第三話 試行錯誤している内に
10/23 内容リメイク
◇ ◇ 拠点 錬金工房 ◇ ◇
「しかし、よく作れたな。適当に試行錯誤すれば出来るようなものじゃないだろうに・・・・・・」
「多分、ガワだけでも真似れば軽い補助が入るようにゲームで設定されてるんじゃ無いかな?」
本当に軽い補助だからたいしたことは出来ないけどね。
金属ワイヤーにしろちゃんとしたもの使えば数秒で出来るしね。
というか既存の材料なら普通に材料として手に入るからわざわざ作る必要もないしね。
既存のじゃ無ければここまで上手くいかないだろうしね。
「そうか。一応ゲームだもんな。本格的に始めようと思ったら流石にそんな軽い補助じゃ無理って感じなのか?」
「そうだね。少なくとも大釜の中でやるのも素手でやるのもたいした違いは無いよ」
細かい修正が必要になるから視認出来る素手での加工の方がやりやすいってものもあるしね。
本当に軽すぎるからやり方理解したら大釜使わない方が加工しやすいんじゃないかな?
「ところで、今できるのは材料をこねくり回して形を変えることだけか?」
「そうだね。それがどうかしたの?」
この技術で何か作って欲しいものでもあるとか?
でも流石にこの程度じゃ碌なものは作れないと思うけどね。
まだまだ未熟だしね。
「綺麗に材料を切断したりとか出来ないのか?」
「材料を切断!?」
確かに、出来ないことは無い気がする。
というかこれが出来れば作れる物の幅が広がる。
やってみる価値はあるね。
とりあえず布を裁断するというイメージでやってみよう。
さっき大量に作った不可思議な布を大釜に入れる。
軽い補助が効くなら切断にも補助が働くはずだ。
それで切断方法を学ぶ。
裁断することをイメージして大釜をかき混ぜる。
かき混ぜてかき混ぜて・・・・・・出来た。
私は大釜から二つに裁断された布を取り出し見てみる。
イメージ通り綺麗に裁断されている。
変形の方法だとここまで綺麗に引きちぎることは出来ないからね。
「出来たよ。そして、案の定分からなかった」
「分からないんかい!」
仕方ないよ。
変形にしても時間掛かることを利用して理解していったわけだしね。
と言うわけで・・・・・・
「金属で試してみよう」
「なるほど、ワイヤーがその辺に転がっているのはそう言う理由か。これら全部錬金成果物なんだな」
そういうことだね。
ってインゴット放り込むんじゃ無くてワイヤーで試すべきだったかもしれない。
その辺にいっぱいあるしね。
まあ加工始めちゃったしこのままやってしまおう。
「う、やっぱり手応えはあっても凄く重い・・・・・・」
「そりゃ金属の加工は容易ではないだろ。というか木材とか他に選択肢あっただろうに何故金属を選んだのか・・・・・・」
あ・・・・・・そうだよね。
切断するんだから別に金属にこだわる必要無かったね。
上手く行きそうに無かったら次は木材に変えてみよう。
その必要も無さそうだけどね。
変形である程度コツをつかんでたのもあって切断もそれなりにスムーズに理解出来た。
なるほどね。
エネルギーに性質があるんだ。
それを変化させて使うってことね。
変形の性質と切断の性質・・・・・・
両方の理解をより深めていく。
二十分くらい掛けて理解をしてインゴットを完全に切断した。
「よし、出来た。これで・・・・・」
ワイヤーを手に持って切断術を使う。
ワイヤーが真っ二つに切断された。
自分で変形させた後というのもあってワイヤーはそこまで時間掛からず切断できるね。
「切断出来るようになったよ」
「・・・・・・一応言っておくが人に向けて使うなよ」
「使わないよ!?」
私は人を改造して楽しむようなサイコパスじゃないからね。
でも、自分の体を改造するというのはありかもしれない。
今はまだ無理だけど出来るようになれば健康な体を手に入れられるかも知れないしね。
にしても、変形と切断と色々出来るんだね。
性質の違いとかもあるから同時には扱えそうに無い。
同時に使えたら便利なんだけどね。
とりあえず、切断と色々出来ることを知った以上試行錯誤していこう。
次は・・・・・・合成だね。
錬金術の真骨頂だし出来ないわけがない。
とはいえ合成するにも簡単にできそうな物が思いつかない。
「う~ん、青銅でいいかな」
「青銅!? ホムラ、何をする気なんだ?」
私は青銅を合成するべく銅と錫を入れる。
クラフトするゲームの工業MODを適応すると序盤では主要になる青銅・・・・・・すなわちブロンズの材料なんだよね。
金属を合成するならこれからでしょ。
「合成・・・・・・合成し終わった後の代物を知ってさえいれば出来ないことは無いはず・・・・・・・」
うぐぐ・・・・・・・金属だからやっぱり難しい。
というかそれ以上にこれ、変形も踏まえてやらないと合成が出来ない。
地味に難易度高いねこれ。
かといってこれ以外の合成可能で合成後を正確に把握していてかつすぐに用意できる物なんて無いからね。
合成はそのまま大釜の補助に任せつつ私は変形で少しずつ練り上げていく。
補助といっても大鍋かき混ぜることによって発生しているから自分でやってるも同然だしこれでコツをつかむんだ。
どれだけ時間がかかってもいい。
感じとしては右手と左手で別々の作業をする感じだね。
今の私は両手を使わないと変形させられない。
だから同時に扱えない感じなんだろうね。
とりあえず少しずつ自分の中の処理能力をかき混ぜる方に裂いていく。
それで徐々に片手だけで作業できるようにしていく。
少しずつ・・・・・・・少しずつ・・・・・・
「ホムラ、夢中になる気持ちも分かるがそろそろやめようか」
「ビュウス?」
「合成には相当苦戦してるみたいだな。だけどもう夜だ。その辺で作業はやめておけ」
いつの間にか夜になっていたみたいだ。
結構長い時間合成と格闘していたみたいだ。
「あ~合成全然進まなかった」
大釜から取り出した進捗を見ると全然進んでない。
少し混じった程度で青銅はほんの少ししか出来てない。
「フィル達が戻ってきたから錬金術の本がある。本を本棚に入れてることにすら気がつかないくらいに夢中になってたんだな」
振り返って本棚を見てみると確かに本が数冊収まってる。
いつの間にかフィル達が戻ってきていたんだね。
気がつかなかった。
「昼飯も食べずに色々やってたんだし腹減っただろ? 皆待ってるから今日の作業はここでやめて食堂に行くぞ」
「分かった」
ゲームの中だからお腹はすかないんだけどね。
現実の私は点滴とかで栄養直接注入されてるしゲーム内で何も食べなくても問題は無い。
お腹はすくけどね。
ちなみにこのゲームの中で満腹になっても現実で満腹になることは無い。
現実の体が飢餓にならないようにVR機器にはそういうセーフティがあるんだ。
設定次第ではゲーム内での空腹感も満腹感も感じないように出来るしね。
その設定だと現実の空腹感をVR空間に持ち込めるから気がつけば凄いお腹すいてたってなることが無くなるからね。
ちなみに私は普通に空腹を感じる設定になっている。
VR空間で生活するしか無いのにそういうのを排除したらいざ現実に戻るときに戻れなくなるからね。
他の四人も同様だよ。
シャウラは若干怪しいところあるけどね。
さて、そういうわけだから食堂に向かおうか。
今日は何が作られてるかな?
楽しみだ。
ビュウス「オムライスか。・・・・・・やっぱりハンバーグ乗せるんだな」
ホムラ「デミグラスソースのオムライスだしね」