョコを抽出したって訳だね。


 もっと上位の技術に分離術というものがあるけどね。

 でも、特定の物質だけをピンポイントで抽出することは出来るから問題は無い。

 ・・・・・・溶けてしまっているミルクチョコを抽出するのは技量の問題で出来ないけどね。

 というか、それが出来る技量があって初めて使えるのが分離術だからね。


「おお!? これがこの泥に埋もれていたチョコか!?」


 そう言いながらドルフィスさんは私の手からチョコを取り口に入れた。

 そしたらゲホゲホとむせた。


「ちなみにこれは甘み成分は抜いた残骸で、更に高純度にしたミルクチョコがこれね」


「嵌めたな!? 俺を嵌めたな!?」


 私に騙されて苦みがするところしか残されてないチョコを食べさせられたドルフィスさんが叫ぶ。

 今の行動は当然わざとだ。

 だって渡してないのに勝手に口にしたわけだしね。


「あげると言ってないのに勝手に取るからそうなるんでござるよ」


「少しは自重してください」


 オボロ兄妹に言われてしょんぼりしつつドルフィスさんは立ち上がった。

 騙したのは、見せる度に勝手に食べられても困るからここで釘刺しておかないと不味いと思ったのが最大の理由だしね。


 にしても、あっさり見つかったよね。

 チョコ要素がこんな簡単に見つかるからこそ、チョコで隠したのに見つからないとはダイアルも考えてなかっただろう。

 というわけで恐らくどこかに何かが隠されている。

 チョコを前面に押し出して分かりづらくしているけどね。

 最も、ドルフィスさんのおかげで大体は予想が付くけどね。


 チョコ草を採取する。

 食べたら何しても苦みが一日中取れないなんて、おかしな話だ。

 見たところそういう性質を泥カカオは持ってなかった。

 なら、何が原因でそうなったのか?

 答えはチョコ草にあるんだろう。


「【抽出術(エクストラクション)】」


 チョコ草から泥カカオの成分を抽出する。

 一度じゃムリだから何度も何度も抽出して純度を高めていく。

 そして、出来上がったチョコ草をストレージのある機能を使う。


 それは鑑定だ。

 正体不明の何かを解析する機能を持つんだ。

 ゲームとかでよくあるアイテムの詳細を調べる機能だね。


 でも、この詳細を調べる機能はそう簡単に扱える代物じゃ無い。

 ゲームっぽくても根本的に製作技術を学ばせるためのゲームというのがあるからか、前提知識が無いと理解出来ないようになっている。

 VRMMO自体が脳にアクセスしてというのがあるからか、知識量から鑑定結果を参照出来るようになっているらしい。

 頭の中でこれがなんなのかを理解しようとしている動きを強制的にさせられてる感じがするからね。


 元々知ってれば一瞬で終わるけどね。

 既存の物を忘れてたら記憶から引っ張ってくるだけだから理解する動き自体が無いらしい。

 知った上で更に詳細を理解するために動かすことも出来るけどね。

 オートで動く理解しようとする動きを参照すれば自力鑑定がそのうち出来るようになる。

 オートだと時間かかるし結構疲れるからね。自力で出来るようになることにはこしたことは無いんだ。


 そう思っていると鑑定結果が頭の中に出てきた。

 コネクトグラス、それがチョコ草の正体らしい。


 物体と物体を繋げる緩衝材みたいな役割を持つらしい。

 物質では無くそういうエネルギーが含まれている。

 これこそがこの草原に隠された最大の謎だったわけだね。


 これがあれば、不安定すぎて試せなかった組み合わせの錬金術が出来るようになる。

 というか、錬金鍛冶で作る付与術なんかにも使える気がする。

 より詳細に描き込む補助としても使えるだろうしね。

 今の私の技術力でもさらに高度な付与が出来そうだ。


「これは最大級の発見だね」


 ドルフィスさんが口の中に入れたときに苦み成分がなかなか抜けなかったのはこの接続の力が原因だろう。

 口の中で泥カカオの苦みを口の中で繋げられたんだ。

 ちゃんとした手順で接続させなかったから一日で力は消えたみたいだけど、へたすれば一生苦みが消えなかった可能性もあるね。

 とんでもない劇物だよ。

 これと甘い代物で接続させれば一生口の中が甘いとかそういう考えに至るかもだけど、危険すぎるからやらないようにしよう。

 これで完全接続されたら今の技術力じゃ解除できなくなるだろうしね。

ダイアル「接続の力はあくまでそういう力だからね。エネルギー配給を断ってしまえばいずれは消えるものだ。まあ、常に何かを刺激し続けるとかそういう使い方でも無い限りは半永久的に持続するんだけどね」

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