第二十三話 門前での蹂躙
10/23 内容リメイク
◇ ◇ 試練場 入り口 ◇ ◇
「あ~、レア試練に当たっちゃったか。うらやましいな。ボク、一度も出したことないしな~」
ホムラ達が入った試練場。
その前で目隠しをした黒髪の女が呟く。
マントを羽織い、手に持っている武器を隠しているこの女はダイアルと言う名だった。
ダイアルはホムラ達をここに連れてきて出てくるのを待っていた。
不運なことに本来なら一分くらいで出てくるはずが、ホムラ達がレアミッションを引き当てたが故に更に長時間待たされることとなった。
とはいえ数分が数十分に増えた程度ではあるが。
彼女にとって最大の不運は、さんざん引き当てたいと思っていたレアミッションを目の前で引かれて待ちぼうけを食らってしまうことだった。
彼女にとっては難易度の高い戦闘というのは望むところであったが引き当てられなかった。
まさか試練を最初に受けるホムラ達がそのレアミッションを引き当てるとは想像もしていなかったのだ。
「あ~一緒に入ればよかったな。でも、出るタイミング次第でホムラ達が危険にさらされること考えると入れなかったし仕方ないよね」
そう言うとくるりと背後を振り返った。
「君達みたいなのが現れるのはシャウラもボクも想定していたからね」
「・・・・・・気がついたか」
誰からみてもその場には何も無かった。
そう言い切れる場所から急に人が出てきた。
「直感か? それとも当てずっぽうか?」
「さて、どっちでしょう?」
ダイアルは嗤いながらそう言った。
お前達如きどうとでも出来ると言っているかのようだ。
虚空から出てきた男はその言葉に苛立った。
「・・・・・・生かしておくつもりだったが止めだ。殺れ!」
男がそう言うとダイアルの背後から人が出現した。
オボロとは違う本物の忍者装束の忍者はダイアルを一撃で仕留めるべく刀を振るった。
「馬鹿だねぇ。目の前で指示したら背後に敵がいますって言っているような物でしょ。最も意味ないんだけどね」
「!? 何だ! 刀が・・・・・・・!」
忍者が振るった刀はダイアルの首元で制止した。
まるで途中から水中で刀を振るうかのように重くなり急激に動かなくなるのを忍者は感じた。
何故そんなことが起こったのか忍者には理解が出来なかった。
「動揺したからって隠密が声だすな」
「グホァ!?」
あきれ果てたダイアルは刀を無理矢理動かそうとする忍者を蹴り飛ばし襲撃者である男の方向へと飛ばした。
倒れた忍者は予備の刀を取り出しつつ立ち上がった。
「何をしている!?」
「申し訳ありません。今すぐ奴を・・・・・・」
「君ですら出来もしないことを他人に押しつけるのはどうなの? まあいいや」
ダイアルは奇妙な袋から剣を取り出した。
その袋に入りきるとはとても思えない長剣が袋から飛び出た。
剣が出た瞬間、ダイアルの背後から鎖が出てきて柄頭に取り付けられ一体化した。
ブンブンと鎖を振りまわしダイアルはこういった。
「舐めプしてあげるからせいぜい掻いてよね」
「舐めるなよ! クラフター如きがぁ!」
舐めプして戦うと宣言したダイアルに対して激高する男。
男は戦闘者だった。
ある人物に雇って貰っている戦闘のプロだった。
戦闘のプロである自分が、製作能力しか能がない戦闘能力は後付けの作成者にコケにされる事それがとんでもない屈辱に感じたのだ。
男は大剣をアイテムボックスから取り出す。
そしてダイアルに向かって一直線に突っ込み・・・・・・
「【大陸破断】!」
武技と呼ばれる力を使った。
闘気とよばれる戦闘に欠かせない力で攻撃能力を高めて放つ大技が武技と呼ばれる技能なのだ。
しかし・・・・・・
パキン
男の耳にはそんなあっけなく自分の剣がへし折られる音が聞こえた。
ダイアルは剣など握っていない。
鎖を右手で握り操作して大剣をへし折ったのだ。
剣ではなく鎖で大剣を縛り付けてへし折る形で・・・・・・
「馬鹿な・・・・・・たかが鎖で俺の大剣がへし折れただと?」
「たかが鎖って言う辺りで君の目は節穴なんだね。そんなだからボクをたかがクラフターと侮るんだよ。戦闘者の悪い癖だ。最初から戦闘者以外の誰にでも勝てるから強者を見抜く目が余り磨かれない。だから強者でも侮り、あっさりやられるんだ」
ジャリジャリジャリと鎖を自在に操作する。
ダイアルはそのまま派手にはじき飛ばす。
男は建物の壁を破壊しめり込む。
町中の建物が特殊な理由が無い限り破壊不能という特性が無ければ街の外まで吹き飛ぶ一撃だっただろう。
「が・・・・・・・あ?」
しかし、それはその衝撃が全て体で受け止められると言うことに他ならなかった。
衝撃の逃げ道はなく吹き飛ばされた全ての衝撃をその身にダメージとして受け止める羽目になった。
そしてようやく男は気がついた。
あの女が持っている鎖が先端に付いている剣以上にとんでもないことに・・・・・・
かつて苦戦し倒すことが叶わなかったフレイムドラゴン、そのウロコと思われる代物が鎖となっている事にようやく気がついた。
「アガグ・・・・・・・なんでそんな武器持ってるんだ。付けている剣よりも遙かに上等な代物じゃねぇか!」
「あれだけのダメージを受けて叫ぶ元気があるなんてさすがは戦闘者だね」
十中八九今起こっていることと同じようなことを何度も経験して学んでないからこそ、耐久力だけ無意味に高くなっているんだろうけどとダイアルは心の中で呟きつつ言った。
「お察しの通り、これは火竜系統のドラゴンのウロコで作られたボク専用に作られた武器さ。これ以外にも様々な竜系統の鎖とか色々と持っているんだよね。これはボクのお気に入りさ」
「は、どうせ自分で作った訳では無い強い武器の力に頼ってるんだろ! 所詮クラフターだしな!」
「あれ、そっちはまだ気がついてなかったんだね。ちゃんとよく見てよ」
どういうことだと男は言おうとして気がついた。
・・・・・・刀があの場所でとどまっていることに。
さっきの忍者が振るった刀が未だに宙に浮いている。
いや、微妙だけどじわじわと落下している。
その速度が異様な程遅いだけで・・・・・・・
そこで男は気がついた。
鎖だけじゃないということに。
目隠しもしていてまだ本気すら引き出せていないことに・・・・・・
ただ、もてあそばれていただけだという事実にようやく気がついた。
「テメェ・・・・・・俺で遊んだな!?」
「言ったでしょ? 舐めプするって。君、弱いもん。手加減しなきゃあっさり死ぬでしょ?」
弱い? 俺が?
そんなわけが無い。
そんなはずが無いんだ。
男はそう思い気合いで立ち上がった。
目の前の女に自身の強さを見せつけるために。
「おや? 気合いだけは一人前だね」
「俺は弱くない! 少なくともテメェが子守している錬金術師よりかはな!」
「気合いだけは一人前と思ったけど速攻で評価下げる辺り何処まで落ちこぼれてるんだか・・・・・・」
ダイアルは呆れた。
目の前の相手が強いから、自分より格下の相手を見いだしそれで弱くないと豪語する男にあきれ果てたのだ。
戦闘者の悪癖である自身が強者であるという絶対の自信、それがここまでされても砕けないことに呆れた。
「一つ言っておくけどさ、彼女等は君より戦闘能力は弱いかも知れない。でも君より強いよ?」
「何、巫山戯たことを・・・・・・」
「もういい。不愉快だ。喋るな」
ダイアルは鎖を叩きつけて男を気絶させた。
男はそのまま地面に倒れた。
「やれやれ、ちょっとは面白くなるかもって舐めプしたけど、所詮は戦闘者だったか。あの類いだと一度心折れて入れ替えた後じゃないと、舐めプしても戦いにならないか」
ダイアルは少しがっかりしつつホムラ達が出てくるのを待った。
倒れ伏した彼らは気が付かない。
ダイアルは一度も武技の類いを使用していないことに・・・・・・
刀を止めた謎の技術ですら、ダイアルが息をするようにできるが余り役に立たないと思っている技能だということに。
ダイアル「刀を止めた原理? 来る者拒まず去る者逃がさずみたいな感じだね。まあ時間掛ければ刀を取り戻すことは出来たと思うよ。何時間かかるかは分からないけど。無理矢理取り戻そうとすれば刀が壊れるし使いどころ間違えなければ強い技能ではあるんだよ。対抗策持ってる相手には意味ないんだよね。所詮は曲芸の類いだし」




