第二十四話 熱鎖縛葬
10/23 内容リメイク
◇ ◇ 試練場 入り口 ◇ ◇
私達は十分に休息を取ってから外に出た。
外に出るとダイアルが待ってくれていた。
・・・・・・相変わらず治安悪い場所だ。
ダイアルに絡んで吹き飛ばされたと思われる人が壁にめり込んでる。
というか忍者らしき人物までいるよ。
忍者らしき人の刀は武器の性質なのかは知らないけど宙に浮いてるし・・・・・・じわじわと落下しているけどもね。
「なんか滅茶苦茶でござるけど何があったんでござるか?」
「ここに来るときにもあったでしょ。襲われただけだよ」
「それは分かるでござる。でもその空中に浮いた刀は・・・・・・・」
確かに気になるよね。
明らかに不自然だもん。
「ああ、曲芸みたいなものだよ。時間をじっくりゆっくりして殆ど停止しているに近い中央に刀を止めればこれのできあがりだ。時間の速度差で運動エネルギーの伝わりが減速しているから中々刀が動かない。無理矢理動かそうとすればへし折れるしね」
・・・・・・?
時間をゆっくりにして中央に近い位置に刀を?
運動エネルギーが減速?
「つまりどういうことでござるか?」
「今の君達には理解出来ない力を使った曲芸ってこと。そのうち分かる日が来るよ」
う~ん、時間をどうこうしているのは分かった。
でも時間を操ってどうやってそう言う現象を引き起こしているのかが分からない。
説明しようと思えば説明できる曲芸なんだろうけど、私達の前提知識が欠けてるせいで理解出来てないんだろうね。
「・・・・・・う~ん、大雑把にしか分からないけど曲芸に近いね。君と同じ力持つならそもそも意味ないんじゃ無いの?」
「意味ないよ。だからこそ曲芸の域を超えないんだよ。ボクが目指す相手は当たり前のように同じ力持ってるしね。君達も強くなることを目指していたら、必ず手に入れる力だ」
どうやらダイアルだけの特殊な力って訳じゃ無いみたいだね。
一定の強者は当たり前のように行使している力みたいだ。
その力があれば意味が無い上し、それを変な使い方しているからこその曲芸だったりするんだろうね。
ダイアルにとってはそこまで重要視していないんだろう。
でも、そういう強敵相手でも隙があれば決めてくるんだろうけど。
普段は役に立たないけど使えない相手でダイアルにとってどうしようもない雑魚相手とか隙を見せた強者に使ってるんだろうね。
武器を拘束するという都合上、決めることが出来ればかなり大きいしね。
ダイアルが指を鳴らすと刀は地面に落ちた。
・・・・・・そういえばこの刀の持ち主がこの刀に与えた運動エネルギーって何処に消えたんだろうか?
よく分からない力に固定されてるから減衰してたりするんだろうか?
そのうち知りたいね。
「く、ハハハ・・・・・・・ようやく出てきたな・・・・・・錬金術師!」
倒れていた男が立ち上がった。
まるで棒が倒れるのを逆再生でもするかのように立ち上がった。
地味に気持ち悪い立ち方だね。
でも、どうやってああいう風に立ち上がったんだろうか?
紐で引っ張られているように見えなかったけど・・・・・・
「ありゃ? 気絶してたのにいきなり覚醒した?」
ダイアルが驚いていた。
さっきまで私の目から見てもしっかり気絶していたのに・・・・・・
きっちり気絶させたことを確信していたダイアルは驚くよね。
「あの男達に妙な錬金道具が埋め込まれてる。それで遠隔から無理矢理覚醒させたか、あるいは・・・・・・」
「目的の対象を見つけたら即座に覚醒するように仕込んでいたかってことね。きっちり仕留めて・・・・・・いや、使われてる道具次第では死体が動いてゾンビのようになるだけかも知れないか」
埋め込まれている錬金道具!?
よくよく観察してみると、確かに首元に埋め込まれてる。
奇妙な宝石の錬金道具が・・・・・・
「もう一回気絶しとけ!」
ダイアルは無理かも知れないと思っている顔をしつつも起き上がった男達を気絶させるべく鎖を振るった。
男達は一瞬意識を飛ばしたみたいだけど、宝石が軽く光りその瞬間意識を取り戻した。
忍者の方は宝石を破壊したみたいだけどそれでも平然と覚醒した。
というか宝石も再生してるね。
「めんどくさいな。寄生型の錬金道具か。正規の方法で外さない限りは壊したところで意味ないね」
「強くなろうという意志もないクソ雑魚の癖して面倒なアイテムを使うね」
コクウさんが道具の詳細を説明した途端、ダイアルは面倒な表情をして空を仰いだ。
明らかにめんどくさそうな仕様の錬金道具を使われてるもんね。
殺したところで死体が残っていれば立ち上がる。
相手にしたいとは思えないよ。
「あ、いや待てよ? ・・・・・・折角だ。良い物見せてあげる」
空を仰いでいたダイアルは何かを思いついたかのように顔を戻しつつにやりと笑った。
そして懐から何かを取り出す。
筒から鎖が飛び出ている何かだった。
「これは僕の使っている鎖だよ。この筒の中にはとんでもなく長い鎖が格納されているんだ」
飛び出た鎖を引っ張ると明らかに筒の大きさを無視した長さの鎖が出てきた。
普段何処にあんな長さの鎖を収納しているんだろうと思ったらこういう仕組みだったんだね。
「そして、これにボクの力を少し加えると・・・・・・」
筒の両端の出口の大きさが変わり無数の鎖が飛び出した。
しかもその鎖は手で触れられてない。
一体何が・・・・・・
「これって・・・・・・・?」
「これがボクの第二超越能力【その鎖は自在に舞う】だ。鎖が関わってくるなら自由自在に操れるし無制限に引き延ばせる」
超越能力って試練の時のコクウさんが言っていたアレか!?
ドラゴンと違ってダイアルは正式に手に入れた力なんだろうね。
「・・・・・・超越能力にしては地味じゃ無い?」
「空間隔絶とかボクの第一超越能力に比べたら見劣りする気がするけど、使ってみるとそれに負けず劣らずの性能を秘めてるよ?」
コクウから見れば地味なんだね。
結構凄いと思うけど・・・・・・
「いや、特定の道具使わないと発動できないって・・・・・・」
「道具は特定の種類の鎖を無限に増やす以外では使用する必要無いよ。強力では無い鎖ならどこからでも取り出すこと出来るしね」
筒を持っていない手から鎖が飛び出した。
道具使う必要すら無いんだね。
というか道具使えばその種類の鎖を無制限で引き延ばせるって事?
多分筒の中の鎖って・・・・・・あのドラゴンのウロコ以上の硬度を誇る何かで出来た鎖だろうし相当強いと思う。
「一つだけ言っておくよ。超越能力はその願いの解釈次第で強さを大きく変える。後天的に変質することすらあり得るからね。一見すると別に普通の力でも再現できるだろって思うところも実はとんでもない効果が隠されていることだってあるからね」
あ~普通に別の力で再現できる感じなのね。
だから地味って言ったのか。
超越能力って名前の地点で特別な感じはするからね。
「いずれどんな形になるかは分からないけど、君達が会得する力の一端をここで見せよう」
筒から出た無数の鎖が高熱を帯び始めた。
・・・・・・なんかどこかで見覚えのある鎖だ。
その鎖は襲撃者である男達に向かって放たれた。
「【熱鎖縛葬】」
気が付けば男達に高熱の鎖が突き刺さっていた。
男達はみるみるうちに高熱で焼き尽くされた。
錬金道具も消し炭と化し復活すら叶わないだろう。
「君達はボクと同じ力を得るとは限らない。どんな願いを超越能力とするのか次第で変わってくるからね」
高熱の鎖は一瞬で常温に戻り筒の中へと高速で消えていった。
そして流れるように筒を背中の所定位置へと戻していった。
「生産系に特化しているか戦闘に特化しているかで変わってくる。だけど、超越能力はきわめて強力だ。少なくとも本質が見えづらいこの力に関しては地味と言われるくらいにね」
ダイアルは筒を収納した後、マントを整えながらこういった。
「君達がこの力を手にすることをボクは期待しているよ」
ダイアルは笑顔でそう言った。
兎竜「え、何あれ? あの熱鎖縛葬って俺の上位互換じゃん」
ダイアル「そりゃそうでしょ。あの試練でボクは熱鎖縛葬で何度も周回したしね。ちゃんと使えるようになるように練習台にしたから、ボクの超越能力を学習して生まれたのが君だろう。鎖も火竜系統だしね。最も鎖の素材に対して劣りすぎだから本当に影響受けただけなんだろうけど」




