第三十二話 オボロは鍛治場に行く
◇ ◇ Sideオボロ 拠点 鍛治場 ◇ ◇
カーンカーンと響く鍛治場の中、私はいた。
「・・・・・・オボロ、なんでここに居るの?」
呆れた表情でホムラちゃんが私を見る。
ちょっとやってみたいことがあってここに居るんだよ。
「私は平気だけど凄く暑いよ。ガッツリ炉を動かしてるからね」
「そこまでして何を作っているんでござるか?」
見たところ色々と作られてる感じがする。
小ホムラちゃんが使う為の道具か何かかな?
「小ホムラの戦闘武器とか生産道具とかいろいろだよ。シークレットミッション引き当てて君達が試練に挑まされている間、小ホムラがまともに調理出来ないと発覚したかね。他にも問題点があるからそれを解決するべく錬金術を交えた鍛冶で色々と試作しているところだよ」
あ~、私達が未来に飛ばされている間、小ホムラ一人・・・・・・じゃないけど実質一人だけ残されていたからね。
なんでも、ホムラちゃんは何故か光に気が付かなかったとか何とか・・・・・・
とりあえず未来に行ったと行っても信じてもらえないだろうから、シークレットミッションを偶然引き当てて強制的に試練を受けさせられたと説明した。
・・・・・・ホムラちゃんの表情的に嘘だとばれてるけどね。
本当に勘が鋭いよ。
まあ、説明しづらいと察してくれてるから追求してこないのがありがたいけどね。
「その言い方、やっぱり拙者が言ったことが嘘だと分かっているんでござるか?」
「あ、自分から言っちゃうのね。理由も無く嘘をつくとは思えないし説明しづらい何かに巻き込まれたんでしょ。そして、コクウは違うけど巻き込まれたところでオボロだけが試練を受けたから実質本当みたいにごまかしてるのも私には分かってるよ」
完全にばれてた。
しかも、ごまかし方も完全にばれてる。
フレイフィルさん程じゃ無いけどホムラちゃんも大概鋭すぎだよ。
ってことは・・・・・・
「コクウ殿が隠していることも・・・・・・」
「具体的な詳細までは知らないけど知ってるよ。君が何処まで知ってるか、私には分からないから答えないけどね。にしても、気が付いてないはずのオボロがそう言うってことは向こうで何かあった?」
予想はしていたけどやっぱり分かっているみたいだね。
恐らく具体的な詳細だけは知らないだけで詳細に何がデメリットで奪われているのか把握しているんだろうね。
アンノウンの力で奪われているということまでは分かってないんだろうけど・・・・・・
「まあ、フレイフィル殿に色々と教えて貰った感じでござるよ」
「フレイフィルね。私のかすかな記憶の中にその言葉があるよ。訳すと焔になるね。言語が違うだけで名前が一致するなんて気が合うね」
フレイフィルってそういう単語から名付けられた名前だったの?
ホムラちゃんと名前が一致するなんて何とも言えない偶然だよね。
・・・・・・よく見るとホムラちゃんとフレイフィルさんはよく似ているんだよね。
フレイフィルさんを幼くして目の色を黄色から緑色に変えたらホムラちゃんになるってレベルで似てるよ。
ひょっとするとフレイフィルさんの子孫がホムラちゃんなのかも知れないね。
もしそうだったとしても、記憶が無いからフレイフィルさんとかの先祖どころか母親すら覚えてないんだろうけどね。
って今気が付いたけど陽光の力の炎に強くなる性質ってホムラちゃんのそれと全く同じじゃん。
熟練すると服すら炎の影響を受けなくなるとか言われてたしホムラちゃんがドラゴンブレスに耐えたのってそれが原因だったりするんじゃ無いかな?
記憶失っても使えるのは、無意識に扱えるレベルまで熟練しているって事なんだろうね。
アレを思い出せなかったのは試練から出た後の騒動が原因なんだろうね。
ダイアルさんに熱鎖縛葬を見せられて色々と衝撃を受けたからね。
でも、そうなるとホムラちゃんは陽光の力を持ってるって事になるね。
ホムラちゃんもあの試練を乗り越えて・・・・・・ひょっとすると大分楽になってたりするのかな?
もし楽になっているのなら私があの地味に厳しい試練を乗り越えたのは一体何だったのってなるね。
「・・・・・・? ・・・・・・何か私の体質に心当たりがある感じかな?」
「なんで分かったんでござるか!?」
「顔に出てた。そしてようやくここに居る理由も理解したよ。新しく手に入れた力で、何処まで耐えられるか試してみたかったんでしょ?」
完全にばれてるね。
そんなにわかりやすい表情をしていたかな?
「よし、折角だし私も協力するよ。この部屋の温度ガンガン上げれば良い?」
「いや、そのままでいいでござるよ。何処まで耐えられるのかを確認したいだけでござるから」
だからわざわざ室温を高めなくて大丈夫だよ。
そもそもそこまでして貰わなくても問題無いしね。
熱を吸収して回復している感じがしている地点で、多少上げた程度なら平気だって分かるから。
「そう、ならいいけどね。まあ、オボロが思い込んでいるだけで同じとは限らないと思うよ。試練を乗り越えて手に入れるような力を既に私が持ってるわけが無いからね」
なんか、ホムラちゃんは陽光の力を持っていないと言い張る。
その根拠はどこから・・・・・・
まあいいや。別にホムラちゃんが自覚する必要なんて無いしね。
「にしても、熱に関係する力なんだとしたら炎とかを手から出したり出来るのかな?」
「それは分からないでござる。試行錯誤すればいいとは言われたでござるが・・・・・・・」
どういう使い方が出来る物なのか一切教えてくれなかったからね。
今のところは熱を吸収して回復するくらいしか分からないよ。
でもちょっと試してみようかな。
陽光の力を手のひらに・・・・・・・放出!
「なんか、オボロの手がほんのり温かくなってるね。やりたいことは何となく分かる。上手く行ってないというのもね」
「う~、これじゃどうしようも無いでござるな」
これじゃ全然駄目だ。
とりあえず全身に上手く巡らせる訓練を・・・・・・
そう思っているとホムラちゃんが何か腕輪みたいなのを作り始めた。
宝石をいくつか用意して何か色々としている。
何だろうか?
「よし、これで完成だ。ラリマ―の解放、自由、安心の効果を高めさせて安定してその力を操るための腕輪を作ってみたよ」
「見せてから三分も経ってないのに早すぎでござるよ!?」
あれをみて速攻で思いついたの?
というか、作るの早すぎない!?
一応錬金道具の類いだよね!?
「そりゃ今鍛えてるからね。小ホムラの格納空間に材料を持ち込んで色々と試行錯誤しているんだよ。おかげで錬金鍛冶細工がどんどん上手くなってるから、もうこの程度なら瞬殺だよ」
小ホムラちゃんって便利すぎない!?
生産適性ってまだそんなに高くないはずなのに本体にここまでフィードバック・・・・・・あ!? 私の料理の技術と同じか!?
縛られた状態で生産することで縛られてない本体の技術力向上にもなってるんだ。
「でも、小ホムラ殿が鍛冶を出来るんでござるか?」
「小人サイズで作ればいいなら小ホムラでも問題無く作れるよ。道具も既に作ってあるしね」
あ~小人なのに、人と同じ大きさの物を作ろうとしているから苦戦しているだけで、自分と同じ大きさの物なら大して苦戦はしないんだね。
そうなると生産でも人より多くの経験を積めるって事?
戦闘でも多くの経験を積めるのに生産でも積めるとか普通にずるすぎるよ。
「ところで小ホムラの数はどのくらいなの?」
「500人かな。大半は格納空間の中を改良してるかんじかな。開拓すると広くなっていくんだよね」
開拓すると広がるって・・・・・・
なんか、格納空間も謎が多すぎるね。
でも、良い物貰ったし私も私で頑張らないとね。
ぐずぐずしていると戦闘でもホムラちゃんに追い抜かれちゃうからね。
ホムラ(強みがなくなっちゃうことを危惧して居るみたいだけど、なんか料理の才能凄まじそうなんだよね。さらっと試練クリアしてたの気が付かなかったし・・・・・・)




